パフォーマンス課題(パフォーマンス評価)

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パフォーマンス課題
(パフォーマンス評価)

コアネット教育総合研究所
所長 松原 和之

パフォーマンス課題とは、
授業等において、様々なコンピテンシー(資質・能力)を
発揮して取り組むような総合的な課題のことです。

 

パフォーマンス課題とは

 言い換えれば、パフォーマンス課題とは、覚えたことを単に再生するだけではなく、学んだ知識やスキルを総合して活用することを求めるような複雑な課題のことです。

 そして、その取り組みの中で発揮されたコンピテンシーを見取ることをパフォーマンス評価といいます。パフォーマンス評価は、「知識(コンテンツ)をいかに身につけているか」を測るのではなく、「資質・能力(コンピテンシー)をいかに発揮したか」を測る評価方法です。コンテンツ・ベースの授業からコンピテンシー・ベースの授業への転換が求めらる中でとても重要な評価方法として注目されています。

 パフォーマンス課題では、ある問いに対して、児童・生徒が一人で思考するだけでなく、作品の制作、グループでの話し合い、論文やレポートの作成、プレゼンテーションなどに取り組みます。そして、そのような取り組みのプロセス(活動)や成果物(作品)を評価基準に照らして測定するのがパフォーマンス評価です。パフォーマンス評価における評価基準としてよく使われるのがルーブリックです。ルーブリックとは、何を身につけるかという項目(評価規準)と、どの程度身につけるかという段階(評価基準)をマトリクスにした表のことです。

※ルーブリックの詳しい説明はG-Eduホームページ内「ルーブリック」をご覧ください

パフォーマンス課題の具体例

 少し具体的に説明しましょう。例えば、中学校社会科の「世界各地の人々の生活と環境」の単元において、「異文化を尊重し理解する力」と「自分の意見を発表する力」を身につけてほしいと考えたとします。そこで、2つの資質・能力に対して5段階のルーブリックを用意しました。各段階で求める力を示しながら生徒に目標を明示します。その上で、パフォーマンス課題を提示し取り組ませます。課題は、生徒をグループに分け、地域名を隠して複数地域の雨温図や生活や文化に関する資料・グラフなどを提示し、それらを比較して、どの地域のものなのかを話し合いで考えさせ、最終的に考えをまとめてグループでプレゼンテーションさせるというのものです。

 この単元の授業の中で学んだ既習知識を活用し、課題に取り組むのですが、その取り組みの過程で「異文化を尊重し理解する力」や「自分の意見を発表する力」を発揮している場面を見取り、ルーブリックに照らして評価を行います。評価は振り返りシートを使った自己評価、グループ内での相互評価を行った上で、教員からグループごとに評価をフィードバックします。

コンテンツ・ベースからコンピテンシー・ベースへの転換

 このようにペーパーテストを行って領域固有の知識が定着したかどうかを評価するのとは別に、パフォーマンス課題に取り組ませることで、「異文化を尊重し理解する力」や「自分の意見を発表する力」といった汎用的なコンピテンシーを身につけることができます。

 これからの社会で活躍する人を育てるためには、「何を学んだか」だけではなく「何ができるようになったか」が大事です。このコンテンツ・ベースからコンピテンシー・ベースへの転換のためにも、パフォーマンス課題とパフォーマンス評価をうまく活用してほしいと思います。

(2023年5月)