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DXハイスクール

DXハイスクールとは文部科学省が指定する高等学校段階における高度なプログラミングや文理横断的な探究学習などを教育課程内外で実施する拠点となる学校のことです。高校段階から情報、数学等に基礎及び活用方法について学ぶことで、成長分野の学部・学科への進学者を増やし、デジタル人材や成長分野の担い手育成を目指しています。

 

大学教育改革とDXハイスクール

 現在、大学教育におけるデジタル・理数分野の学部の新設が各地で進んでおり、既存学部のデジタル・理数分野への転換および学部の新設、高度情報専門人材を育成するための情報系分野の定員増、学科・コースの新設などが行われています。
 このような大学教育改革が進められる背景には、日本における「デジタル人材不足」の問題があります。
 「デジタル人材」とはAIやIoT・RPA・5G・3Dプリントなど、最先端のテクノロジーを活用し、業務効率化やイノベーションを創出できる人材のことです。この「デジタル人材」が2030年までに最大79万人不足するということが「IT人材需給に関する調査」(経済産業省、2019年)において明らかになりました。
 また、日本の大卒者のうち、理工農を含む自然科学分野の学位取得者の割合は35%で、英国45%、ドイツ42%、韓国42%などに対して大きく差があり、理系を専攻する学生を50%程度に増加させることが求められています。
 内閣府の「AI戦略2019」では、現代社会においての「読み・書き・そろばん」である「数理・データサイエンス・AI」教育が求められていることを踏まえ、文理を問わず全ての大学・高専生が、正規課程にて初級レベル(リテラシーレベル)の数理・データサイエンス・AIを習得することを目指すという方針を掲げています。さらに、内閣府、文部科学省及び経済産業省は「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」を設け、数理・データサイエンス・AI教育プログラムの拡充を進めています。

数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル):文部科学省 (mext.go.jp)
(※数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度概要P.1)


   

経済・財政一体改革推進委員会 経済社会の活力ワーキング・グループ- 内閣府
(※資料1 内閣府(科学技術・イノベーション担当)提出資料 P.4)


   
   

 大学教育段階でのデジタル・理数分野への学部転換・新設の取組が進む中、その効果を最大限発揮するために高校の段階からデジタル等の成長分野を支える人材育成を強化する必要があるとされています。
 文部科学省は全国1,000校程度の高校を「DXハイスクール」に指定し、高校段階のデジタル人材育成を進めるため、2023年度(令和5年度)補正予算案において、「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」として、100億円を計上し、情報・数学等の教育を重視したカリキュラムの実施やICTを活用した文理横断的・探究的な学びを強化する学校などに対して、環境整備等の経費を支援する方向性を示しました。
 「DXハイスクール」によって高校段階から情報、数学等の基礎及び活用方法について学ぶことで、成長分野の学部・学科への進学者を増やし、デジタル人材や成長分野の担い手育成につなげていきたいというねらいがあるようです。

   

高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール):文部科学省 (mext.go.jp)


 
 
 

リーディングDXスクールやスーパーサイエンスハイスクールとの違い

 DXハイスクールに近い取り組みとして「リーディングDXスクール」や「スーパーサイエンスハイスクール」があります。
 「リーディングDXスクール」事業は、GIGAスクールの推進の中で顕在化した自治体間格差を解消するため、効果的な実践事例を創出していくとともに、伴走支援を強化するための取り組みです。
 具体的にはGIGA端末とクラウド環境を活用し、教育の高度化を進めている学校を「リーディングDXスクール指定校」として認定することや、生成AIを活用した授業実践研究を行っている学校を「AIパイロット校」に認定し、先進的な事例を示すことで、その取り組みを多くの学校に広げようとしています。
 リーディングDXスクールは主に全国の小中学校を中心に進められています。

 「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」は文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度のことです。
 高等学校等において先進的な理数教育を実施するとともに、高大接続の在り方について大学との共同研究や、国際性を育むための取組を推進し、また創造性・独創性を高める指導方法、教材の開発等の取組を実施しています。2023年度は全国で218校が指定されています。

 スーパーサイエンススクールが理系や大学との連携に特化した内容であるのに対し、DXハイスクールは情報・数学等を重視した「文理横断的な学び」に重点的に取り組むことや「新しい普通科」への学科転換・コースの設置などを行うことを特徴としています。データサイエンスなどの知識・技能や数学の知識・技能は幅広い分野で活用できるため、DXハイスクールのような学校が増えることによって、文理を超えた活用を一層広げることができると考えられます。

 
 
 

DXハイスクールに指定されるには?

 DXハイスクールに指定された学校は、1校1000万円を上限として、高性能パソコンや3Dプリンターの配備や民間企業や大学から高度人材を招いての講義費用などを補助してもらうことができます。
 指定は2024年から始まりますが、指定の必須条件には以下の2つがあります。

  • 情報Ⅱ等の教科・科目の開設を開設しているか。もしくは2026年(令和8年)までに開設可能か。
  • デジタル環境の整備と教育内容の充実
    (デジタルを活用した課外活動又は授業を実施するための設備を配備したスペースの整備とともに、教育内容の充実や探究的な学び、STEAM教育等の文理横断的な学びの機会の確保、対話的・協働的な学びの充実を図ること)

 

 以上のことから分かるように、令和8年までに情報Ⅱなどの情報科目の学習を充実させることや、デジタルを活用できる環境整備、探究的な学びやSTEAM教育などの文理横断的な学びを充実させることが求められます。

 具体的には以下のような取り組みを行うことが求められます。

  • 情報Ⅱや数学Ⅱ・B、数学Ⅲ・C等の履修推進(遠隔授業の活用を含む)
  • 情報・数学等を重視した学科への転換、コースの設置
    (文理横断的な学びに重点的に取り組む新しい普通科への学科転換、コースの設置等)
  • デジタルを活用した文理横断的・探究的な学びの実施
  • デジタルものづくりなど、生徒の興味関心を高めるデジタル課外活動の促進
  • 高大接続の強化や多面的な高校入試の実施
  • 地方の小規模校において従来開設されていない理数系科目(数学Ⅲ等)の遠隔授業による実施
  • 専門高校において、大学等と連携したより高度な専門教科指導の実施、実践的な学びを評価する総合選抜の実施などの高大接続の強化

 
 

 DXハイスクールに指定されることで、従来は行うことが難しかったICT環境整備や先進的な学びを行うことが可能になります。ICT環境の整備やデジタル人材の育成に関心のある学校は、ぜひこの機会に検討してほしいと思います。

 

 コアネットでは「DXハイスクール」指定に向けてのICT環境整備支援やICTを活用したカリキュラムおよび授業づくりの支援を行っております。
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