今回は2022年8月20日に実施した「コアネット私学教育フォーラム」の内容から、「ICT活用と教育DX」をテーマとした講座「ICT・EdTechを活用した授業実践」より、神奈川大学附属中・高等学校の小林道夫先生にご登壇いただいた部分を中心に抜粋してお届けします。
神奈川県横浜市緑区にある神奈川大学附属中・高等学校では2018年には中学3年生で1人1台 のタブレット授業を順次開始し、2021年に全学年1人1台としています。導入・活用に関して2016年より1人1台までのロードマップを作成するなど入念な計画のもとに導入されているのが分かります。
同校ではICTツールの役割を生徒の主体性育成を育むためのものとしています。具体的内容としては、各教科の授業デザインを見直し、効率的かつ深い学びを展開する、これまで足りなかったものを補い一人一人の学力を向上させる、新大学入試制度に対応するなどを行っています。ICTを活用した指導と学習では、発見学習や問題解決学習、探究学習、論文・プレゼン、プログラミングや教材の配布や宿題など学習管理など幅広く利用をしています。中でも学習管理はクラウド上にデータを置いて生徒が好きな時に取り出し、提出できるようになった点がICT端末1人1台の大きな利点としています。
ICTが導入だけで終わらないよう、活用について同校では、生徒が主体的に取り組むためのICT活用ステップとして段階的な取り組みを行いました。初めにSHR、授業での活用を目的に学校全体で活用するLMSとしてClassiを必ず開く仕組みづくりを実施しました。細かな連絡事項はClassiを利用して連絡をするようにすることで、連絡確認のために生徒は自然とClassiを開きます。これは生徒に情報を取りに行かせるための仕掛けになります。教材もクラウド上にありますので、生徒自身からダウンロードをしていきます。そしてWEBテストや振り返りに利用し、模擬試験や校内テストの振り返りを定着させました。次の段階としてメッセージの活用を行い、課題や学習の取り組みに関する質問・相談を生徒から発信できるようにしていきました。そしてポートフォリオとして振り返りの観点を伝え、生徒自身が自主的に振り返りができるように促し、最終的に生徒発信で校内グループを作成する段階で生徒主体での活用としています。
こうした取り組みを行っていくことで、生徒の取り組み方が変わってきました。テストなどでもPDCAサイクルを意識させるようにしており、Classiにテストの解答をいつでも見れるようにしたうえで振り返りをアンケートで取るという流れを繰り返すことで、生徒自身が考えて次の行動をとれるようになっています。実際に1人1台の学年から模試の結果が伸びていることから学力向上の取り組みはある程度上手くいっているといえます。
ICTの活用は今後も続いていきます。これでいいということはないと思っているため、これからも様々なチャレンジが必要と感じています。ICTの活用によって、教員の指導や生徒へのサポートをモデル化し、全教員で取組める体制の整備進めていくことを考えています。主体的に活用していくには教師も生徒も自己肯定感を高める事が重要です。教師が自信を持ってICTを活用し、理想とする授業の実現に向けて努力する、これが教師も生徒も自己肯定感を高めることにつながっています。