コアネット教育総合研究所
横浜研究室 室長 福本 雅俊
みなさんは、「学ぶこと」をどのように捉えていますか?
この学びに対する「考え方や価値観、信念」のことを、認知心理学の領域では学習観といっています。
学習観と、以前にこのコーナーでも紹介した学習方略は、密接に関わり合っています。
学習者が持っている学習観によって採用される学習方略が規定される。逆に、採用した学習方略によって得られた体験とそのふり返りによって学習観が構成される。
どのような学習観を持っているのか、ということは学習活動の質を左右します。そして結果として、得られる学習成果にも影響が及ぼされることになります。つまり、どのような学習観を持っているのか、ということが学習成果の向上という望ましい結果につながっているのです。
小欄では、知識習得型の狭義の学力を伸ばすためにも、また幅広い資質・能力を含んだ広義の学力を向上させていくためにも、主体的に学びに取り組む態度を獲得させていくことが有益であるという立場を採ります。詳細は、自己調整学習の記事をご参照ください。
主体的な学習活動を駆動する要素としては、様々なものが挙げられますが、そのひとつが学習観であると考えられます。その学習観は、大きく主体的な学習につながりやすい学習観とそうではない学習観の2つの種類に大別することができます。
<主体的な学習につながりやすい学習観>
<主体的学習につながりにくい学習観>
いかがでしょうか?
それぞれの学習観は、一人の学習者において、どちらか一方だけが内在するものではなく、濃淡を持って様々な学習観が同居するものと考えられます。教科によって異なる学習観を持つということもあり得るでしょう。また、必ずしも主体的学習につながりにくい学習観を持っていることが悪いこととは言い切れず、学習内容によっては「とにかく暗記すること」が必要なものもあるでしょう。
大切なことは、取り組む課題に対して適する学習行動を採るということであり、その行動を支える学習観を少しでも主体的な学習につながりやすいものとして構築していくということです。
ただし、学習観とは価値観や考え方であり、その変容を促していくことは容易なことではありません。だからこそ、長期的な視点に立って、学習者の学習観の変容を促していくという働きかけが必要になります。
では、学習観の変容に向けて、どのようなアプローチを採ることが望ましいのか。それは、学習方略の活用という行動面における変容を促進し、それによって得られた成果や課題をふり返ることによって、学習者自身が自らの学習状況を客観的に捉えて学習活動を調整するという活動を継続していくということです。
学習方略と学習観は相互に関連していると前述しましたが、まずは行動レベルである学習方略にアプローチしていくという考え方です。
そして、「学習活動を変える」「そのことをふり返り自らの学習活動にフィードバックする」という活動を往還していくことによって、学ぶということをどのように捉えるかという学習観を転換させていくのです。
上記のように、学習観の変容を促すためには学習方略を工夫することが必要になりますが、そのためには、当然学習方略に関する知識を持っていること、適切な学習方略を選択できることが必要になります。
また、学習活動を客観的に捉えて調整するためにはメタ認知力を持っているということが必要になります。
これらの要素は複雑に絡み合うものであり、それぞれをばらばらに捉えるのではなく、複合的に捉え、教育活動における介入に活かしていくという視点が重要になるでしょう。