企業取材レポート

学びのセーフティネット『eboard』

NPO法人eboard
代表理事 中村孝一

どんな環境であっても学びのチャンスを届けるべく、「学びのセーフティネット」を目指して無料学習サイト『eboard』を開発・運営しているNPO法人eboard。今回はNPO法人eboardの代表理事である中村孝一さんより『eboard』についてお話を伺いました。

大学在学時、学習塾や学習支援現場での経験から、子ども達の学習課題を痛感。外資系コンサルティング会社勤務を経て、eboardを創業。2016年より、世界経済フォーラムGlobal Shapers Osakaハブメンバー。
※NPO法人eboardホームページより抜粋

インタビュー

―『eboard』はどのような特徴があるのでしょうか。
『eboard』は学習が苦手な子を想定して作られた教材になっています。映像授業を使っている学校や学習塾から聞く課題として、映像授業を見ただけになってしまうというのが挙げられます。特に低学力層の子は映像授業を見てそれを理解、定着につなげることにハードルがあるのだと思います。その部分をデジタルドリルで補ってもらうことで定着を進める、逆にデジタルドリルから先に始めていただいてわからないときに映像授業を解説として見ていただくなどで使っていただいています。多くの学校で利用いただいているのが、授業で先生が話された後にドリルをするという使い方で、こうした部分が低学力層に特化している『eboard』の大きな特徴になっています。

 

―そうした特徴の『eboard』の映像教材はどのように作られているのでしょうか。
教員経験のあるメンバーで作成をしています。映像授業全体の特徴として、講師の顔が出ているものが多いと思いますが、『eboard』では講師の顔は出さず、授業画面のみの表示になっています。理由として、授業に中々集中できない子、特に学年が下になればなるほど割合が多くなると思いますが、そのような子たちには学習画面に表示するものは絞ったほうが効果的だからです。また、授業を行う際の言葉も子どもたちが普段使わない固い言葉ではなく、彼らにとってインプットしやすい言葉で話すほうが学習の定着がよいため、意図的に教材の形として採用しています。問題の改良も通年で行っていて、コンテンツのチームが継続的に実施しているので、基本的にどの教科も毎年何かしらの更新を行っています。

 

―『eboard』を開発された経緯をお聞かせください。
元々学習塾に勤務していた中で、多くの子どもたちが学校の一斉授業についていけない状態になっているのを感じました。その上で学び直しを必要としている子もいて、実際に中学3年生で中学1,2年生の内容がわかっていない子もたくさんいます。そのような中で自分のペースで学んでいくということが必要と感じ、それと同時に子どもたちそれぞれに合ったやり方を自分で見つけていく必要もあるとも思ったのです。学習を通して自分の学習に合ったやり方を自分のペースで学んでいくという環境を作ろうと思いましたが、アナログで行う難しさもはっきりしていました。プリントを全部個別で出したりしていましたが、結局そこでわからないことがあったら個別指導のタイミングが発生します。準備の負担はもちろん、講師の力量も必要になるとかなり大変な作業です。ICTならわからないところは映像授業を見ることで対応できますし、その子にあった単元を選んで学習ができます。学習データも残るので得手不得手に応じてその子が自分で学びに行くことも可能です。その部分に関わるモチベーションとか、自分に合ってない学習法をしている子への改善のサポートに力を注いでいけばいいと思い、『eboard』を作り始めました。

 

―『eboard』を利用することで、どのような効果が期待されるでしょうか。
eboardの理想として、自分自身で学習を管理できることが学習者としてのゴールと思っています。eboardの教材が仮によかったとしても、それなら学べる、それでしか学べないという状態は学習者として低次元になってしまいます。よって、学習を通じて学力が上がることはもちろん、その子自身が自分の学習をコントロールして学んでいくことで、いろいろな場面で自分のスタイルに合わせて吸収できる学習者になれると思っています。ただし機械ですべて行うのは難しいので、プランニングなどを支援する役割が必要です。先生がその役割を行うことでだんだんとその子自身が自分でできるようになっていくので、そうしたシステムの部分と人の部分を組み合わせることで、学習を自分で管理することができるようになると考えています。

 

―今後の展望などお聞かせください。
個別化された学習ができるようになるための機能として、学習者が学習の計画を立てられる機能を今後追加していきたいと考えています。あとは海外から来た子どもたち向けに授業動画に字幕を付けるということも進めています。わかりやすい日本語の字幕で、学びやすい環境を作ることが目的です。eboardのシステムの中身と、私たちの研修とサポートも一つの提供価値だと思っています。それもトータルで合わせてその子に合った学習というのが本当に個別化されているのかというのをどうやって支援するか、新しい授業を作っていくのかなど検討して提供していきたいと思っています。

 

―ありがとうございました。

 

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