活用レポート

探究学習で「ICT」をフル活用 開智日本橋学園中学校

開智日本橋学園中学校
「未来を生き抜く力」の土台となる「探究力」を育成
国際バカロレアMYP・DP候補校・開智日本橋学園の「次世代型教育」とICT活用

 

開智日本橋学園中学校

3年前に校名変更・共学化し、2015年に、東京23区内の私立中学として初めて国際バカロレア(IB)のMYP候補校として認定された開智日本橋学園。2016年度入試では、日本語でIBを学ぶDLC(デュアルランゲージクラス)を設立し、注目を集めました。
また、同校では、2016年9月にコアネットの「Activa」を共有タブレットとして導入し、教科を問わず活用しています。

副校長 宗像 諭先生

 

今回は、副校長の宗像諭先生にインタビューし、同校で行われている「探究」を中心とした次世代型の教育実践と、その中でのICT活用についてお話を伺いました。

 

インタビュー

コアネット 川畑浩之(以下、川畑):開智日本橋学園の前進となる日本橋女学館の時代にも、学園祭の魅力化や、商品開発などのプロジェクト型活動を行ってきた下地がありましたね。

宗像先生(以下、宗像):そうですね。もともと学校全体に「探究授業」の要素はありましたから、3年前に開智日本橋学園に改革しても、埼玉の「開智学園」(本校は開智中学のグループ校)創立当初からのテーマである「探究」と親和性も高く、更に活動を深化させることができました。
実社会との繋がりを意識しながら、自ら問題を発見し、解決のための道筋を立て、他者に伝えていく。開智学園の「探究」は、これからの時代に必要な力を養うために、良い教育だと確信しています。さらに本校がIB校を目指したのも、IBの理念であるところの「実社会の問題を主体的に解決していく人材育成」「社会貢献ができるリーダーシップの育成」という点で方向性が同じであると強く感じたからにほかなりません。
最近、IBに対する世間の関心も高まってきましたが、我々は25年前から「探究」を先取りしつつ、時代に応じて教育手法やツールの面で更なる向上をはかってきたのです。

川畑:最近でこそ、大学入試改革や学習指導要領の改訂等に関する議論の中で、アクティブラーニングという言葉が流行しましたが、一方で、形式を真似ただけの「見せ掛けのアクティブラーニング」も増えてしまっています。

宗像:そうかもしれませんね。学校によってアクティブラーニングの解釈も取り入れ方も違うと思いますが、本校では「探究」という目的を貫徹するべく、生徒を主体的な学びへと導くための一つの手法として授業で実践しています。

-川畑:先生が「Teacher」から「Facilitator」へと役割を変えていく、ということがよく言われるようになりましたが、まさにその通りですね。一方、実践するのは難しいという声も多く聞きます。生徒が本当に主体的に思考しはじめるような「質の高い問いかけ」を行うために、学校として、先生方として、どのような取り組みをされているのでしょうか。

宗像:本校では、全教員向けに、各単元における授業の進め方や、鍵となる「トリガークエスチョン」の作り方についてのワークショップを行っています。下表のようなマトリクスを組んで、単元のテーマごとに、「単純な知識」から始まり、徐々に「複雑な知識」「知識の活用」に進んでいけるよう、授業を計画します。

一般的な学校の授業では、大学受験を意識して、「単純な知識」や「複雑な知識」までの問いが多いですが、IBで目標とされ、真に社会で必要となってくるのは「知識から創造する」レベルの課題に対応できることです。
「自分ならどのように行動するか」「どのような新しい価値を生み出すか」という「創造」レベルの問いかけができるようにトリガークエスチョンを工夫していきます。目標とするゴールを提示した上で、それを考えるために必要な知識を主体的に獲得し(時には与えて)、課題のレベルをだんだんと高めながら、生徒が最終的に自らの言葉で語れるような(記述できるような)レベルまで引き上げるようにしています。

【例:天保の大飢饉】 ※ヒントを参考に編集部で補足しました

 

単純な経験則や受け売りではなく、このようなマトリクスをどの教科・単元でも組んでいくことで、良き問いを投げかける力が育まれていきます。本校は、まだまだ若手の先生が多いですから、先生方も情熱をもって自ら学び、協力しつつ、主体的によりよい教育のあり方を模索し続けています。

