学習経験の意味形成

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学習経験の意味形成

コアネット教育総合研究所
横浜研究室 室長 福本 雅俊

要約

「学習経験の意味形成」とは、学習者が経験した活動や出来事を、既有の知識や過去の経験と結び付けて整理・解釈し、自分にとっての意味ある理解として成立させていく認知的プロセスです。振り返りや対話、言語化を通して行われ、学びを次の行動や探究につなげ、学習の質を高める中核となります。

なぜ今、「意味形成」が学習の鍵になるのか?

授業や活動を通して多くの経験をしていても、「学んだはずなのに、次の学びや行動につながっていない」と感じる場面は少なくありません。この違いを生み出している要因の一つが、学習経験の意味形成です。

主体的・対話的で深い学びや探究学習が重視される現在、学習者が経験をどのように意味づけ、どのような理解として形成しているのかは、学習の質そのものを左右する重要な視点となっています。

学習経験の意味形成とは何か?

本稿で用いる「学習経験の意味形成」という言葉は、既存の意味づけ、経験学習、メタ認知に関する理論を踏まえつつ、学習者が経験をどのように整理・解釈し、理解として成立させていくのかを捉えるために整理した概念です。

具体的には、学習者が経験した出来事や学習内容を、既有の知識や概念、過去の経験と照らし合わせながら整理・解釈し、自分にとっての意味として理解を形成していく一連の認知的プロセスを指します。

心理学者ブルーナーは、人は出来事をそのまま記憶するのではなく、「意味のある物語として構成する存在である」と述べています[1]。学習においても、経験が意味形成を経てはじめて、その人固有の学びとして定着すると考えられます。

「分かった」と「意味形成された学び」の違い

学習場面では、「分かった」「できた」という感覚が重視されがちです。しかし、理解したという感覚があっても、意味形成が十分に行われていない場合、学びは表層的なものにとどまります。

意味形成が伴わない学習では、活動内容は説明できても学びの意義を語ることが難しく、振り返りが感想や出来事の列挙で終わってしまうことが少なくありません。

意味形成が生じるプロセス

意味形成は、活動の最中に自動的に生じるものではありません。活動後の振り返りや対話、記述の中で、経験が整理・解釈されることを通して徐々に形成されていきます。

Kolbは、学習を「経験―省察―概念化―実践」という循環的プロセスとして説明しています[2]

図が示している意味形成の構造

以下の図は、学習経験が振り返りを通して意味形成されていく構造を示したものです。学習者は、得た経験をそのまま保持するのではなく、既有の知識や概念に基づいて整理し、解釈します。

この整理・解釈の段階では、自分の理解や判断を点検するメタ認知的モニタリングが生じます。ただし、このモニタリングは自然に起こるものではなく、経験をどのような視点で観察し、何を基準に評価するのかといった視点が与えられてはじめて可能になります。

整理・解釈された内容は、言語化や記述といった形で表出されることで再度確認・強化され、次の学習や行動へとつながっていきます。

学習経験の意味形成モデル
【図 学習経験の意味形成モデル】

教師は意味形成にどのように関わることができるのか

意味形成は学習者自身の内的な営みであり、教師が直接与えることはできません。しかし、意味形成が生じやすい条件を整えることは、教師にしかできない重要な役割です。

具体的には、振り返りの場面で、「どこを見るのか」「何と比べるのか」「何を基準に考えるのか」といった観察・評価の視点を明示することが挙げられます。これらの視点が与えられることで、学習者は自らの理解を対象化し、メタ認知的にモニタリングしながら経験を整理・解釈することが可能になります。

また、意味形成された内容が十分に表出されるよう、記述や対話の時間を確保することも重要です。教師の関わりは、答えを示すことではなく、意味形成を支える足場を用意することにあります。

学習経験の意味形成が示すもの

学習経験の意味形成は、活動を「やったこと」で終わらせるか、次につながる「学び」に変えるかを分ける中核的なプロセスです。

学習者がどのように経験を整理し、解釈し、意味形成しているのかに目を向けることは、学習の質そのものを問い直すことにつながります。

【関連キーワード】

[参考文献]

  • [1]Bruner, J. (1996). The Culture of Education. Harvard University Press.
  • [2]Kolb, D. A. (1984). Experiential Learning. Prentice Hall.
(2026年1月)

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