授業の一環として実施されたプログラミング講座を見学し、副校長の山下先生よりお話を伺いました。
見学したクラスは、西武台高等学校が2023年4月に新設した「STEAMコース」です。初年度の今年は18名1クラスで学習に取り組んでいます。
学校法人武陽学園 西武台高等学校 (seibudai.ed.jp)
授業の様子
プログラミング講座は首都圏や関西でプログラミングスクールを運営している企業から講師を招き、4時間連続の授業として行われました。
授業はSTEAMコースの教室である「STELAルーム」で行われました。STELAルームには教室の前後に壁面と同サイズのホワイトボードが設置されており、プロジェクターを使ってパソコンの画面を表示することができます。生徒はパソコンを1人1台使用し、フリーアドレスの座席で受講していました。
1・2時間目に講師から自己紹介やプログラマーという職業の紹介、プログラミングの基礎的な考え方やプログラミングで実現できることなどを座学で学び、3・4時間目にプログラミング実習を行いました。
今回は3・4時間目のプログラミング実習を中心に見学させていただきました。
3時間目はScratchを用いた「迷路作り」が行われました。Scratchが視覚的に操作できるツールなこともあり、生徒が戸惑うことなく、黙々と課題に取り組む姿が見られました。
また、途中各々躓く箇所が出てきた際は周囲のクラスメイトからアドバイスをもらったり講師に質問するなど試行錯誤しながら進めている様子が印象的でした。
最後には成果物を実際に動かしたり、友達と見せ合って楽しむ姿が見られました。
4時間目はPythonの実習が行われました。Pythonはテキスト言語のプログラミング言語であり、3時間目のScratchよりやや難易度が上がります。ツールに初めて触れる生徒も多く、専門的な用語も出てきて少し戸惑う場面も見られましたが、実際に自分でコードを入力し、入力したコードで自動的に計算が行われる様子をみて、驚きとともにプログラミングの面白さを感じる様子が見られました。
プログラミング実習中は個人で課題に取り組むことが多かったのですが、わからない箇所やうまく動作ができない箇所については、周囲の人に自分から教わって解決するなど、まずはやってみようとする主体性や仲間との協力などの素地が養われていることが感じられました。
授業の振り返りの場面で、教員から「この授業をきっかけに、もっとやってみたくなったり、知りたくなったら本を買ったりして、自分で学習を進めてみよう」という声かけもありました。この授業で学びを完結させるのではなく、関心を持ったら自分でどんどん学び進めてほしいという願いをもって先生方も関わられていることがよく伝わってきました。
教室内には生徒が自由に使用できる、
3Dプリンターやレーザーカッターが用意されていました。
インタビュー
西武台高等学校副校長山下先生から、STEAMコースについてのお話を伺いました。
―2023年に新設されたSTEAMコースはどのような背景で開設され、どのような教育を行われているのでしょうか?
STEAMコースを作った背景には、急速な社会変化に対応できる子を育てたいという思いがありました。
日本の人口が大幅に減少すると考えられている現状において、この時代を生きていく子ども達に必要なのは自分で考え、必要なものを生み出し、解決していく力だと考えました。今までの学校教育では教員が丁寧に生徒に教え込んで、知識を身につけさせることが大事という考え方がありましたが、その考えを変えていかなければいけない時期だと考えています。
―STEAM教育は一般的に理系教育を行う印象が強いと思いますが、西武台高等学校のSTEAMコースはいかがでしょうか?
必ずしも理系に限定はしていません。社会課題を思考する際にはSTEAM教育に含まれるARTの部分、すなわち「社会課題を案じる感性」が大切だと思っています。その意味で、学びを文系・理系に限定することはできないと考えています。
―新しいコースを開設することは学校にとって挑戦だと思います。新しいコースには受験生も関心を持つ一方、少し不安を覚える方もいると思いますが、反応はいかがでしたか?
初年度の説明会を振り返ると、より保護者・受験生への理解を深めなければならないと思う一方、「こんな学校を探していました!」「西武台高等学校は部活が盛んな学校だと思っていましたが、教育内容を聞いてより期待が高まりました!」という声も聞かれて、STEAM教育や問題解決型学習に関心を持たれている方、期待されている方が増えているんだという実感もありました。
―STEAMコースの特徴はどのようなところでしょうか?
1つ目に自分で考えて行動し、解決できる子、独創的な子を育てるコースであることです。そのために様々な活動を生徒自身で行えるような環境を整えています。オープンスクールの際には、来校する中学生のために行うSTEAMコースの説明会を生徒達自身で企画し、実施することができていました。
2つ目に様々な体験・実践型の学習を行っていることです。
プログラミング教育に関しては、例えばロボティクスに関する学習として「千葉工業大学」に校外学習に行き、人工知能を用いたロボットを見学させてもらいました。プログラミングの学習を活かして、最終的にはロボットをプログラミングで動かせるような機会をつくることも考えています。
校外学習の機会を多く作り、4月には「三菱みなとみらい技術館」と「日本科学未来館」、5月は企業連携を行っている「明石スクールユニフォームカンパニー」を訪問し、制服を再生してもう一度繊維にする技術を見学させていただきました。「東京地方裁判所」にも行き実際の裁判も見学させていただきました。
体験旅行も1年生で関西方面でのモノづくり体験、2年生6月での沖縄での海洋体験、2年生11月頃での「自分たちで作る世界に一つだけの修学旅行」を実施する予定です。
3つ目に定期考査がないことです。定期考査の代わりに単元ごとにテストを行い、定着を図っています。定期テストのための受動的な学びは、一時的な記憶に留まってしまうのではないかと考えていました。STEAMコースでは、単元テストで目標の点数が取れなかった箇所を復習し、もう一度チャレンジする機会を作っています。
~ふりかえり~
山下先生の「好きなことをしているときが、人が一番集中できる時間。そんな環境を生み出したい。」と話されている姿が印象的でした。3Dプリンタやレーザーカッターを使ったモノづくりの体験や英会話学習などにも力を入れている西武台高等学校STEAMコース、このような先進的クラスが今後増えていったとき、今の学校教育や社会がどう変わっていくのか、楽しみです。