ICT活用事例校レポート

小林聖心女子学院<後編>

 後半では、大川先生による「Cabri II plus【以下Cabri(カブリ)】」を使った小学校6年生の算数の授業を見学させていただいたので、その様子をレポートします。

小林聖心女子学院

「Cabri II plus」は、カブリログ社(フランス)により製作された幾何ソフト。3次元空間で平面図形や立体を作図し、それらを動かすことができる。

 

<後編>
図形作図ソフト「Cabri II plus(カブリ)」を用いた小6算数の授業

授業の概要

 この授業は、算数から数学への移行をスムーズにすることを目的に導入されている「Cabri(カブリ)」という数学教育用ソフトウェアを本格的に活用し始める際の導入として実施されました。

 授業では、普段使用しているiPadではなく、WindowsのノートPCを使用していました。生徒たちからは、普段使い慣れているタブレットとは異なるPCの操作性に、不安の声もありましたが、授業が進むにつれてあっという間に慣れていきました。

授業の進行

 授業は以下の流れで進みました。

  1. Cabriを触って自分で、どんなことができるかを見つけ共有する
  2. 先生からいくつか応用的な操作をレクチャー
  3. 図形を使って自由に作品をつくる

 授業の冒頭で先生から「自分時間(一人で作業する時間)と相談時間(友達と相談しながら作業する時間)の切り替え」と、「再現可能なように記録する」ことが注意事項として伝えられましたが、細かい説明はなく、子供たちは自由にCabriを触っていました。

 最初は操作に戸惑う生徒もいましたが、徐々に「できた!」という声が教室に響き始めました。

自由な学びと発見の喜び

 自分時間中、生徒たちからは、「○○ってどうやるの?」「○○ができません!」という質問や疑問が飛び交いますが、先生はすぐに生徒の質問に答えるのではなく、自由に触らせることで、生徒自身が「できること」を発見する喜びを感じられるようにしていました。PC操作に不慣れだった生徒も、発見を重ねることで、次第に前のめりになっていきました。


 相談時間になると、隣の友達と相談したり、何人かの生徒が発見したことを全員の前で発表したりします。マウスで何回クリックして図形を描いたかを確認しながら、「線分は2回クリック、つまり2点が決まれば描くことができますね。」と、クリックの数と関連して、先生が算数的な用語(直線、線分、半直線の違い、円、円弧を構成する要素など)を説明すると、すでに習っていた算数の知識が実感として結びついたのか、「あ~なるほど」という声が多く聞かれました。

 次に、Cabriの応用的な操作(図形の色塗り・正多角形の作り方など)のレクチャーがありましたが、その後は自由に図形を使って作品を作る時間に移りました。生徒たちは夢中になって様々な図形を作成し、色を塗りながら、自分たちの作品を完成させていきました。どれも、今日初めて触ったソフトで作ったとは思えない、素敵な作品ばかりでした。

授業の工夫

 この授業を拝見し、新しいソフトを導入する際の指導方法の工夫が素晴らしいと感じました。初めから網羅的に操作を説明するのではなく、生徒が自分で発見し、友達と相談しながら学んでいく仕組みが構築されていたことによって、新しいソフトの操作に対する不安が解消され、学びへの意欲がどんどん高まっていくのが感じられました。

 生徒たちは単に操作を覚えるだけでなく、自分で考え、試行錯誤することで、算数的用語への理解を深めながら、ソフトの操作知識と共に図形の数学的な見方や考え方も身につけることができていました。「失敗しても簡単にやりなおせる」ICT機器の良さを十二分に発揮した素敵な実践でした。

おわりに

 今後も小林聖心女子学院のICT活用に注目し、機会があれば紹介していきたいと思います。授業を拝見させていただいた大川先生、生徒の皆さん、本当にありがとうございました。

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