2026年7月に閣議決定された「人工知能基本計画」では、「AI主権」という考え方が示されました。計画では、日本が「信頼できるAI」を必要なときに主体的に選択し、運用できる状態を目指し、特定の国や企業への過度な依存を避ける必要性が指摘されています。そのうえで、計算資源やデータ、クラウド、基盤モデル、アプリケーションなどを含むAIエコシステム全体において、自律性を確保していく考え方が「開かれたAI主権」として位置付けられています。
ここでいうAI主権は、すべてのAI技術やサービスを国内だけで開発・運用することを意味するものではありません。国内外の優れた技術を活用しながらも、特定のサービスや事業者に依存しすぎず、必要に応じて自ら選択・変更できる状態を確保することが重要です。
教育現場でも問われる「どのAIを使うのか」
この考え方は、今後AI活用が本格化する教育現場にとっても無関係ではありません。今後は教材作成や校務支援だけでなく、学習支援、個別最適な学び、探究活動、評価など、教育活動のさまざまな場面にAIが関わることが予想されます。
こうしたAIの普及によって、学校がICTを選定する際の視点も変わっていくと考えられます。
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これまでのICT選定 |
これからのAI選定 |
| 主な判断軸 |
機能・費用・安全性・使いやすさ |
従来の判断軸に加え、教育目的・教育理念との整合性 |
| ツールの位置づけ |
教育活動の支援・効率化 |
学びのプロセスにも関わる |
| 選定時の問い |
「何ができるか」 |
「どのように学びを実現するか」 |
| 導入後の視点 |
継続利用を前提としやすい |
必要に応じて変更・代替できるかも考える |
AIは単なる業務効率化の道具にとどまらず、児童生徒への問いかけや助言、文章へのフィードバック、学習内容の推薦などを通じて、学びのプロセスそのものに関わる可能性があります。そのため、「何ができるAIなのか」だけではなく、「どのような学びを実現するために使うのか」という教育目的からAIを選択する視点が重要になります。
学校教育におけるAI主権とは
教育におけるAI主権とは、学校が独自のAIを保有することではなく、教育の目的を起点としてAIを主体的に選択し、その使い方を自ら決められる状態と捉えることができます。AI時代には、「AIを導入するか」だけではなく、「どのAIを、何のために使うのか」が問われます。特に、独自の教育理念を掲げる私立学校にとって、AIを選ぶことは、単なるICTツールの選定ではなく、自校が大切にする教育をどのように実現するかという判断の一部になっていくと考えられます。
私立学校における教育理念との整合性
私立学校においては、AIの選択と学校が掲げる教育理念との整合性を考える必要があります。例えば、自ら問いを立てる、試行錯誤しながら考えるなどの思考力を重視する学校であれば、すぐに正解や完成された文章を提示するAIよりも、児童生徒の思考を促す問いを返すことを得意とするAIの方が適しているかもしれません。一方、対話や協働を重視するのであれば、AIによって学習を過度に個人化することが、本来目指している学びと一致しているのかを検討する必要があります。つまり、同じように高性能なAIであっても、学校によって「望ましいAI」は異なり得るということです。利用できるAIに合わせて意図しない形に教育理念が歪んでしまうことのないように選定することが重要になります。さらに、一度導入したAIサービスに教育活動が深く依存すると、そのサービスの仕様や料金、利用条件が変更された際に、学校側の選択肢が狭まる可能性もあります。だからこそ、特定のAIを使い続けることを前提とするのではなく、「なぜこのAIを使うのか」「別の選択肢に変更できるのか」を継続して確認する視点が必要です。