コアネット教育総合研究所
横浜研究室 室長補佐 中村 恭弘
リフレクション(Reflection)とは、自分の内面を客観的、批判的にふり返る行為のことを言い、経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」の中でも、あらゆるスキル習得の前提となる力として、昨今注目されています。
リフレクションを行うことによってマネジメント能力やリーダーシップを高めることができるだけでなく、業務の改善・効率化も期待できるため、主に組織の人材開発、人材育成の観点で注目されています。
リフレクションは、日本語訳すると「内省」という言葉に近い意味になり、「そんなことは誰もがやっているよ」と軽視されてしまいがちですが、リフレクションの目的を正しく理解し、そのための技術を学んで取り組む(取り組ませる)ことができれば、当人の業務に対するより良い動機づけや主体的な成長に繋がるだけでなく、組織にとって望ましい行動を引き出すことに繋がります。
まず大前提として、良いことであれ悪いことであれ、起きてしまったことは変えようがない、という前提に立つことが必要です。リフレクションの目的は、そのような出来事に対して、反省する、責任の所在を明らかにする、というようなことではなく、経験を客観視することで新たな学びを得て、未来の行動と意思決定に活かしていくことにあります。
ひと昔前の職場であれば、上司と部下間で「なぜできないのか」「なぜやらないのか」といった、相手の責任を追及するような指導の風景が良く見られていましたが、リフレクションは、同じ「なぜ」を問うやりとりでも、「当人と一緒になって、そうなってしまった本質的な原因を探り、次の行動改善に繋げる」という視点を持ちます。この点は、同じやりとりでも、そこから得られる意味には大きな違いがあります。
リフレクションについての具体的なメソッドについてはここでは書ききれないため、昭和女子大学キャリアカレッジ学院長であり、一般社団法人21世紀学び研究所の代表理事である、熊平美香氏の著書『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』を参考に、リフレクションにおけるポイントを5つご紹介します。
今回は、リフレクションの目的やそのポイントについて紹介しましたが、リフレクションは人材開発、人材育成の視点だけでなく、生徒指導の視点でも活かすことができる考え方です。生徒に良質なリフレクションをさせることは、これから必要とされる、社会に出ても学び続けることができる力、主体的で自律的な学習の姿勢を身につける上でも、大きな成果が期待できます。
[参考文献]
熊平美香著『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』(2021,株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン / Discover21,Inc.)