企業取材レポート

先生の想いと生徒の未来に寄り添う プログラミング教材「Monaca Education」


大学入試改革で情報Ⅰに注目が集まる一方で、単なる入試対策に終わらせず、生徒が論理的思考力を伸ばし、問題解決能力を身につけていくことを重視したプログラミング教育を行うことが、中高では特に大切な視点です。生徒が楽しみながらスマホアプリを作ることを通し、プログラミングの基礎学習から作品作りまで取り組めるプログラミング教材「Monaca Education」を提供している、アシアル株式会社 取締役 塚田 亮一さんと、アシアル情報教育研究所 所長 岡本 雄樹さんに、お話を伺いました。

 

インタビュー

―御社の「Monaca Education」について、HPによると元々はアプリ開発用のソフトだったということですが、開発の経緯や教育向けツールになった流れについて教えてください。
塚田氏:もともとアシアルではMonacaというスマホアプリを開発するためのサービスを手掛けています。これは日本にiPhoneやAndroidが上陸してスマートフォンが出始めたタイミングから数年後に出し、今では10年以上たつサービスです。当時我々はシステム開発会社でしたのでいろいろなアプリも作っていたのですが、AndroidとiOS両方に対応するのは大変ということで、一つでできるツールとしてMonacaを作り、現在でも全世界で使われています。
当初からクラウドで動く形にしておりましたので、教育の現場でもMonacaを使ってプログラミングの授業をされる学校が大学・専門学校だけでなく、高校もありました。採用していた高校から「無料プランを使っていたが有料版を使いたい」と、学校設置科目として40本くらいの注文が入り、開発ツールとして40本というのはなかなかすごい話であるため、直接学校まで話を伺いに行きました。そこで最近の高校生はスマートフォンやアプリに興味があるので、スマートフォンのアプリが作れるならプログラミングの授業に取り組みたいというモチベーションがあるという話を聞き、社内に持ち帰ってMonaca Educationの事業が始まったのが2015年くらいのことです。
当時のタイミングでは学習指導要領が変わり、ネットワークを活用した双方向性のプログラミングの重要性が高まると感じ、アプリも作れる本格的なプログラミングツールを中高生や専門学校生・大学生など教育の場で使ってもらおうということで始めたのがMonaca Educationになります。

 

―Monaca Educationの特徴を教えてください。
岡本氏:プロも使う本格的なツールをそのまま教育用にメニューや機能などを整理しているので、コース型というよりは、本当に自分で作品をいろいろと作れるということが大きな特徴です。また、今はWebアプリも対応しておりますので、作品を作ってほかの友達や家族に見せられるという手軽さも持ち合わせています。あとは、ぷよぷよプログラミングという教材をMonaca Education上で株式会社セガが提供しておりますので、そういったプラットフォームとしての展開がされているというところも一つ大きな特徴だと言えます。

 

―生徒なりに生活の中の課題を解決するようなアプリを作り、実学に結び付けられる学習を行うことができる点が御社のツールの強みでしょうか?
岡本氏:そうですね。学習指導要領でも、情報技術を課題解決に活かすというところが一番の目的になっているので、その目的に非常に適した教材だと思います。自分でやってみてできなかった時にどこがダメだったのかと俯瞰する力は「自分で考えながら何度か試行錯誤を繰り返す中で身につく」ものなので、問題集とか解いてもなかなか定着しないと思われますが、実際にプログラミングをやってみると意外と簡単に定着するので、その点でも非常に学習に適していると思います。

 

―先生の使いやすさという点ではいかがでしょうか?
岡本氏:まずプログラミングを指導するうえで一番大変なのは環境のセットアップや、サンプルのコードを作ったりすることですが、Monaca EducationではサインアップしてログインさえすればあとはURLをクリックするだけでサンプルのコードにたどり着けるので、その点で準備の手間はかなり軽減されます。すぐに内容に入れるという点でかなり使いやすいと思います。あとは、クラウドのツールだけでは勉強するのが難しいということで、JavaScriptやPythonなどの冊子型のプログラミングの教材も用意しています。そういったセットがあるので、学校の中で一斉授業するときにも使いやすいと非常に評価をいただいております。

 

