
コアネット教育総合研究所
所長 松原 和之
ネクストハイスクール構想(N-E.X.T. ハイスクール構想)とは、2040年を見据えた高校教育改革の先行的取組です。都道府県に基金を設け、産業や地域を支える人材、理数系人材の育成や、多様な学習ニーズに対応した教育機会の確保を進めます。生徒を主語にした学びへの転換を図り、その成果を地域全体の高校へと広げていくことを目指しています。
ネクストハイスクール構想とは、2025年11月に閣議決定された「『強い経済』を実現する総合経済対策」に基づく取組の一つとして位置付けられている高等学校教育改革の施策です。
本構想は、「高校教育改革に関する基本方針(グランドデザイン)2040」を踏まえ、その方向性に沿った取組を支援することを目的としています。
N-E.X.T. は New Education(新しい教育)・New Excellence(新たな卓越性)・New Transformation of High Schools(高校の変革) を意味しており、急速に変化する社会や産業構造の中で、高等学校教育の役割を再定義し、次世代を担う人材育成の基盤を強化することを目指しています。
日本社会では、少子高齢化や人口減少が急速に進行しており、2040年頃には高校生の数が現在より大きく減少すると見込まれています。すでに多くの地域では、公立高校の統廃合や通学圏の拡大が進み、地域における教育機会の確保が大きな課題となっています。
同時に、産業構造や社会システムの変化により、地域経済を支えるエッセンシャルワーカーや、科学技術・デジタル分野を中心とした理系人材、産業イノベーションを担う人材の不足が懸念されています。
こうした状況を踏まえ、ネクストハイスクール構想では、高等学校段階から社会や産業の変化に対応できる力を育成するとともに、地域の将来を支える人材を計画的に育てていくことを重要な目的としています。
ネクストハイスクール構想では、各都道府県に「高等学校教育改革促進基金」を設置し、都道府県が主体となって事業を実施します。
基金を活用し、地域の経済社会を支える理系人材や産業イノベーション人材の育成に向けたパイロットケース(先導的な取組)を創出し、その成果を域内の高等学校へと普及させていく仕組みとなっています。
特定の学校だけで完結する取組ではなく、改革先導校で得られた実践やノウハウを、地域全体の高校教育の質向上につなげていく点が、本構想の大きな特徴です。

ネクストハイスクール構想では、地域や学校の特性に応じて、次の3つの類型が設定されています。
取組内容の例としては、学ぶ意欲のある高校生が、家庭の経済状況に左右されることなく、学習習慣の定着、学習時間の増加、学びへ向かう姿勢の確立ができるよう、放課後を活用し、学校と地域の連携による学力向上・学習支援のための取組、探究活動の深化による多様な進路に向けた支援を行うようなことを想定しています。具体的には、「学科・コースの再編、学校設定科目の新設」「域内の教育環境向上に貢献する取組(遠隔授業、教員研修拠点等)」「高等教育機関・地域・産業界との連携、外部人材の登用」「グローバル人材育成に向けた留学の派遣・受入に係る環境整備」などが挙げられます。
改革先導校の創出に向けた事業費は、都道府県事務費、人件費、旅費、謝金、設備・施設整備費などを含め、原則として10分の10が国から支援されます。
ただし、事業費の用途はあくまで教育の質向上を目的としたものに限られており、1人1台情報端末整備など、既存施策と重複する整備への活用は想定されていません。
ネクストハイスクール構想は、単なる新規事業ではなく、高校教育改革のグランドデザインを踏まえ、現場から改革を積み上げていく取組です。各学校・教育関係者が地域の実情に応じて主体的に関わることで、次世代の高校教育の姿が形づくられていくことが期待されています。
ネクストハイスクール構想は、政府主導ではなく、都道府県に基金を設置し、各校の取組をパイロットケースとするボトムアップの改革を目指していますが、今後目指す方向性がブレないことを願っています。
ネクストハイスクール構想が目指しているのは、教育内容の追加や制度変更にとどまる改革ではないと思います。より根本的には、高校教育における学習観・教育観そのものの転換を目指しているはずです。
具体的には、生徒が受け身で知識を習得する学びから、自ら問いを立て、他者と協働しながら価値を生み出していく学びへと転換していくことが求められています。生徒一人ひとりの「好き」や「関心」を起点とし、「得意」を伸ばす多様な経験を通して、主体性や創造性を育む教育が進められることを望みます。
生徒が自分自身の学びを自覚し、主体的に選択し、将来の進路や生き方につなげていく、いわば「生徒を主語にした教育」への転換が、ネクストハイスクール構想の中核的な理念であることをきちんと確認しておきたいと思います。
このような学びを実現するために、探究的・実践的な学習の充実や、文理を横断した学び、地域や産業界と連携した学習活動が実現されることを期待しています。
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