大学入試において、筆記試験では測れない多様な能力を評価することができる総合型・学校推薦型選抜の割合が年々拡大しています。
今回ご紹介する「EdvPath(エデュパス)」は学業や部活動の成績だけでは測ることのできない生徒それぞれの能力を可視化し、生徒の成長を促すことができるサービスです。Edv Future株式会社の代表取締役山崎泰正氏に「EdvPath」を開発された経緯やサービス内容について伺いました。
《プロフィール》
Edv Future株式会社 代表取締役
山崎 泰正氏
2012年に人材業界へ新卒入社。中途でデジタル業界のスタートアップで役員として従事。新卒から一貫して社会人のキャリアに関する意思決定をサポート。人材業界の経験と自らの実体験から「情報格差をなくして、自ら意思決定できる人を増やす」という想いでEdv Futureを創業。情報経営イノベーション専門職大学客員教員。2022 年度グッドデザイン賞受賞。
「EdvPath」のサービスについて教えてください。
「EdvPath」は小学4年生から大学2・3年生を対象にしたサービスで、メインは中学1年生~高校3年生に使用していただいています。非認知能力の中でもSEL(社会的・情動的学習)やEQとGRIT(やりぬく力)について、サーベイ(調査)機能を用いて見える化ができるサービスになっています。生徒の学力だけではわからない行動特性などが見えるようになるため、生徒の成長支援につなげることができます。
また、学級経営や探究学習を通した生徒の変化を見えるようにし、カリキュラム探究で使えるようなコンテンツの提供や各学校に1名サポートスタッフを配置し、アドバイスができる体制にしています。
先生方は生徒をみとるプロなので、僕らはデータを提供し、生徒の成長に資する客観的な指標として先生方を支援するという形にしています。多いところでは毎月サーベイを取り、生徒の変容を可視化しているところもあります。
そもそも、なぜ「EdvPath」を開発されたのでしょうか。
会社を創業したきっかけともかかわるのですが、学校での評価軸が勉強と部活中心であることにずっと疑問を持っていました。その枠の中にはめられて、評価されるために勉強や部活を行い、ついていけない子は自己肯定感が下がっていくという評価システムへの違和感を自分自身も感じていました。
また、社会人になり、人材サービス系の仕事に勤めていた際、社会人の進路や人生の岐路に立たせてもらう仕事に従事する中で、「自分の人生を生きていない人」が多いなと感じていました。
一方で、生産性が高い人、ウェルビーイングが高い人は「自分の人生を生きている人」であるとも思いました。それは「専門性を高めるため」「家族のため」など理由は何でもいいのですが、メタ認知をして、「こういう風に生きるんだ」と決めている人の方が生産性が高く、ウェルビーイングも高いことに気づきました。
そこで、OECD の「ラーニング・コンパス2030」や海外の論文などで「ウェルビーイング」について読んでいくと、EQ(心の知能指数)や非認知能力などが大事だと改めて思いました。海外ではEQ などを公教育や企業経営で活用しているところもあり、これを教育のデファクト・スタンダードにしていきたいと思ったのがきっかけです。
どのような学校で導入されていて、現場の先生からはどのような反応があるか、教えてください。
現在は、40都道府県の公立私立学校に導入していただいています。探究学習などに力を入れている学校さんは、実施している探究の成果・効果を見るために「EdvPath」を導入いただいております。心理的安全性や自己と他者・社会をつなげるということを目指されている学校さんなどはシラバスから一緒に作らせていただいて、コンテンツも年間を通して提供させていただいております。「EdvPath」の中に探究の授業で利用できるコンテンツが40 個ほどあり、そちらも使えるようになっています。
先生方からは今まで経験値や勘で見てきたものが、客観的な指標が見られることで生徒に適切にフィードバックできるようになったという話や、探究や学校の様々な活動の効果が分かるようになったという声をいただいています。また、生徒との二者/三者面談での齟齬が減り準備にかかる時間も削減できることや、ICT サービスは入れて終わりのことが多いけれど、学年会などへもサポートスタッフが参加してくれるので、気軽に相談できるサポート体制も魅力という前向きな反応をいただくことが多いです。
さらに、学級経営におけるクラスマネジメントで活用いただく中で、進路多様校で、生徒募集が苦しい学校さんなどでは、「EdvPath」を導入したことで退学率0% になったり、「EdvPath」を通して先生同士のコミュニケーションや対話が増えたりという変化も起きていて、心理的安全性や自己肯定感などが学校内のコミュニケーションや退学などにも影響があるのだと気づきました。そのような課題を抱えている学校さんにもぜひ活用いただけたらと考えています。
これからの展望について教えてください。
「自ら意思決定できる人を増やす」というミッションのもと、中学校や高等学校を中心に探究学習や学級経営、クラスマネジメントなどの支援を行っていますが、ここで得た1次データを活用した研究開発をすることで、学校経営で利活用できるデータにしていきたいと考えています。生徒募集、広報、IR、寄付金集めから現場で生徒と必ず向き合う進路選択についてもっと深堀りしていきたいと考えています。
私はウェルビーイングの中に進路が付随すると思っています。今は、受験期の環境因子でしか勉強せず、大学進学の選択時になぜ大学に進学するのか目的を持たずに進学している生徒が多いわけです。自分の興味関心に付随した学問や自分がなりたい進路が見つかった子には、進路に付随した大学選択や進路選択につなげていけるようにしたいと考えています。ウェルビーイングに進路は必ず付随してくるので、そのあたりを行っていきたいです。
「受験のための学び」ではなく、生徒が「自分の人生を生きる」ことができるようにするためには生徒1人1人のEQや非認知能力を伸ばすことができる「EdvPath」のようなサービスを活用することが有効だと感じました。勉強や部活動以外の生徒の長所を伸ばしたい学校や、学級・学校経営に生かしたい学校などにおすすめのサービスです。