コアネット教育総合研究所
横浜研究室 主任研究員 熱海 康太
自由進度学習とは、自己調整学習の方法の一つで、学習の進め方や教材などを学習者が自ら決定して、各々自由に進めていく学習や授業のスタイルを指します。
今日までの多くの授業スタイルは、教科書を元にして、同じ時間に、同じ内容を、同じ手法を用いて、学習するものでした。この方法は、多くの学習者に効率よく内容を伝達できる教授法とされてきました。しかし、これは平均的な子に焦点を当てたものとなるので、学びが遅れがちな子、また学びが進んでいる子には合わないものでした。また、最も懸念されるのは、受け身がちな「与えられた学習を仕方なくやる」「与えられないと自分から学びを獲得することはできない」状態の学習者を多く生み出してしまったことです。
そのような現状を打破しようと、中央教育審議会は、2021年1月に出した答申の中で、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を重視することで、主体的で対話的な深い学びを実現できるように求めました。その具体的な方法の一つが、自由進度学習です。
自由進度学習は、それぞれの学習者が、自分で目標を設定し、例えばタブレットなどを使って学習を行い、適宜フィードバックを行うものです。従来のように、黒板に向かって机を並べる必要がなくなるので、空間に縛られることなくそれぞれが集中しやすい場所(そうなると、学校でなくても良いですね)で、学習を行うことができます。また、上智大学の奈須正裕教授によると、「異なる教科を先に学習した子ども同士での自然な教え合いが生じる」「協働的な学習としての特質も自然に生じる」としており、「協働的な学び」にも応えうる学習手法なのだと理解することができます。
自由進度学習は、多くの方が何となく想像している未来の教育の姿なのではないでしょうか。ただ、それが理想と思っていても、「実現へのプロセスが想像できない」「何から始めればいいのか分からない」という方は少なくないと予想されます。ここに、1単元分の授業の具体例を載せておきます。以下の方法は、愛知県東浦町立緒川小学校での1980~1990 年代の実践を元にしています。古い実践に思えますが、学術的に効果が測定されており、GIGA時代の各校の自由進度学習の実践でも強く参考にされているものです。
①ガイダンス
②計画
③追究
④まとめ
特に、4,5については自由進度学習の効果を確かなものにするために重要と思われます。昨今のAI教材やクラウドツールの登場により、高い精度が期待できるようになりました。
これからの時代、更なる教育DXが実現することを考えると、自由進度学習へのハードルは低いものとなり、「実現可能な教育方法」から「実現しなければならない教育方法」にシフトしていくことが予想されます。これからの教育では、自由進度学習の具体的な実現を視野に、方法を選択していくことが求められます。
[参考資料・文献]