コアネット教育総合研究所
所長 松原 和之
教科横断的な学習とは、教科や科目を超えた学びを通じて、現代的な課題に対応する資質や能力を育成する取り組みです。課題解決型学習やテーマ学習があり、「課題解決型学習」では課題設定と解決に重点を置き、幅広い視点を育むことが重要です。「テーマ学習」では特定の教科間で連携し、テーマを深めます。教科横断的な学習の目的は、言語能力や問題解決能力、持続可能な社会を築く力などを養い、学びと社会のつながりを実感することです。これにより自己効用感が高まり、学びのモチベーションや効果が向上します。
教科横断的な学習とは、教科や科目の枠にとらわれず、テーマに応じて必要な教科の知識や技能を総合して取り組む課題解決型学習やテーマ学習のことです。
教科横断的な学習には2つのパターンがあります。1つは「総合的な学習(探究)の時間」などに見られる探究的な課題設定とその解決をはかる場合です。これはそもそも教科の枠を超えた時間を設けていますので、必然的に教科横断的になります。ただし、探究する課題の設定および解決のアプローチによっては教科が偏るケースも見られます。教科を横断することが目的ではなく、自ら問題を発見し、課題を設定して、その解決をはかることに意義がありますので、無理に教科を横断させる必要はありませんが、解決アプローチを考える際に視点を広げるサポートをしてあげれば、教科を横断した幅広い視点からの探究になり、学びの広がりや深さが得られると思います。
もう1つのパターンは、複数の教科がそれぞれの学習活動を充実させるために行う場合です。つまり、特定の教科の学習の延長として、他の教科と連携することで、学びの広さや深さを得ようとする単元を作り出すものです。この場合は、その教科の時間内で行うか、どこかで特別に時間を設定して行うかのどちらかになり、長い時間は確保できない場合が多いと思います。
また、あらかじめ横断する教科が決まっているので、テーマを特定せざるを得ません。つまり、課題解決型学習というよりは、テーマ学習の形態をとることになります。特定のテーマについて、調べたり話し合ったり考えたりして答えを出すような学習となるでしょう。
いずれのパターンにおいても、教科横断的学習の目的は、言語能力、情報活用能力、問題解決発見・能力等の「学習の基盤となる資質・能力」を身につけることと、新たな価値を生み出す豊かな創造性、地域や社会における産業の役割を理解し地域創生等に生かす力、自然環境や資源の有限性等の中で持続可能な社会をつくる力等の「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力」を身につけることです(注)。
単に特定の教科の知識や技能を身につけることを乗り越える学びが必要です。そのために、単元の目標として、どのような資質・能力を身につけるのかを明確にしておく必要があります。
ただ、このように難しく考えると、取り組みに二の足を踏んでしまいます。実は、教科横断的な学習には、もう一つの目的があります。それは、いつも学んでいる教科の知識や技能が社会や生活に関わる問題解決につながっているのだという実感を得ることです。また、社会や生活に関わる問題は、特定の教科では解決できない複合的な問題であるという実感を得ることです。この「実感」という言葉が大切で、身近なテーマや課題を設定してあげることで、学校における学びと社会課題にブリッジがかかります。そして同時に、自分と社会との間にもブリッジがかかります。
児童生徒たちは、ふだんは教室の中で学んでいるだけで、それが何の役に立つのかわかりにくいです。ふだんの学習を社会課題の解決につなげるだけで、自己効用感が高まり、学習へのモチベーションも高まります。そのことがふだんの学習にもよい影響を与え、学びの効果を高めることになります。
ですから、身につける資質・能力などを難しく考えずに、社会とのつながり実感を得るために教科横断的な学習を行うのだと思えば、比較的構えずに取り組めるのではないでしょうか。石橋を何度も叩いて結局渡らないぐらいだったら、コツンと一回叩いて渡ってしまいましょう。その方が必ずこどもたちのためになりますから。
(注)
現学習指導要領(平成29年・30年告示)では、「総則」において、「各学校においては、生徒や学校、地域の実態及び生徒の発達の段階を考慮し、豊かな人生の実現や災害等を乗り越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を、教科等横断的な視点で育成していくことができるよう、各学校の特色を生かした教育課程の編成を図るものとする」と示しています。つまり、教科横断的な学習の一つの目的は、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力を身につけることです。
現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力については、新たな価値を生み出す豊かな創造性、地域や社会における産業の役割を理解し、地域創生等に生かす力、自然環境や資源の有限性等の中で持続可能な社会をつくる力などが例示されています。これらと、学習指導要領でいうところの「学習の基盤となる資質・能力」、つまり、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等を身につけることが教科横断的な学習に求められるものだといえます。