一人一台タブレット化を2年前より進めてきた同校。学習管理アプリを導入する学校も増えましたが、生徒の「振り返りと気づき」に焦点を当てた独自の取り組みが大きな特色です。導入の経緯や、活用の状況、今後の展望を、伴野芳浩教頭先生、ICT担当の海老沼憲匡先生に伺いました。
<教頭 伴野 芳浩 先生>
<ICTご担当 海老沼 憲匡 先生>
―「まなふりくん」で、どんなことができるのですか。また、特色は。
伴野先生:単なる授業の連絡や記録にとどまらず、生徒自ら週間目標を立て、授業後には取り組みへの自己評価、反省・感想を記入します。先生から積極的にコメントを返し、生徒の気づきと学びを促すツールとして活用しています。他の生徒もコメントを付けられるので、生徒同士の学び合いも動きも始まりました。また、保護者の方々も閲覧・記入でき、教師・生徒・保護者の三者間コミュニケーションも活発化しました。
海老沼先生:生徒には、「何が、なぜ、どう感じたか、違いは、どうやったのか、どう生かすか」の6項目を意識して書くよう指導しています。表面的な感想に終わらず、実質的な学びにどのようにつなげるか、が重要ですね。
<まなふりくん活用イメージ①>
「なぜ」「何」など、学びの内容を掘り下げ言語化できるよう、先生から積極的に促しています。保護者の方のコメントもありますね。
―導入の経緯は。
伴野先生:もともと紙媒体での取り組みの積み重ねがあったのですが、数年前に学芸大の森本康彦准教授と出会い、ICTを使ってこれを更に発展させることを思いつきました。タブレットの利用により、細やかなコミュニケーションが効率的にできるようになったことが大きなメリットです。研究校の立場を生かし、定期的にユーザアンケートを実施し、機能の追加改善にも取り組んでいます。
<まなふりくん活用イメージ②>
毎日の自己評価をグラフで表示し、モチベーションや取組みへの満足度を可視化します。
―使い始めて、どのような効果がありましたか。
海老沼先生:クラウド上で簡単に担任やクラスメイトと話せるようになり、授業ではあまり発言しない生徒たちも積極的に気持ちを伝えてくれるようになったのが意外な効果でした。タブレットの機能と合わせ、写真コンテストなど、生徒たちの交流空間としての活用も始まり、今後の活用の広がりにますます期待しています。
―今後の活用の予定は。2020年大学入試改革との関連もありますね。
伴野先生:生徒の自己省察を習慣づけ、学びへの積極的なコミットを更に促していきたいですね。将来的に、自分の活動の成果、成長の過程を分かりやすくまとめたいです。面接でもアピール材料になりますし、何より生徒たちのモチベーションアップにもつながります。
いかがでしたか。学習を上から管理するのではなく、生徒が自ら主体的に学習し、学友同士でも良い影響を与え合うための「場」として、ICTを積極的に活用しています。東京家政学院の学びの深まりに、これからも注目ですね。
(2016年4月14日取材 聞き手:コアネット教育総合研究所 川畑)
◆教育ICT Tips
・eポートフォリオ:学んだこと、スキルや実績を示す成果をまとめたものをポートフォリオといい、クラウド技術などを用い電子化されたものをeポートフォリオと呼ぶ。
・森本康彦 東京学芸大学情報処理センター 准教授:教育工学専門。eラーニングやeポートフォリオシステムの研究開発、ICTを活用した能動的な学習に関する研究を行い、多数の論文を発表している。
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