教育ICT学校事例レポート(5)瀧野川女子学園中学校・高等学校【後編】

  • 平均点20点上昇!? 「タブレット・タッチペン・MetaMoJi」が実現する

    ICTを用いたアクティブラーニングの実践【後編】

     

    「ICT×創造性教育」を教育テーマの一つに掲げ、一人一台のタブレットやクラウドアプリケーションを積極的に活用した教育活動を行う瀧野川女子学園。大画面のタブレットと高性能なタッチペン、協働学習支援アプリ「MetaMoJi」の使用により、紙と同じ使用感を保ちつつ、ICTならではの強みも引き出しています。

    今回は後編として、同校情報科の山岸容子先生のガイドによる、ICTを使った授業の見学の模様と、情報教育についてのインタビューをお届けします。

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    <情報科教諭 山岸 容子 先生>


     

    ☆授業見学の模様をお伝えします

     

    ★中学数学:八幡先生

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    校内で最もICT教育に積極的な若手の先生です。MetaMoJiを使って演習問題に取り組ませ、各人の回答を画面共有で把握しつつ、生徒の間を立ち歩きながら指導します。瀧野川では、電子黒板はタブレットとワイヤレス接続されており、先生方が教卓に縛られることがないのがポイントです。

    途中式の添削も、その場でタブレット上に書き込むだけで簡単に行うことができます。他の生徒も、必要に応じ他人の回答を見ることができ、より「伝わる」回答を作るためにどうすればよいか、考えながら問題を解いていきます。

     

    ★中学国語:真木先生

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    現代文の授業。記述問題を生徒に割り振り、回答をクラウド経由で提出させ、授業内で解説を行います。解答用紙のデザインは生徒の好みに合わせて設定してよいことになっていて、画面共有された解答は大変華やかでした。先生の説明資料も、事前に問題文を取り込み、手書きで傍線やコメントを書き込んでそのまま使えるので、教材作成にも手間がかかりません。

     

    ★高校理科:今門先生(化学)

    化学では、実験を多く取り入れた授業を行っています。タブレットの動画撮影機能を使い、グループで実験記録をつけ、レポートとして提出させます。

    今回の化学では、ネイティブ英語教員(理系専門)のワトソン先生も一緒に参加。英語だけに限らず、色々な教科にネイティブの先生が参加することで、英語を使うことへのハードルを下げる取組みも行われています。

     

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    ALTのワトソン先生。理系出身のため、理科の実験授業で生徒をフォローすることもあります。

     

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    実験を積極的に取り入れて授業を展開します。

     

    また、生物では、事前にクラウドを通してポイントをまとめたオリジナル動画教材を配信し、予習に活用。学習内容をグループ毎にまとめ、発表するなどの活動も日常的に取り入れています。内容や意見のまとめ、共有にはタブレットを積極的に用います。

     

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    事前配信されるオリジナル動画教材で、授業のポイントを予め理解。

     

    瀧野川では、一部の授業において、「スタディサプリ」の動画教材を予復習のツールとして利用しています。「○○の動画の××分からを見て」など、必要なポイントに絞って活用し、授業準備の効率化に努めています。

     

    授業を見せて頂いた先生方、ありがとうございました。

     


     

    ☆発展的な情報の授業

     

    瀧野川では、中学でも「情報」の授業を行うとともに、「ICT×創造性教育」をテーマにした総合学習を行っています。これらについて、今回の授業見学を案内してくださった情報科の山岸先生にお話を伺いました。

     

    ―中学では普通「技術・家庭」に含まれる「情報」を、個別の教科として扱っているとお聞きしましたが…

    山岸先生:中1からタブレットをフルに使う環境に置かれるので、より高校の情報の授業に近い内容を行っています。著作権についてのレクチャーやネットの危険性などについて、高校になってから勉強するのでは遅い時代に来ていると感じています。

     

    ―瀧野川のタブレットはセルラーモデルですが、家庭学習などにも使っていらっしゃるのですか。その場合のタブレット使用ルールや、セキュリティ環境はどのようになっているのですか。

    山岸先生:家庭学習にも利用しています。クラウドなので場所を選ばず、離れたクラスメイトと一緒に資料を編集することも可能で、生徒たちは宿題にもかかわらず楽しんで取り組んでいます。

    使用ルールやセキュリティについてですが、Safariは使えないよう設定し、フィルタリング機能のあるブラウザソフトを使っています。アプリケーションも、中学生は勝手にインストールができないように設定していますが、高校生は大人ですから、SNS以外は自由に使えるようにしています。

     

    ―「ICT×創造性学習」を教育テーマの一つとして掲げていらっしゃいますが、具体的にどのような取組みをされているのですか。

    山岸先生:東工大の先生方や大学院生の皆様のご支援も得て、「思いをアイデアへ」つなげる思考法や、シリコンバレー発の「デザイン思考」などを用いて、アイデアを実際の商品や事業へと繋げていくプログラムを実施しています。プロジェクト型学習で、学年ごとにロボットコンテストや、理想の街づくり、新規事業の立ち上げなどを体験します。

    今年の春には、中学2年生のロボットデザインの授業から3チームが、日本機械学会主催のロボットグランプリ大道芸競技コンピュータ制御部門に出場し、大学生たちを相手に見事準優勝を遂げました。

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    準優勝した『スタディ ヘルプ ベア』は、「勉強中に飲み物を差し入れしてくれる、そんなロボットがあったらいいな」という生徒の発想から生まれました。

    課外活動でも積極的にICT活用を推奨していますが、生徒たちの柔軟性には驚かされます。私は映像作りが専門でしたが、少し教えただけで、生徒たちは文化祭PVなど、プロ顔負けの動画制作を一昼夜でこなしてしまいました。今後更に広がっていく可能性に期待で一杯です。

     

    ―ありがとうございました。

     

    2回にわたって瀧野川女子学園の取材・見学の模様をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。日常授業の効果を高めるためのツールとしてのICT活用、「ICTとデザイン思考」をテーマとした具体的なカリキュラムの開発について、大変興味深く拝見しました。今後も応援し続けていきたい学校ですね。

    (2016年10月5日取材 聞き手:コアネット教育総合研究所 荻原)


    ◆後編Tips

    ・スタディサプリ:リクルートが提供する学習サプリメント。小学校向けから大学受験生向けまで、豊富な動画教材をそろえている。テスト機能もあり、誤答が多かった科目が記録され、苦手な単元を復習しやすいつくりになっている。

    中学講座 https://studysapuri.jp/course/junior/

    高校講座 https://studysapuri.jp/course/high/

    ・日本機械学会ロボットグランプリ:1997年の学会100周年の記念行事として、一般に開かれたロボットの競技大会である「第1回ロボットグランプリ」を開催し、その後継続的に開催している。昨年度は第19回が開催され、2016年3月26日~27日に「大道芸ロボット競技会」「ロボットランサー競技会」「スカベンジャー競技会」の3種目でコンテストが行われた。

     

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