ICT活用事例校レポート

同志社香里中学校・高等学校

虫本先生

 今回は、大阪府寝屋川市にある同志社香里中学校・高等学校に訪問し、2021年に新設され、注目を集めている繋真館(メディアセンター)で、一人一台の生徒用端末を活用した高校2年生の探究の授業の様子を見学させていただき、探究委員会の虫本先生にお話を伺いました。

同志社香里中学校・高等学校

インタビュー

—まずは今日の授業の内容と、御校における探究の授業の最終的なゴールを教えてください。

虫本先生同志社香里中学校・高等学校の探究の最終的なゴールは、卒業までに、各人で設定したテーマに関する卒業研究をまとめることです。もちろん、いきなり卒業研究をまとめさせるわけではなく、卒業研究をまとめるにあたり、必要な知識やスキルをそれまでに身に着けます。高校2年生の前半までは、自分の好きなテーマを決めて調べたり、発表したりする過程を通して、基礎的なスキルを身につけますが、高校2年生の後半で、本格的に「リサーチクエスチョン」を定めていきます。高校3年生からは自分の「リサーチクエスチョン」のテーマごとに、クラスの半分ぐらいの規模のチームに分かれ、ゼミに近い形で探究を進めていきます。
 今日見ていただいた授業を受けていた彼らは、高校2年生で、卒業研究の核となる「リサーチクエスチョン」の精度(オリジナリティがあるか? テーマが広すぎないか?等)を上げるため、様々な参考文献を集めている段階です。
 今日は、繋真館(メディアセンター)で司書教諭をしている柳井先生に手伝っていただき、CiNiiの使い方を勉強し、関連する先行研究の論文を見ながら、各自の設定したテーマを見直していました。自分たちが考えていたキーワードでは、出てくる論文が多すぎたり、少なすぎたりするので、都度、私や生徒同士で相談しながら、具体化や抽象化を繰り返し、適切な「リサーチクエスチョン」が設定できるよう各自でいろいろ試していました。


 

—CiNiiは我々もリサーチなどで良く使うサイトですが、大学生でもうまく使えている学生は少ないように思います。

虫本先生そうですね。無料で公開されている論文を読むなど、よく使う方も多いと思いますが、繋真館(メディアセンター)の蔵書や、系列の同志社大学の図書館も含め、オンラインからオフラインまで自由に文献を検索、活用しながら、より本質的で、深い問いを作れるようになってほしいと思っています。こうしたことができるのも、一人一台の端末が整備されていることと、その端末を館内で活用することを前提に作られた繋真館(メディアセンター)があるからこそですね。

 

本やPCを利用し、調べ物をしている様子

—授業中、(今日の授業を担当されていた)柳井先生も「ネット上にあるものは誰でも見られる。紙でしか見られないものはまだまだあり、重要」と仰っておられましたが、まさに御校の繋真館(メディアセンター)が大切にされていることはここにあるわけですね。

虫本先生そうですね。PCを文房具のように使いこなせるようになって欲しいというのが、本校のICT端末に対するスタンスであり、同時に、本などの紙の情報も同じレベルで使いこなせるようになってほしいと思っています。キーワードを用いた資料検索にはICTが相応しいかもしれませんが、豊富な蔵書を何気なく実際に手に取り、イマジネーションを広げたり、思わぬ発見や気づきが得られたりすることも大切なことだと思っています。

 

—「PCを文房具のように使いこなせる」ようにとのことでしたが、今日の授業でも皆さんGoogleのサービスなどを使いこなし、メモや課題提出を進めておられましたね。この辺りも指導されておられるのでしょうか?

虫本先生課題提出などは、Google Classroomを使っていますが、その他は何を使うかは特にこちらでは指定したり、指導したりはしていません。生徒たちがその時、その時に合わせて必要なソフトを選んで活用しています。この学年は、Googleのサービスを使い慣れているので、メモなどはGoogle docsを使っている生徒が多いですが、本格的にレポートを書くときには、MicrosoftのWordを使う生徒も既にいます。本格的に論文を書き出すと、もっと増えるのではと思います。メールアカウントは1人1つ渡していて、校内に関しては自由に使えるようにしてあります。
 メディアセンターへの図書購入のリクエストなどもメールでできるので、今日の生徒の中にも自分が読みたい参考文献のリクエストを出して、学校で購入したものを活用している子もいます。

 

—授業中、生徒さんたちがCiNiiで検索しているキーワードを拝見していても、使用しているツールのお話を伺っても、全体的に使用の自由度が高いように思います。

虫本先生そうかもしれません。導入の際、校内でも様々な意見が出て、議論を重ねてきましたが、現在は規制をなるべく最小限にしています。当然、不適切なワード検索や、ショッピングサイト、YouTube等へのアクセスは制限していますが、教員の判断で比較的容易にON・OFFを切り替えられるようにしています。生徒たちの着眼点は非常に面白いので、あまり狭めすぎず、興味を広げていってほしいと思います。こうすることで、自然と、自立的な勉強の仕方が身についていくのではないでしょうか。本校のこの姿勢はICTのポリシーに限りません。生徒が出した図書購入の希望は原則かなえるのが繋真館のポリシーです。

 

—今日の生徒さんたちが、卒業研究をどのようにまとめられるのか、大学に進学されてどのような活躍をされるのか、楽しみですね。
 本日はお時間いただきありがとうございました。

繋真館(メディアセンター)

人と人が集い、人と知識・情報を「繋(つな)ぐ」知の拠点です。
キャンパスの中心に位置し、屋上広場が各校舎を繋ぎます。
繋真館では、入門書から専門書まで約60,000冊の図書を収蔵しており、他にも雑誌や新聞、各種データベースなどさまざまなメディアを取り揃えています。
同志社香里中学校・高等学校 HPより抜粋

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