教育ICTキーワード

ラーニングアナリティクス

ラーニングアナリティクス(Learning Analytics)とは、学習履歴(スタディログ)である「教育ビッグデータ」を分析し、学習の進捗状況や定着状況を把握した上で、学習のフォローやサポートを行う取り組みのことです。

 これまで学習分析を行う際はアンケートによる情報収集やテストによる分析が一般的でした。しかし、このようなデータは学習者の意見や成績は収集できるものの、学習結果に至るプロセスまで分析するのは難しいと言われていました。

 しかし、2000年代に入って社会が急速にデジタル化したことによって、教育分野におけるビッグデータである「教育ビッグデータ」の活用の動きがみられるようになりました。ITの進化とともに、根拠(エビデンス)に基づく教育改善を求める機運も高まったため、「ラーニングアナリティクス」の教育現場での活用が本格的にスタートしていきます。

 教育ビッグデータについては過去のキーワードで紹介していますので、ご覧ください。

 

ラーニングアナリティクスによって教育の何が変わるのか?

 さて、この「ラーニングアナリティクス」を用いると、教育現場はどのように変化していくのでしょうか?例を挙げると次のような変化が起こると予想されます。

■1人ひとりに合った学習が実現できる(個別最適化)
ラーニングアナリティクスにより、蓄積された膨大な学習履歴(ログ)から傾向やパターンを分析し、1人ひとりの苦手分野や必要な学習を導き出すことができます。個々の適性も可視化することができるため、個性や得意分野を伸ばすためのツールとしても活用できるでしょう。

■主体的な学びを実現できる
学習履歴が残ることで学習状況が可視化され、どの学習によく取り組み、反対にどの学習が進んでいないかをひと目で知ることができます。教師がその様子を見て、学習が進んでいない生徒をフォローしたり、生徒の頑張りに対してフィードバックをしたりすることができます。生徒自身も自分の学習状況を把握できるので、自分自身で学習を計画的に進めるなど、主体的に学習に取り組む姿勢を生み出すことができるでしょう。

■教育方法をブラッシュアップできる
学習活動時の活発度や生徒の参加度、理解度も可視化できます。このことは、行った授業に対するフィードバックにもなります。このデータに基づいて生徒が理解しにくい箇所に補足説明を加えたり、授業の進め方を変えたりすることで、教育者自身のスキルアップにも繋がるでしょう。

 以上のほかにも、ラーニングアナリティクスは使い方次第で様々な学習活動に生かすことができます。

ラーニングアナリティクス導入事例

 実際に各自治体でもラーニングアナリティクスを活用する動きが始まっています。

 東京都渋谷区、茨城県つくば市ではいち早くから教育データの活用について検討をはじめ、教育に関わる様々なデータを集約し、グラフや数値化された情報として1つの画面に表示する「教育ダッシュボード」というツールを導入しています。

「教育ダッシュボード」によって、生徒のテストの成績だけでなく、その日の気分や体調、授業満足度などの様々な情報が可視化され、それを教師が一目見て把握して、対応できるようになるため、1人ひとりの児童生徒をよりきめ細かく、多面的に見られるようになる可能性があります。

Microsoft Customer Story 渋谷区の事例

Microsoft Customer Story つくば市の事例

 

「ラーニングアナリティクス」を用いた教育の未来像

 ラーニングアナリティクスを用いた教育は、生徒1人ひとりの実態に即した学習支援が実現できる点や授業に対してのフィードバックが受けられる点で、教師・生徒どちらにも大きなメリットがあります。また、教師・生徒がよりアクティブに学びに取り組める環境を生み出せる可能性も秘めています。

 ビッグデータ解析の技術は年々進歩しており、ラーニングアナリティクス領域も急成長すると考えられます。今後もラーニングアナリティクスについての理解を深め、教育現場での利活用の方法を考えていきましょう。

 
 

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