こども家庭庁

3分でわかる! 今話題の教育キーワード特集

こども家庭庁

コアネット教育総合研究所
放課後ラボ事業部 主任 佐々木梨絵

 2023年4月に発足した『こども家庭庁』は「こどもまんなか」をスローガンに掲げ、こどもの最善の利益を考え、こどもを巡る様々な問題を解決するために誕生した新しい組織です。『こども家庭庁』が発足された背景には、日本における深刻な少子化、いじめや不登校、ネグレクト(育児放棄)・児童虐待、ヤングケアラーといった社会問題があり、これらの問題を解決すべく、同庁が誕生しました。また、こども関連の政策が、これまで一元管理されてきていなかったことも発足理由の一つとして挙げられます。

 『こども家庭庁』では、「(1)こどもの視点に立った司令塔機能の発揮、こども基本法の着実な施行」、「(2)こどもが健やかで安全・安心に成長できる環境の提供」、「(3)結婚・妊娠・出産・子育てに夢や希望を感じられる社会の実現、少子化の克服」、「(4)成育環境にかかわらず誰一人取り残すことなく健やかな成長と保障」といった、大きく4つの分野における取り組みが進められています。同庁の政策では、社会問題に関する政策やこども・子育て支援制度について話題になることが多いですが、政策の中で第一に掲げられていることは、こどもまんなか社会を実現するため、こども基本法に基づき「こども大綱」を策定し、各施策を推進していくことです。

こども基本法

 こども基本法は、すべてのこどもや若者が将来にわたって、幸せな生活ができる社会の実現を目指すため、社会全体でこども施策を進めることを目的に作られました。こども施策とは、大人になるまで切れ目なく行われるこどもの健やかな成長のためのサポート、子育てに伴う喜びを実感できる社会の実現のためのサポート、そして、これらと一体的に行われる施策のことを指します。また、こども基本法では、こども施策を行う上での6つの基本理念も制定されています。

【6つの基本理念】

  • すべてのこどもは大切にされ、基本的な人権が守られ、差別されないこと
  • すべてのこどもは、大事に育てられ、生活が守られ、愛され、保護される権利が守られ、平等に教育を受けられること
  • 年齢や発達の程度により、自分に直接関係することに意見を言え、社会のさまざまな活動に参加できること
  • すべてのこどもは年齢や発達の程度に応じて、意見が尊重され、こどもの今とこれからにとって最もよいことが優先して考えられること
  • 子育ては家庭を基本としながら、そのサポートが十分に行われ、家庭で育つことが難しいこどもも、家庭と同様の環境が確保されること
  • 家庭や子育てに夢を持ち、喜びを感じられる社会をつくること

こども若者★いけんぷらす

 『こども家庭庁』では、こどもの視点に立った施策を行っていくために、上記の基本理念にもある通り、こども・若者自身が社会に意見を言える機会を設けています。その取り組みの一つが、「こども若者★いけんぷらす」です。

 「こども若者★いけんぷらす」は、こどもや若者が様々な方法で自分の意見を表明し、社会に参加することができます。小学1年生から20代のこども・若者を「ぷらすメンバー」として募集しており、こども・若者に関連する様々なテーマについて、対面やオンラインでの会議や、SNSを使用しての意見交換、Webアンケートなどによって、意見を聴いて、政策に反映します。ここでの意見は、こども施策の充実に活用するだけでなく、その結果について、こども・若者に分かりやすくフィードバックするとともに、社会にも広く発信しています。本取り組みは、こどもたち自身が社会に目を向けていくきっかけとなるとともに、彼らの社会参加の第一歩となるものでしょう。

こども・若者育成支援

 『こども家庭庁』が発足される以前においても、こども・若者の意見を取り入れる取り組みは行われていました。内閣府が子供・若者社会参画推進事業として、こども・若者の意見を政策に取り入れ、彼らの社会参加意識を高めるため、小学校5年生から20代のこども・若者を「ユース政策モニター」として公募して、社会の様々な課題について、どのように思っているかなどの意見を募っていました。現在、この取り組みは、『こども家庭庁』での、こども・若者育成支援政策の中に含まれています。

 こども・若者育成支援では、上記の取り組み以外にも、こども・若者の現状や施策の状況について、子ども・若者育成推進法に基づく年次報告である「子供・若者白書」や、子供・若者に関する調査研究等にて明らかにしています。例えば、令和4年度は「こども・若者の意識と生活に関する調査」が行われており、こども・若者の自己肯定感や幸せな状態(Well-being)等の調査結果を見ることができます。こうした、こども・若者に関する現状を知っておくことは、学校現場において、こども・若者を育成していく上でとても重要です。是非、ご参考にしてみてください。

[参考ページ]

(2023年08月)