通常の生成系AIは学習済みの知識に基づいて文章を生成しますが、RAGでは追加で外部情報を取り込みながら応答を行うため、より正確かつ最新の知識に基づく内容が生成されやすくなります。
● 仕組みのイメージ
- ユーザーの質問や指示(プロンプト)を受け取る
- 質問内容をもとに、関連性の高いドキュメントやデータを検索・抽出
- 抽出した情報をもとに、LLMが最終的な回答や文章を生成
- ユーザーに結果を返す
これにより、外部データベースやインターネット上の最新記事などから必要な知識を取り込みつつ、答えられます。
生成AI単体よりも、外部ソースを照合することで事実に基づいた回答が得やすく、ハルシネーションの減少が期待できます。モデルが事前学習時点までの知識しか持っていなくても、RAGなら外部情報を検索することで最新情報を取り込むことが可能です。また、参照するデータソースを切り替えることで、業界ごとの専門知識や個別ニーズに合わせて利用可能です。
一方で適切なドキュメントが検索できないと、回答の品質も下がる可能性もあります。加えてRAGの導入は外部データベースの整備、検索エンジンとの連携など、LLM単体に比べると導入の手間やコストが増え、取り込むデータソースによって偏った情報が含まれる場合は、生成される文章にも偏りが生じることも考えられます。
RAGを導入する場合は、外部データソースの選定など大掛かりなものになりやすいこともあり、実際に試してみることが難しくなります。RAGと同じような手法を使ったものにGoogleが提供する「Notebook LM」があります。実際の仕組みはRAGと異なるものの、「Notebook LM」であれば比較的容易にイメージを体感できます。
「Notebook LM」は、ユーザーがアップロードしたドキュメントやPDF、ウェブページ、YouTube動画などの情報をもとに、要約の作成や質問への回答、さらには新しいアイデアの提案を行うサービスです。RAGの手法を取り入れたAI搭載のノートブックツールでああり、通常エンジニアによる設定が必要なRAGと異なり、個人単位でも簡易的な利用を行うことができます。議事録などの校内資料を読み込ませることで資料の要約・分析や質問対応、欠席した会議の要点を確認するなど今ある資料を利用して簡易的なRAGの仕組みを体験いただけます。
RAGの教育分野への活用としては以下のようなことが考えられます。
- 教材作成の効率化
カリキュラムに合わせた情報を集め、複数の教科書やオンライン資料を検索した上でまとめ、授業用スライドや配布資料を自動生成する補助に使用。 - 質疑応答(アシスタント)
生徒がわからない点をAIに質問→教材や学習サイトから必要情報を検索しながら、答えを提示。学校が管理する信頼できるデータベースを検索対象にすることで、誤情報のリスクを低減できる。 - 個別学習のサポート
教科書や問題集、参考書などを取り込み、ポイント解説・演習問題のヒント提示など、個別の学習ニーズに合わせた補足説明が可能になる。 - 校務支援
行政や文科省が提供するガイドライン・通知を検索し、教務に必要な情報を抜き出してまとめることで、教員の業務負担を軽減。
RAG(検索拡張生成)は、大規模言語モデルの柔軟な文章生成能力と、外部データソースの正確性・最新性を組み合わせることで、より実用的なAI支援を可能にする技術です。教育現場での教材作成支援や学習者の個別指導サポート、校務・研究支援など、多岐にわたる活用方法が考えられます。
一方で、検索対象データの品質・セキュリティ管理や、AIの回答を鵜呑みにしすぎないリテラシー教育も重要です。これらを踏まえて適切に導入すれば、教員の業務を効率化しながら学習者の多様なニーズに応える、強力なツールとなり得るでしょう。
今後の生成AIの動向として、地域や個別の学校、個人のデータを容易に組み合わせられるようなサービスが出てくることが予想されます。よりパーソナライズされた生成AIを気軽に活用できるようになれば、社会や学びの形が変わっていくことになります。そのために、まずは学校全体で学び・校務における様々なデータを保存し、RAGへの活用を円滑に行うための準備を行うことが重要と考えられます。
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