-川畑:昨年8月に弊社のタブレットActivaをご導入いただいたわけですが、現在、どのように活用していらっしゃいますか。

宗像:共有タブレットとして、各教科で積極的に活用しています。iPadやAndroidなどのタブレット型のデバイスは、素早く情報を収集し、共有・発信するためのツールとしては大変有効ですが、本校の重視する「言語能力の育成」のためには、キーボード入力が不可欠でした。この両方の良さを兼ね備え、かつ価格面も含めて総合的に検討し、Activaの導入を決定しました。
教育現場でのICT導入に際しては、まず学校として、あるいは教員個人として、「どのような教育を行い、何を達成したいか」というゴールを定めることが大変重要だと思います。我々の場合は、「探究」が学びの中心にあるので、それに合ったものを選び、活用しているということです。

-川畑:従前の「探究」活動にICTが加わったことによって、どのような利点がありましたか。

宗像:ICT活用の効果として、2点あったと考えています。1点目は、教員の負担が減ったことです。授業のためのワークシートや資料をタブレット上で配信することで、印刷や配布の手間が減ります。また、紙ならば生徒がうっかり忘れてしまうことがありますが、タブレットで管理していればそのような問題もありません。
これらにより、授業時間の2割程度の無駄を省けたと感じています。浮いた2割の時間を生徒との対話や、生徒に考えさせる時間に充てることで、探究活動の質を高めています。
2点目は、動画等の活用や、様々なデータなどを活用することで、生徒が生の情報に触れやすくなったことです。教科書の文章だけでは抽象的でイメージがしづらいことを具体的に学習し、より深く内容を理解することができます。

-川畑:ありがとうございます。 教科で調べ学習などを行いながら学習する場合には、情報の真贋を見分ける力も必要になってくると思いますが、どのように指導されているのですか。

宗像:生徒には、大学受験のための「学習」で終わるのではなく、「学問」ができる人間になってほしいと考えています。そのため、中学の初期段階から、資料検索の方法、レポートの書き方、その他、「学問的誠実性」と呼んでいますが、自分のオリジナルの記述以外はしっかりと出典を付すなど、アカデミックスキルの基本を身につけてもらいます。
また、教員側も、漠然と「調べてみよう」と言うのではなく、「○○を明らかにしたいので、××の情報を調べてみよう」といった具体的な形で授業運びをします。何を調べればよいか分かった状態で調べ始めることが重要だと思います。

-川畑:私も、別の学校でICTを使って調べ学習をしている授業を見学しましたが、闇雲に調べたことを写すだけのプレゼンになっていた部分もあると思います。ICTの活用をしっかりと学ぶ力につなげる意味でも、そもそもの授業構成力や、生徒・教員の情報リテラシーを高めていくことが必要ですね。

 

授業見学

今回は、中学3年生のグローバルランゲージクラス(GLC)における授業を見学しました。この授業では、指導要領上では「英会話」の授業ですが、英語で「公民」の内容を行うという、バカロレアならではの「イマージョン」教育が行われています。生徒たちは、基本英語で、経済的な現象について積極的に語り合っていました。担当の近藤先生は日本人ですが、日本語でも英語でも自在に授業を行えます。

IBクラス担当:近藤先生


テーマは「インフレーション・デフレーション」で、英語のテキストを読んだ上で、それらが何故起こるか、どのような効果をもたらすかなどについて、思考のマッピングを行いながら説明をします。そして、よりよい説明にするにはどうすればよいか、全体で意見を出し合います。
分からない用語や概念については、その場でインターネットから調べます。ネットという道具を使いつつ、「考え、表現すること」をしっかりと実践している、新しい時代の教育の一つのモデルとなる授業が展開されていました。

 

 

授業の様子

いかがでしたか。弊社では、今後も開智日本橋学園を継続的に取材しつつ、IBの実践や、その中での英語教育、教育ICT活用などについて、更に知見を深めていきたいと考えています。どうぞご期待下さい。

 

 

(2017年4月21日取材 聞き手:コアネット教育総合研究所・川畑・荻原)

 

★Tips

  • 国際バカロレア:スイス・ジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供する、「国際的な視野を持った人材を育成する」教育プログラム。
    3歳~12歳を対象とするプライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)、11歳~16歳を対象とするミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)、16歳~19歳を対象とし、修了すると国際的な大学入学資格が得られるディプロマ・プログラムがあり、開智日本橋学園はMYPの候補校。
    日本政府は、「日本再興戦略」(2013年)に基づき、国内における国際バカロレア認定校等を2018年までに200校に大幅に増加させることを目標とし、支援策を講じている。
  • イマージョン:「浸る」を意味するimmersionから来る用語で、言語を独立した教科として学習するのではなく、「その言語が使われる環境に浸りながら」学ぶ手法。英語で数学・理科・社会など別の教科を学ぶなどの活動を取り入れる学校も増えている。

 

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