今回とりあげる教育キーワードは「教職協働」です。
小学校・中学・高校の先生方は、あまり聞き覚えのない用語かもしれません。文科省や各教育機関等が発表する資料では、主に大学における取り組み事例が紹介されています。
教職協働の「教」は、教員。「職」は、事務職員。つまり、「教職協働」とは、「教員と事務職員が協働すること」となります。
キーワードとしてご覧いただこうと考えたのは、この教職協働が、これからは大学に限らず、幼稚園~高校まで、すべての学校で重要性が高まると考えたためです。
具体的にイメージを持っていただくため、お伺いした各校(小中高)の取り組み事例の一部をご紹介します。
<教職協働 例示 :教育活動>
以下のような活動を、教職協働チームで進める
- 新しい探究プログラムの開発
- 大学連携、企業連携など外部との連携教育
- 放課後のオリジナル(選択型)講座の開発・運営
- 自学支援プログラムの開発・運営
- 学校間の相互訪問、共同研究、発表等の活動の企画・実施 など
もちろん、大学における取り組みと同様、経営視点での判断・意思決定や企画立案・課題解決活動を職員が支える、教職員研修の企画運営を教員・職員が協働して取り組む、といった事例は以前からあると思います。
ここでの着眼点は、従来は「教育は教員、事務は職員」という役割分担意識、職種間の“壁”を越えて、より魅力があり、効果的な教育活動を創造するために両者が力を合わせる、という点です。
“言うは易く行うは難し”で、そう簡単なことではないと思います。ご参考までに、筆者自身が試行錯誤しながら活動していく中で、大切と感じたことをいくつかご紹介します。
教職協働 大切にしたい視点・姿勢
- 教員側の意識改革 ・・学生・生徒・児童にとって何がいいか
もはや学校だけで閉じた教育を行う時代ではない、と言われます。その意味は、社会変化にともない、身につけさせたい資質・力が変化している。教科書や教師の知見を教えるだけでなく、様々な体験・体感を通じて自ら考え、力をつけていく教育が必要になった、ということです。教師の役割もその多様な学びをデザインし、提供すること、に変化する途上にあります。そのすべてを教員だけが担う必要はなく、身近な同僚・パートナーである職員との協働が、むしろ自然(当然)になっていくと考えます。
- 職員側の意識改革 ・・“事務職員”から“学校職員”
意識改革は職員側にも必要です。そもそも、「事務職として働こう」と思い、今の学校に務めている、という方々も多いと思います。いきなり、「これからは教育活動にも参画しなさい」と言われても、とまどうのも無理はありません。教員研修だけでなく、職員研修も企画し、職員の役割分担意識を少しずつ切り替えていく、あるいは上述したような「探究プログラム開発」に意欲ある職員が数名参加する、といった機会を、意識して増やすことも有効ではないでしょうか。
- 挑戦志向、未来志向の組織文化へ ・・試行錯誤をいとわない
社会が変化し続ける以上、教育も学校も現状維持というわけにはいきません。教職協働も最初からうまくはいかないこともある。そこで簡単にあきらめず、切り替えて試行錯誤し、トライを続ける学校が、必ず実りを得ていくのだと感じます。どの学校も、生徒の皆さんに、「ねばり強く、挑戦しよう」と激励しておられるでしょう。教職員も同じではないでしょうか。先生方や職員の方々とお話していて、この挑戦心や対話力、協働姿勢をじわりと感じる方が多い、と感じる学校があります。このような組織文化を持つ学校は、在校生、保護者、受験生など、多くの方々から支持されていると感じます。
公私を問わず、多くの学校がより効果的な教育を追求しています。今回取りあげた「教職協働」は、様々な領域の課題解決、新教育創造の活動を支える要素の一つとなっていくと思います。