―2025年度の共通テストを見据えて、座学を増やした方が良いのかなど、カリキュラム作りに苦慮されている先生方も多いのですが、そのような情報Ⅰの共通テストへの対応もこの教材の中に含まれていますか?
岡本氏:座学の支援サポートでは、プログラミング以外の別単元の動画教材を用意しており、授業の中で使っていただいてもいいですし、生徒さんの復習で使っていただくこともできます。
情報Ⅰの2単位で50~60時間というコマ数の中では、共通テスト対策はかなり厳しいため、科目の中でのメリハリが重要だと思っています。いわゆる座学で済む部分はできるだけ圧縮して、おそらく配点が大きくなるプログラミングは自分で何か作るとか、データ活用であればデータを自分で分析して発表するような一通りのサイクルをやってみないと、今出されている試作問題のような問題に対応できる知識・技能は身につかないと思います。そのメリハリをつけた方がいいですという話をよくしています。

 

―共通テスト手順記述標準言語であるDNCLへの対応についてはどのようにお考えですか?
岡本氏:我々もDNCLのツールや問題集を実は用意しています。簡単にDNCLの命令をボタンでポンポンと押していくと疑似言語のコードが書けて、実際にそれを動かせるという体験できるような教材を用意しています。その問題集も用意しているので、一度なんらかのテキスト言語で基本的な内容をマスターした上で、最終的に読み替えの部分をDNCLでやるというような流れで学ぶことをお薦めしています。中にはいきなりDNCLの問題をやらせろという論の人もいますが、それはもったいないですし、どこかでつまずいた場合にそこから対応できなくなってしまうので、基本的にベースのテキスト言語を学び、最終的に高校3年生の時に我々のDNCLツールや問題集を使って対応していただくことをお薦めします。

DNCL…高等学校におけるアルゴリズムやプログラムに関する教育では、採用されるプログラミング言語が多様かつプログラミングの実習時間も異なるため、情報Ⅰ共通テストのプログラミングの問題では共通テスト用の手順記述言語 (DNCL) を使用して問題を解くことになっています。

 

―情報Ⅰを一旦高校2年生のカリキュラムに置いて対応した学校が、2025年の結果を見て検討し直す時に、高1に持ってくるか高2のままにするか悩まれる先生方もいらっしゃると思いますが、御社としては情報Ⅰを何年生で学ぶべきだとお考えですか?
塚田氏:私見というか、アシアルとしての考えにはなってしまいますが、絶対に高校1年生の時にやった方がいいと思います。というのは、情報Ⅰという科目は別に情報学を学ぶためにやる科目ではなくて、あらゆる学問で、将来どのような職についたとしても、この情報技術という手段で課題を解決する力はつけておくべきということです。できるだけ早く学んでもらって、探究や他教科でのコンピューターを用いた課題解決に活かし、さらには将来の進路に活かしてほしいです。
大学でも数理データサイエンスのコースがどんどん設置されているので、その基礎の基礎になる情報Ⅰは早ければ早い方がいいというのが我々の意見です。

 

―中高一貫校では、中学校くらいからそういう内容に触れて学ばせていく方がむしろ望ましいのでしょうか?
岡本氏:望ましいと思います。中高一貫校だと連携も取れると思うので。

 

御社の中で、中学校用の教材もご用意はありますか?
岡本氏:テキストプログラミング用の教材は情報Ⅰがターゲットになることが多いのですが、HTMLとかCSSを学べるようなものや、カスタマイズしてチャットとデータベースを使って双方向性の体験ができるような教材を用意しています。中高一貫校で6年間通して使えるプランも提供しているので、WebサイトをMonacaで作り、中学生の時に発表をして、高1の情報Ⅰの授業に入ってきたら本格的にテキストプログラミングをやっていくというような流れで段階的に使っていただいている学校もあります。
また、株式会社も6月に中学ターゲットで中学の技術家庭科向けにネットワーク双方向のぷよぷよプログラミングの追加教材を出していますので、中学生でも十分に使用できます。

 

最後に今後の展望を教えてください。
岡本氏::Monacaはもともとソフトウェアを作ることを生業にしていた私たちが始めた情報教育ツールです。何かを作り、世に発信していくためのものなので、今は情報Ⅰという科目にフォーカスしていますが、その中で基礎を覚えたら他教科でも使って、物理や化学の授業のなど、学校のいろいろなところでプログラミングや情報技術を学べる・活かせるというような仕掛けを増やしていきたいですね。
そういうところで触っていれば共通テストは最後に対策していけるとも思っています。
「楽しく自分が作りたいものを作れる」という方向へ、生徒や先生方を導いていけるように、我々にできる情報発信や教材の提供、コンテストのようなイベントの企画をしていきたいと考えています。
 

―ありがとうございました。

 

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