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【セミナーレポート】学校のDX化を成功に導く3つのポイント

 今回は2024年5月23日に行われた2024教育DX推進セミナー第1回「学校のDX化を成功に導く3つのポイント~学びの質を高め、業務効率化を推進する~」の概要をお伝えします。

1.教育DXとは


 教育DXとは、デジタルテクノロジーを活用してカリキュラムや学習のあり方を革新し、教職員の業務、学校文化そのものを変革し、時代に対応した教育を確立することを指します。現代社会は、デジタル化が急速に進み、国もDX化を推進するための施策を打ち出しています。
 今後は学校のDX化を進めていく必要がありますが、気を付けるべき点として、DX化とは単にデジタルツールを導入するだけで終わりではなく、学びのプロセスや成果自体を変化させるものであるという点です。


 例えば、都立高校ではすでに一部の都立高校でダッシュボードが実装され、来年度にはほぼ全ての都立高校で実装されます。ダッシュボードとは学校内の様々なデータを集約し可視化するツールで、生徒別の活動状況をリアルタイムに把握することができます。
 宿題や演習の取り組み状況や提出状況なども生徒ごとに表示でき、一生懸命にやっている生徒と取り組めてない生徒なども一覧でパッと見て可視化できるようになっています。
 渋谷区教育委員会ではさらに細分化されたダッシュボードが実証事業として使用されています。例えば欠席・遅刻や保健室の利用状況などが一覧で見られたり、生徒それぞれが自分の状態を回答するアンケート機能などもあります。このような情報をクラス運営や学校運営に活用し、不登校や退学者数の割合を減らす取り組みなども行われています。
 公立学校ではこのようにダッシュボードなどを用いた教育のデータ活用が今後も進んでいくと考えられます。

 

2.私立学校の三極化

 私立学校については、コロナの休校対応時に様々なICTツールやシステムを導入し、利用した学校が多いと思いますが、対面授業が復活し一斉型の授業に戻った現在、ICT活用やDX化について検討があまり行われず、活用がそれほど進んでいない学校も多いと感じます。
 今、私立学校は学校全体で活用が進んでいる学校と停滞している学校、そもそもICT活用に消極的である学校に三極化しています。
 公立学校では国の予算を活用したDX化がどんどん進んでいくと思われますが、私立学校に関しては、停滞している学校や消極的な学校は今後の社会の流れから取り残され、公立学校の流れからも取り残されていってしまう可能性があるのではないかと私としては危機感を感じています。
 弊社の取り組みとしてもDX化のためのデータ活用支援などをすでに始めています。例えば模試の成績や大学入試の結果などの相関や関連性を調べて、さらに自己調整学習理論に基づく学習状況のアンケートを実施して模試の結果や大学入試の結果と紐付けをしてそのデータを分析しています。
 その他にも、学内には校務や学校経営などでも活用できるデータがあります。一般企業はデータを可視化して活用するということが進んでいるため、学校でも同じようにデータを統合的に分析して、学校経営に生かすことが効果的だと考えています。
 今後最も重要だと思うのは、教育DXにおける「トランスフォーメーション」の部分だと考えます。どのデジタルツールを使うのかが重要なのではなく、学びや学校全体を時代に合わせて変革する、「トランスフォーメーション」を行う意思があるかどうかです。
 今の時代の流れに沿った学びや学校経営を行うためにも、今までの体制や組織、教育の方法などを変革する意思、変化を受け入れる意思があるかどうかがが現在、一番問われているのではないでしょうか?

 

