コアネット教育総合研究所
所長 松原 和之
データサイエンス教育は、社会やビジネスの課題解決に必要なデータ分析・活用の知識やスキルを身につけるための教育です。データサイエンスは、データから実用的な洞察を得るために、専門知識、数学、統計、プログラミング、AI、機械学習を組み合わせることです。日本では、データサイエンス教育が遅れており、政府は人材育成を急いでいます。文部科学省は「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」を立ち上げ、大学での教育プログラムを認定しています。高校では「情報Ⅰ」が必修化され、「情報Ⅱ」の履修も推奨されています。データサイエンス教育は、全教科で必要な見方・考え方として広く学ぶべきです。
データサイエンス教育とは、社会やビジネスの課題解決につなげるデータ分析・活用に必要な知識やスキルと見方・考え方を身につけるための教育です。
データサイエンスとは、データに隠されている実用的な洞察を、専門知識、数学と統計、特殊プログラミング、高度な分析、人工知能(AI)、機械学習を組み合わせて明らかにすることです(注)。
そして、データサイエンス教育とは、そのデータサイエンスへの関心を高め、適切に理解し活用する基礎能力や課題解決のための実践能力を育成する教育のことです。
コンピュータやインターネット、人工知能(AI)の利用が一般的になった社会において、大量のデータを収集し蓄積することが可能になったため、それを分析して、社会やビジネスに活かそうという取り組みが盛んになっています。
しかし、日本は諸先進国に比べ、その取り組みが遅れており、それが産業の発展のボトルネックになっていると、政府はその分野の人材育成を急いでいます。
内閣府が取りまとめた「AI戦略2019」の中で、AI時代に対応した人材の育成が謳われ、それを受けて、文部科学省が「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」を立ち上げました。
これは、学生の数理・データサイエンス・AIへの関心を高め、それを適切に理解し活用する基礎的な能力(リテラシーレベル)や、課題を解決するための実践的な能力(応用基礎レベル)を育成するため、数理・データサイエンス・AIに関する知識及び技術について体系的な教育を行う大学等の正規の課程(教育プログラム)を文部科学大臣が認定及び選定して奨励する制度です。
現在(2024年8月)、リテラシーレベルの教育プログラムが494件、応用基礎レベルの教育プログラムが243件、認定されています。
つまり、全国のかなり多くの大学等で、データサイエンス教育が行われるようになっているのです。
また、2017年の滋賀大学を皮切りに、全国の大学で「データサイエンス学部」が次々と新設されています。
つまり、文系・理系を問わず、大学生の教養レベルでのデータサイエンス教育が進んでいる一方で、データサイエンティストといわれるような専門人材の育成も各地の大学等で始まっているのです。
高等学校段階では、「情報Ⅰ」が 2022年度から必修化され、2025年度からは大学入学共通テストの出題科目にも加わります。
また、2024年度からスタートした「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」では、選択科目である「情報Ⅱ」の履修も推奨されています。
データサイエンスという言葉は、情報Ⅰの学習指導要領には登場しませんが、「データの活用」という言葉とともに、「データを収集、整理、分析する方法の理解」等が挙げられています。情報Ⅱには、明確に「情報とデータサイエンス」という項目(単元)があり、「データに基づく現象のモデル化」や「モデルを評価すること」まで学習内容として明記されています。
高校生には、データサイエンスというと少し難しく感じられるかもしれません。しかし、「社会やビジネスの課題解決にデータを活用する」という意味では、高校生の探究活動においては必須の視点です。また、学問やビジネスだけでなく、スポーツや衣食住などさまざまな分野でデータ分析が活用されてることを考えると、体育科や家庭科なども含め、各教科の学びの中で触れておくべき視点です。
高校の学びにおいては、データサイエンスを、情報科目の中の知識やスキルという限定的な取り扱い方をせずに、幅広くすべての教科で必要となる見方・考え方として、生徒たちに学ぶ機会を与えるとよいでしょう。そのためには、情報科の教員のみならず、全教科の教員がデータサイエンスの素養は身につけておくべきだと言えるでしょう。