ICT活用事例校レポート

ICT機器を「普段使い」する授業づくり 城北中学校・高等学校

城北中学校・高等学校

今回は、ICT利活用の事例を求めて、東京都板橋区にある城北中学校・高等学校の清水団先生を訪問しました。取材の依頼をする際に、「インタビューだけでなく、可能ならICT利活用の授業を見せてほしい」というリクエストを出しました。
私の関心事に、「どのようにすれば、ICT利活用が『普段使い』できるのか」という点があります。普段使いとは、特別な授業や教育活動のシーンで、教師も生徒も「頑張って使っている」のではなく、普段から「当たり前のように」使っているという意味です。

もうひとつ、城北中学校のWebサイトに掲載されている「ICT教育のコンテンツ」に魅了されたからです。多くの学校がICTの「活用シーン」を紹介していますが、清水先生は、ICT教育の方針・ポリシーを情熱的に語っておられ、ぜひ取材をさせていただきたいと思い、今回授業見学、取材を快諾いただきました。


お話を伺った清水団先生

(聞き手:コアネット川畑)

 

ICT教育を支える「ICT教育3か年計画」

- 以前から、城北はICT教育が進んでいるという評価を聞いています。いつからICT教育がスタートしたのでしょうか

もちろん、教師が個々にPCなどを使い授業をしていたことはあったのでしょうが、本格的にという意味では、2014年度にICT教育の3か年計画を作成しました。ですので、2014年から、ということでしょうか。
3か年計画の最後の年である2017年度は、ICTを活用した授業の稼働がかなり上がったと思います。現在、学校でiPad360台を購入して、9台のカートを用意していますが、2017年度は、カートの予約が難しくなることもありましたので、ICTを活用した授業が増えた証拠だと思います。現在は多くの教師が様々な場面で使っていますね。

- 2017年度に稼働が上がったということは、導入の当初からうまく活用できたわけではない、ということですか。

そうですね。本校では「購入する以上は、しっかり使いなさい」というような注文は付けません。「活用したければ、よければ使用してください」というスタイルです。それが、年々稼動が上がった理由なのかもしれません。

- しかし、強制的に使用するという計画でないにも関わらず、360台購入するということは、大胆な決断だったのではないでしょうか。

この決断には、いくつかの理由があります。そもそも本校は「人間形成と大学進学」を創立の理念としています。計画を作成する段階では、新しい大学入試の姿がみえつつあったこと、そして何よりも社会の変化を見たときには、ICT機器の活用は当然のことと理解していました。
その上で、中途半端な導入・購入では、意味がない(繋がらない、使いたいときに使えないなど)だろうと考えていました。
そこで、アクセスポイントは100か所以上、iPadは360台という購入を決めました。

 

      

ICT機器を「普段使いしている」授業づくり

- 本日の授業は、高校3年生の東大を目指すクラスの数学でした。生徒の解いた問題をApple TVに映写させて、生徒自身が解説をして、清水先生がコメント・アドバイスを行う、または「後でコメント送っておきます」というスタイルでしたね。

特に数学科で統一したスタイルではないのですが、以前から、私はこのスタイルで授業を行っています。私の中ではICT利活用が進むと、「時間」「空間」「場所」を問わず、いろいろな場面で学ぶ機会が増えるので、こういう授業スタイルを実践するのがいいのではないかと考えています。また、アクティブ・ラーニング型の授業を行うのであれば、やはりICT機器を使う方が便利ですし、効果的ではないでしょうか。
もうひとつ、ICT機器を使うと、教師の役割が変わるとよく言われます。いわゆる「コーチ」や「アジテーター」、「コーディネーター」のような役割を担うということがよく言われています。しかし、私としては、それではつまらないという想いがあります。教師ももっと「学びのなかに入っていく」、「生徒ともに学ぶ」ということが大切ですし、その姿勢を共有することで、教師も生徒も同じように学びに対して「ワクワク」できるのではないかと感じています。

      

ICTが突破できる4つのキーワード

- 学校Webサイトの「ICT教育のポリシー」がとても情熱的でステキですね。

そうですか。おそらくMITのレズニック教授の影響を受けて、コメントを発信している点ではないでしょうか。私は2年前に教育視察を行い、レズニック教授と話をする機会を得ました。この機会から、生徒の主体性からクリエイティビティを育てることが大切だという結論に達しました。
この「生徒の主体性からクリエイティビティを育てる」ためには、ICT利活用の教育が必要であると。「情熱」をもって、「仲間」と共にリスクを取って、新しい「プロジェクト」に「挑戦」してほしいと願っています。

ICTが突破できる4つのキーワード

  • パッション(情熱)
  • 仲間
  • プロジェクト
  • チャレンジ(挑戦)

このような考えに影響を受けているのですが、ICT利活用を行うことで、授業だけではなく「学校そのもの」も変わると思っています。それは、ICT機器の活用により、保護者との連絡方法、会議の在り方など、いわゆる「働き方」の部分ですね。これまでのやり方を見直すなど、仕組みを少しずつ変えています。まだ試行しているところですが、いろいろな可能性があると思いますよ。

      

「ICT機器が根付く環境づくり」は「良かったら使ってください」という姿勢で

- これまでのお話から、成功のポイントは、急がず、無理をせずに、でも整備は万全に行うということでしょうか。

そうですね。基本的なスタンスは、ICT委員会が色々と準備をしているので、使いたい時になれば、「良かったら使ってください」というものです。教師自身が授業でやりたいことがあって、それぞれの教師の個性を活かす授業スタイルを実現するためにICTを利用してほしいという考え方です。型にはめることもなく、強要もしていませんが、稼動が上がっていますね。これからの教育には、グローバル教育やICT教育が必要不可欠であることは、分かっていますから、使うべきタイミングは必ず出てきますね。
最近、いわゆる「BYOD」(生徒1人1台、端末を持参する)を検討する学校が増えてきたと思います。いろいろな意見があると思うのですが、本校でも本当は自分のお気に入りの端末を持ち込み、自由に使ってもらいたいと思っています。そのためには、環境の整備等、十分に行っていきたい思います。
生徒はiPadで「こんなことができるんだ」から、自分でも「こんなことやってみようかな」という段階に入っていると思います。今後はこちらが思ってもいないような使い方を生徒自らがしてくれることが理想だと思っています。

― いろいろと参考になりました。ありがとうございました。

 

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