3.「学校のDX化」3つのポイント

 それでは、「学校のDX化」3つのポイントを紹介します。

 1つ目に、「短期間」「少人数」でDX型の学び・校務案を作成し、共有することです。

 DX化が進まない学校に共通する特徴は検討期間が長いことです。DX化やICTの活用で困っているという相談を受けることが多いのですが、1年経っても2年経っても検討中のまま、行動に移さないことが多いと感じます。
 職員会議などで全体に意見を求めた際、DXを推進したいという意見と、面倒くさいという意見に分かれてしまい、結局全体としてはまとまらずに長引いてしまっている学校が多いのではないでしょうか。
 このような状況を変えていくために必要なのは、ICT推進委員会などの部署を作り、DX化を具体的に進めて行けるような仕組みを作ることです。ICT推進委員会などの部署が管理職と連携し、具体的な案、たたき台を作っていくことが大切です。実際に部署を作り、たたき台を作っていくと、検討中の段階から1歩も2歩も前に進めることができます。
 この推進委員会は各科目や校務分掌などからICT活用に意欲がある方やベテランの方、事務の方などをある程度幅広く選定し、運営していきます。少人数かつ幅広くという人選が大切です。
 例えば3年後の2027年度にDX化をしようとすると、時間の経過とともに使用ツールや検討していたツールが古くなり、時代に合わなくなるなどの事態が起きてしまいます。今年度検討しているものは、今年度中、少なくとも次年度には実現できるようにするスピード感で進めて行きましょう。
 例えば4月にICT推進委員会を立ち上げたら、夏休み中に方針を検討し、2学期の初めにはたたき台を発信し、意見をもらって、10月~11月にはある程度の方向性を固めます。そして、その固めた案に沿ってどんなDXツールを使うか検討し、1ヶ月~2ヶ月ぐらい試用版を使ってみます。そして次の4月に何を導入するか決定する、というスピード感で進めて行きましょう。従来のPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)ではなく、OODAサイクル(観察→状況判断→意思決定→実行)で取り組んでいくことがポイントです。

 2つ目に、DX化は現状の否定ではなく、新たな手法を創造することだということです。

 現状の授業の手法にICTを加えるのではなく、「最新技術を活用した新たな学びを作る」という風に考え方を変えることが重要です。
 従来型の授業は一斉授業による知識の習得が前提でした。小テストや演習を通じて知識を定着させ、協働学習も行いながら、ペーパーテストによる評価を行い、その結果で個別に指導するという直線的流れに沿ったものでした。
 ここに新しくDXツールを組み込み、置き換えようとすると、もう完成されているものに加えただけの形になってしまい、教員の負担が増えるばかりでなく、その効果も実感しにくくなります。
 DXツールを用いた新しい学びは、例えばAI型のドリルを用いて生徒が個々に習熟度別の問題を解き、解けなかったら動画教材でわからないところをもう1度復習する。理解が遅れている生徒は、教員が個別にフォローする、逆に進んでいる生徒に関しても個別にフォローするという形が考えられます。
 30人生徒がいたら習熟度が高い生徒と低い生徒を個別にフォローして、残りのボリュームゾーンの生徒はある程度AIで進めていくことで、基礎的な知識、学力を定着させながら、教科横断型の協働学習や探究学習を行う時間も生み出すことができます。
 現在はCBTを用いて生徒それぞれの習熟度に合わせてテストの内容も変えられ、ルーブリックを活用したパフォーマンス評価なども行えるので、評価の形も変わっていくと考えられます。
 eポートフォリオやダッシュボードなどを用いて進捗管理や成績管理を行っていくと、教員も管理しやすく、指導しやすい状況を生み出すことができます。
 このような新しい学びの形を生み出すことができるのです。
 
 3つ目にDXツールは「予算」or「使いやすさ」の2択で検討することです。

 DX化が進まない学校は、DXツールの選定基準が曖昧なため判断できない、もしくは選定しないということが多いです。しかし、時代の流れとして今後DX化は一層進んでいくものと捉えて、対応していくことが求められます。特に校務などの事務的なものは「予算」か「使いやすさ」を重視してDXツールを導入していくことで教員の負担を大幅に減らすことができます。
 生徒に直接関わるツールであれば、それを家庭で負担してもらうなどして、学校の予算だけで賄おうとせず予算を確保していくことが必要です。
 Microsoft OfficeやGoogle Classroomなどでは、生徒分は無償で使えます。また、文科省や経済産業省、デジタル庁などもこのDX化について補助金を出している場合もあります。学校に補助金を出している場合もあれば、DX化ツールを開発している企業に補助金を出し、学校は無料で使える仕組みになっているものもあります。ぜひ情報収集し、活用できる補助金についても検討してください。
 DX化が進んでいる学校事例については弊社のHPで紹介しています。ぜひ参考にしてください。

ICT活用事例校レポート

 

4.まとめ

 教育のDX化、学校のDX化というのは待ったなしの時期に来ていると思います。特に生成AIの発展技術はこの世の中、社会の仕組みそのものを変える大きな技術進展だと言われています。
 この生成AIの活用を含めたDX化をしていかなければ、学校は時代に取り残されたものになってしまうのではないでしょうか。学校の労働環境としても、今は教員のなり手も少なく、公立の方が教育DXなどの環境が充実していることになれば生徒や教員の私学離れが起こってしまう可能性もあります。その点を踏まえてもDX化を進めて行くことが大切だと考えます。
 

 

 コアネットではICTの利活用や学校のDX化に関する情報提供、ICT環境整備支援、ICT活用研修を行っています。
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