ICT活用事例校レポート

工学院大学附属中学校・高等学校

今回は「K-STEAM」というグローバル・リベラルアーツと数理情報工学を融合した教育を実践されている、工学院大学附属中学校・高等学校の事例をご紹介します。本稿では、特に多くの学校で課題となっている情報Ⅰの対応を中心に、情報科の新海龍一先生よりお話を伺いました。

工学院大学附属中学校・高等学校

 

インタビュー

―ICT環境整備についてどのように進められてきましたか?
 10年程前から、端末の1人1台化を行っていました。当初はiPadを利用していましたが、プログラミング教育などICT活用を進める中で、現在はノートPCまたはタブレットPC切り替えています。中学生はBYAD*(Surface Go)、高校はBYOD*で導入するようにしています。
 教員側は、マイクロソフト認定教育イノベーターの資格を取得する動きが情報科以外の教員にも広がっていて、近年さらにICTの活用が進んできています。

*BYAD:学校が指定した端末を各家庭で購入する導入方式のこと。
*BYOD:児童・生徒が個人(家庭)で所有しているスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどの端末を学校に持ち込む導入方式のこと。

 
―学校で利用しているICTサービスや学習ツールについて教えてください。
 生徒と教員の情報共有には主にGoogle Classroom、Google Chatを使用し、マイクロソフトのTeamsで教員同士の連絡を行っています。お知らせ・課題・資料の配布、回収など特に問題なく利用できています。また、外部のコンサルティングも活用して授業・校務のICT化は歩みを止めずに改善を続けています。
 授業での利用はGoogleやマイクロソフトなど、教員の裁量で状況に応じて使い分けています。Googleのサービスを利用しているならExcelだけでなくスプレッドシートを利用できるようになった方が効率的だという考え方があり、生徒もすぐに順応できているようです。
 ICTに関する諸業務は事務職員とICT関連の部署を作り、対応しています。Googleアカウント管理や各種学習ツールの年度更新を上記メンバーで対応しているので、新入生を迎える時期は大変ですね。

―情報Ⅰの取り組みについて教えてください。
 現在は高校2年生で情報Ⅰを履修しています。2年生で2単位を行い、既存のカリキュラムをベースに、必要に応じて共通テストに適した内容にアレンジしています。情報科の教員2名体制で授業しています。単位数や履修時期については、大学入学共通テストの実際の問題や難易度、得点状況などデータが揃った段階で見直しを検討する予定です。
授業については、プログラミングなどの作業を行う時間と教科書に沿って知識を習得する時間を半々で設定しています。基本的には教科書の順番通りに授業を進めるベーシックな形式をとっています。

情報Ⅰの学習内容抜粋

【1学期】
表計算ソフト・プレゼンテーションソフトの活用

【2学期】
プログラミング実践
言語はHTMLやJava、Pythonを学習
ツールはGoogleのColaboratoryを利用

【3学期】
データベース作成
ツールはマイクロソフトのAccessを利用

 
プログラミングは生徒が作成したデータの採点や評価のしやすさを意識してツール選定を行いました。Googleのツールはオンライン上でプログラミング課題の提出が可能なので、生徒への評価・フィードバックの面で便利に利用しています。

―大学入学共通テストの対策について教えてください
 大学入学共通テストで出題されるプログラミング言語はDNCL(共通テスト手順記述標準言語)ですが、既存の言語で学んだ思考法で対応可能だと考えています。授業でプログラミングをしっかり学んでいるので、現状想定される出題レベルであれば、高校3年生になって入試に向けて対策するレベルで十分かと思います。

―現状の取り組みについて課題を感じられている点はありますか?
 大学入学共通テストで情報Ⅰが初年度のため、どこまで対策に時間を割くか、常に考えながら授業を進めています。
 また、プログラミングについてのテスト・評価について、不正対策などシステム面の整備を進め、適切なツールを選定していきたいです。
 情報Ⅰ自体がまだまだ未発展の部分があって、手探りの部分が多く、ロールモデル、理想像を描くのが難しいと感じています。

―授業以外での特徴的な取り組みについて教えてください
 デジタルクリエイター育成部という部活動があり、70名所属しています。サイエンス部の次に部員数が多い部活動になっています。
 部活内で「マインクラフト」「3Dプリンター」「プログラミング」「動画制作」「音楽制作」などのチームに分かれて活動しています。文化祭や外部の大会に作品を出展し、大会では入賞したこともあります。他にも、学校説明会で受験生に対して部活動体験を行ったりもしています。
 顧問以外にも工学院高校のOB・チューターが指導してくれています。高大連携で大学の教授、ゼミ生なども指導に関わってくれており、意義ある活動になっています。

―今後の展望をお聞かせください
 情報Ⅰのカリキュラムの充実、授業実践、部活動などを情報科の教員だけで行うのは難しいと考えています。他教科の教員はもちろん、OBなど外部人材をはじめ、様々な方々と協働して対応する体制づくりが必要だと考えています。そのためのビジョン、システム構築を行っていきたいです。

 

コアネットでは、STEAM教育や情報Ⅰの授業づくりについて様々な支援を行っています。お悩みやお困りごとがありましたらお気軽にご連絡ください。

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