神田女学園中学校高等学校
英語の4技能をバランスよく育てる必要性が叫ばれる中、限られた授業時間の中だけでなく、昼休みや放課後を利用して「生徒自らが」「自分の学びたいことを自分に合ったスタイルで」英語を学べる環境を開設したのが、神田女学園中学校高等学校(以下、神田女学園)です。
2017年3月に神田外語大学との「高大提携協定」を締結した同校は、大学側が導入していた施設を参考に「K-SALC」(Kanda Self Access Learning Center)と名づけた自立型学習施設を作りました。そこには神田女学園の考える「これからの学び」が見え隠れします。高橋順子校長にお話を伺いました。
-「K-SALC」の設備について、教えてください
これまで生徒ラウンジとして開放していたスペースをリニューアルしました。室内には個別学習用、グループ学習用のスペースがある他、ネイティブの先生と1対1で会話の練習をするためのブースも用意しています。また、リラックスしてお話しするためのソファや、英語の書籍や雑誌、視聴覚教材を見るためのプロジェクターとスクリーンも置いてあり、様々な方法での英語学習に対応しています。室内には常にネイティブスピーカー(※)の教員がいますので、学習のアドバイスを求めたり、一緒に会話やゲームを楽しんだりすることで、自然と英語に慣れ親しむことが出来る環境になっています。
※8名(英語、中国語、フランス語)のネイティブスピーカーが在籍
―確かに、ネイティブの先生の指導を受けながらプリントに取り組む生徒、一緒にボードゲームをしている生徒、ディズニー映画を字幕・音声共に英語にして見ている生徒など、様々な姿が見られました
室内は原則、英語のみというルールがあります。ただ、それさえ守れば後の過ごし方は自由です。英語のスキルアップに向けて自分に足りないものを見つけ、そこを伸ばすための環境として自発的に利用してくれることを願っています。ですので、この部屋を授業で使うことも考えてはいますが、生徒に無理やり利用させるようなことはありません。
―まさに、「Self Access Learning」という姿勢が求められるわけですね。貴校では以前から、こうした教育に積極的に取り組んでこられたのでしょうか
そうですね。知識の取得も変わらず大切にしていきたいところですが、これからの時代は「自ら主体性を持って学ぶ人」を育てていくべきだと考えています。ここ何年かは各教科でも演習中心の授業が増えていましたし、一部のコースではプロジェクト型の学習にも取り組んできました。やはりこうした授業では生徒の参加意識が高く、自らPDCAサイクルを回しながら研究する姿が多く見られました。
―そうした流れの中で、「K-SALC」を作られたのですね
「押し付けられる学び」ではなく「自発的な学び」が出来る環境を作りたかった、というのがポイントですね。本校ではかねてより英語教育には特に力を入れてきましたが、神田外語大学との提携をよい機会として、本校のこれまでの実践と、大学が培ってきた教育手法とを融合させていこうとしています。大学には既に「SALC」がありましたので、本校の「K-SALC」はその設備を参考にして作られています。
―設備を整えるにあたり、どのような工夫をされましたか
やはり、生徒にとって「そこにいて楽しい」ということを重視しました。その意味でデザインはとても大切で、「K-SALC」はイギリスの町並みをイメージしたおしゃれな設計にしました。デザインには半年ほど時間をかけています。そして大学側の「SALC」と同じように、英検対策がしたい、ライティングの練習をしたい、スピーキングをもっと鍛えたい、など、生徒の意志さえあればできる限り応えられるような環境にしました。
―オープン初日の取材となりましたが、たくさんの生徒がいらしていましたね
正直驚きましたが、それだけ期待感を持って、オープンを楽しみにしてくれていたのだと思います。留学経験者が何人か来ていましたが、この部屋を訪れること自体が小さな留学体験のようになることを願っています。
―これからの計画で、考えておられることはありますか
この「K-SALC」は語学学習に特化した環境にはなっていますが、「SALC」を言葉通りに捉えれば必ずしも語学に限った概念ではないと思います。ですので、ゆくゆくは語学以外のことも学べる「第2SALC」も作っていけたらなと考えています。
―ありがとうございました
オープン初日から大勢の生徒が学習している姿から、正に神田女学園の目指す「自ら学ぶ生徒を育てる」という教育像が実現していることを感じました。一般的に、何らかの教育目標を実現しようとした場合に「手法」や「コンテンツ」ばかりが注目されますが、同校は「施設」面からのアプローチをしている点、さらに「授業用の空間」ではなく「授業時間外」に使う施設を作った点に先進性があります。充実した授業と、施設のコラボレーションが、個々の生徒や学校全体にどのような効果をもたらすのか、引き続き注目してまいります。
(2017年10月取材:コアネット教育総合研究所 郷)