カリキュラム・デザイン

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カリキュラム・デザイン

コアネット教育総合研究所
所長 松原和之

 カリキュラム・デザインとは、学習指導要領をベースとしながら、学校の教育理念や教育目標、児童生徒の実態に合わせてカリキュラム全体を立体的、調和的に設計することです。

カリキュラムとは

 「カリキュラム」は一般には教育課程のことを指しますが、授業時数の配当だけでなく、各科目の年間指導計画(シラバス)、単元計画、授業計画(学習指導案)、そして評価計画を含む概念です。つまり、教育内容だけでなく教育方法(指導方法)も包含しています。

 「デザイン」は作成することを指していますが、科目単体の羅列で平面的に作るのではなく、教科横断や多様な資質・能力の育成を意図するなど、さまざまな意味合いを込めて(比喩として)立体的に設計することをイメージしています。やるべきことを記載するという機能的な面だけでなく(これも比喩として)全体として調和のある洗練された美しさも求めているといってもいいかもしれません。

 

カリキュラム・デザインの手順

 具体的手順でいうと、まず教育理念や教育目標からカリキュラム・ポリシー(同時に、グラデュエーション・ポリシー、アドミッション・ポリシーも)を作ります。カリキュラム・ポリシーは、その学校における教育課程の編成や授業科目の内容および教育方法について基本的な考え方を示したものです。私学の場合は、このカリキュラム・ポリシーが他校にはない独自性を持っていることが重要です。時代を先取りし、次の時代を担う人を育てるためにどのようなカリキュラムであるべきかをじっくり考えなければなりません。

 ただし、外部に公表するカリキュラム・ポリシーは、くどくどと長く語るわけにはいかないので、言葉を凝縮させてしまいます。そこで、学校内部においては、カリキュラム・ポリシーの考え方を語り尽くした詳細版(解説編)を作っておくとよいでしょう。教育課程を作る過程において悩んだ時には、このカリキュラム・ポリシー詳細版に戻るのです。教育課程策定の指針ともいえるでしょう。

 そこには、目指すべき児童生徒像から、求められる資質・能力を設定し、それらをいかに身に付けせるかを記載します。チョーク&トークで教え込むような教育方法でよいのか、学習者主体の授業とはどのような授業なのか、校内で共通認識を持たなければ、教育課程の策定はスムーズにいかないでしょう。

カリキュラム・デザインは授業時数の配当争いではない

 教育課程を策定する場合、多くの学校で、教科同士の授業時間数の取り合いになります。一定の枠しかない授業の中に自教科のコマ数をいくつ確保できるのか、それが教科主任のミッションになったりします。もちろん、どの教科においても、児童生徒が身につけるべき内容がたくさんあるので、授業時間数は多くて困ることはないと考えるのでしょう。しかし、児童生徒が主体的に学ぶことを考えた場合、時間数ばかり多く確保しても仕方がないことです。児童生徒が自ら学びを選択できるような余裕のあるカリキュラムを組むことがいま求められています。
 また、自教科だけがよければよいのではなく、全体的に調和することが大切です。全科目の単元配列表をつくって教科連携や教科横断を考えるなど、学習者本位で最適な学びをデザインすることが求められます。

単元計画の策定が大事

 本来は年間指導計画や単元計画、学習指導案の作り方を解説すべきところですが、ここは用語解説の場なので、そのことは別の機会に譲ります。一つだけ大事なことを記しておきます。多様な資質・能力を育てる探究的な授業を展開するためには、単元計画を重視すべきです。単元の単位でコンテンツとコンピテンシーのバランスを考えたカリキュラムの策定が重要であることだけ書き留めておきましょう。

カリキュラム・デザインとカリキュラム・マネジメントの違い

 最後に、似たような言葉であるカリキュラム・マネジメントとの違いを説明しておきます。
 カリキュラム・マネジメントとは、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向 上を図っていくことです。デザインされたカリキュラムが日々の教育活動の中できちんと実行され、成果を出しているのかをチェックし、改善をしていく学校経営活動のことです。カリキュラムについて、いわゆるPDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)というサイクルを回すことをカリキュラム・マネジメントといいます。
 カリキュラム・デザインはこの中のPに当たりますから、カリキュラム・デザインはカリキュラム・マネジメントの一部ということができるでしょう。ただし、日々の教育活動の中でたびたびデザインというほどのカリキュラムの改定をしませんので、10年(学習指導指導要領改訂のサイクル)や5年サイクルの大きな(長期的な)カリキュラム・マネジメントの一部と考えるべきでしょう。

 なお、ここでは詳細は語りませんが、カリキュラムには、ヒドゥン・カリキュラムというかたちには表れないカリキュラムがあります。学校の風土や体質、クラスの雰囲気など、目に見えないけれども児童生徒に影響する因子です。このヒドゥン・カリキュラムも意識し、悪い因子があれば取り除き、良い因子があれば育てていくことも必要なことであることを、書き添えておきます。

(2024年3月)