コアネット教育総合研究所
横浜研究室 主任研究員 熱海 康太
部活動改革は、教師の負担軽減と生徒の成長を目的とし、部活動指導を民間企業や地域に委託する施策です。背景には、教師の過重労働や生徒の偏った経験があり、これを解決するために、スポーツ庁と文化庁が2023年から2025年を改革推進期間としています。改革のメリットには、教師の負担軽減や生徒の技術向上があり、実施には人材と費用の確保が必要です。効果測定を行い、定期的にアンケートを実施して方法を見直すことが重要です。
部活動改革とは、「働き方改革」など部活動を取り巻く諸問題に対応するために、民間企業や地域に部活動指導を委託することを指します。
部活動は、学習指導要領上では学校教育の一環とされていますが、必ず行う義務は明記されていないため、活動実施判断は各学校に委ねられています。その中で、生徒や保護者からの変わらぬ強い要望もあり、多くの学校で部活動が実施されています。
部活動によっては平日遅くまでの指導、土日の大会引率など、指導者にとって負担過重となることが問題として取り上げらえることが多いです。部活動の経験がない教師が顧問になることや、事故が発生した際の責任の重さについても、教師の負担を重くしています。
子どもたちの成長を考えても、練習のし過ぎによる怪我や、生活が「部活動だけ」になってしまい経験が偏ることへの危惧があります。
上記の問題を解決するために、部活動の指導を民間企業や地域指導者に代替してもらう施策が始まっています。スポーツ庁と文化庁においても2023年から2025年を改革推進期間として「地域の実情に応じて可能な限り早期の実現を目指す」とする指針を発表しています。2024年10月現在において、各自治体の実証事例も挙がりつつあり、それに伴い私立学校においても、検討や実施が進みつつあります。
また、合理的で効率的な部活動の推進を行うために、他校との合同部活動の推進、距離的な制約を越えて生徒・指導者間のコミュニケーションが可能となるICT活用の推進、地方大会の在り方の整理(実態の把握、参加する大会の精選、大会参加資格の弾力化等)などが図られています。
ここでは、主に学校ベースでの取り組みが可能な指導者代替の施策について、お伝えしていきます。
部活動改革のメリットとしてまず挙げられることは、教師の負担軽減です。指導や責任の所在において、負担を分散することができ、他の教育活動にも時間を割けるようになります。具体的には、教師が職員室にいる時間が増え、日々の学習へのフォローや進路指導が手厚くなります。
また、部活動を行う生徒にもメリットがあります。部活動改革を行うことで、その分野の専門家に指導を受けることができます。実践校では、生徒の技術的な向上が実感され、部活動への満足感が上がっているというアンケート結果が出ています。
まずは、部活動改革で得られるメリットを明確にし、教職員、生徒、保護者の理解を得ることが肝要です。また、部活動改革に伴う懸念も一つひとつ丁寧に説明していくことが必要です。懸念される主なものには、外部指導員の質、保護者費用負担、外部指導員との連携などがあります。
外部指導員については、現状の部活動の質以上を担保するために、指導技術を持つプロに一貫して指導してもらうことが必要です。指導員がボランタリーベースになってしまうと、学校や保護者からクレームや要望を入れづらいということがあります。そのための費用の確保には、保護者負担は避けられず、部活動の概念の変化について、理解を求めることが大切になります。また、顧問としての役割の変化についても、学校や教師が把握することが重要です。
部活動改革においては、効果測定を行い、客観的な数値として想定しうるメリットに届いているのかどうかを確認することが大切です。生徒、保護者、教職員に定期的にアンケートを実施し、都度方法を見直していくことが成功への近道となります。
[参考資料・文献]