
コアネット教育総合研究所
所長 松原 和之
「統合的な理解」「総合的な発揮」とは、現在検討中の次期学習指導要領のポイントの一つであり、資質・能力をより質的に高める考え方です。統合的な理解は、知識・技能を関連付けて構造的に理解すること、総合的な発揮は、それらを用いて課題を多面的に考え判断し表現することを指します。すなわち、「つながって分かること」と「使ってできること」を一体的に育てることが求められています。
学習指導要領においては、子どもたちに育てる資質・能力を「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」および「学びに向かう力、人間性等」という「資質・能力の三つの柱」として整理しています。「統合的な理解」と「総合的な発揮」は、このうちの「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力等」の二つの質を高めるための考え方として位置付けられています。すなわち、統合的な理解は主として知識・技能の側面に関わり、総合的な発揮は思考力・判断力・表現力等の側面に関わるものと考えると分かりやすくなります。
したがって、これらは新しい能力を別に付け加えるというよりも、既に重視されてきた学力の在り方を「より質の高い形で捉え直したもの」と理解するのが適切です。言い換えれば、知識をどう理解させるか、そしてそれをどう使わせるかという、授業の基本に関わる概念です。
なお、これまでの検討の中では、この二つを併せて「中核的な概念等」や「高次の資質・能力」という言葉で説明してきましたが、混乱を招かないよう新学習指導要領ではこれらの言葉を使用しない方向で考えられています。
統合的な理解とは、個別に学んだ知識や技能をばらばらのままにせず、それらを関連付けて構造的に理解している状態を指します。従来の学習では、知識が断片的に蓄積され、「覚えてはいるが使えない」という状況が生じやすいという課題がありました。これに対して統合的な理解は、知識同士のつながりを意識し、それらを意味のあるまとまりとして捉えることを重視します。
例えば、ある出来事について単に事実を覚えるのではなく、「なぜ起こったのか」「他の出来事とどう関係しているのか」といった視点から理解することがこれに当たります。このとき重要なのは、抽象的にまとめることだけで終わらず、その理解を具体的な事例に戻して説明できることです。構造として理解した内容をもとに、「だからこの場合はこうなる」と説明できる状態になって初めて、統合的な理解が成立していると言えます。
授業においては、新しい内容を扱う際に既習事項との関連を問いかけたり、共通点や相違点を考えさせたりすることによって、このような理解を自然に促すことができます。特別な活動を追加するというよりも、発問の仕方やまとめ方を少し工夫することが鍵になります。
総合的な発揮とは、統合的に理解された知識や技能をもとに、課題に応じて思考し、判断し、それを適切に表現する力を一体的に働かせることを指します。ここで言う「総合的」とは、単に難しい問題に取り組むという意味ではなく、複数の知識や視点を組み合わせて用いることが求められる状況を意味しています。
例えば、一つの知識だけで答えが出る問いではなく、いくつかの観点から検討しなければ答えられない問いを設定することで、総合的な発揮が引き出されます。「多面的・多角的に考える」という表現がよく使われますが、これを形式的に捉える必要はありません。一つの見方では不十分な課題であれば、自然と複数の視点を用いることになります。
また、総合的な発揮では、最終的に自分の考えを説明したり、判断を示したりすることが求められます。単なる再生や暗記ではなく、学んだことを使って意味のある形で表現することが重要になります。
統合的な理解と総合的な発揮は、別々に存在するものではなく、相互に関連し合うものです。知識や技能が統合的に理解されているからこそ、それらを課題に応じて活用することができ、また実際に活用する経験を通して理解がさらに深まります。このように両者は、「分かること」と「使うこと」の循環関係にあると考えることができます。
したがって、指導においてはどちらか一方だけを重視するのではなく、理解と活用を行き来するような学習の流れを意識することが大切です。理解だけで終わる授業では活用する力が育ちにくく、逆に十分な理解がないまま活用を求めても形だけの活動になりがちです。このバランスをどう取るかが、授業づくりの重要な視点となります。
実際の授業では、統合的な理解と総合的な発揮を無理に同時に実現しようとする必要はありません。むしろ、役割を分けて考える方が現実的です。日々の授業では、知識をつなげて理解させること、すなわち統合的な理解を意識して積み重ねていきます。その上で、単元のまとまりの中で、学んだ内容を使って考えさせる場面、すなわち総合的な発揮の機会を設定します。
その際のポイントは、学習した内容を使わなければ解けない課題を用意することです。単に説明を求めるのではなく、判断や比較、理由付けを伴う問いにすることで、自然と複数の知識や視点を用いることになります。また、すべての時間で総合的な発揮を求める必要はなく、単元の最後に一度しっかりと取り組ませるだけでも十分な効果が期待できます。
まとめると、「統合的な理解」は知識をつなげて分かること、「総合的な発揮」はそれを使って考え、表現できることと捉えることができます。難しく考えすぎず、日々の授業で知識のつながりを意識し、単元の終わりにそれを使わせる場面を設けることが、最も実践的な取り組みと言えるでしょう。
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