コアネット教育総合研究所
横浜研究室 主任研究員 熱海 康太
VUCAとは、
の頭文字を取った言葉で、元々は冷戦終結後の「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」である国際情勢を意味する軍事用語として使われました。
昨今ではビジネスや経済の世界で使われるようになり、教育界でもこれからの子どもたちを取り巻く状況を「VUCA時代」「VUCAワールド」などと示すことが増えてきました。
これからの子どもたちが生きる時代や世界は、「よく変わり、予測が難しく、複雑で、つかみどころがない」ものだということです。また裏を返せば、それだけ多様な可能性と選択肢があるものと捉えることができます。
ただ、上記の説明ではそれこそ「つかみどころ」がないものになってしまうので、もう少し具体的に昨今の教育時事に落として考えてみたいと思います。
このような教育を取り巻くVUCAにおいて、教師はどのように対応していけば良いのでしょうか。それこそ、多くの教育書やサイトで語られている通り、様々な方向からのアプローチが必要になります。しかし、ここに抽象を書いても、皆さんに利のない3分間になってしまうのであえて具体を2つ提示します。
トライアル&エラーの仕組みを回せるようにする指導
それぞれの目指すゴールの多様性を考えれば、教師や親が「こうするといい」「言う通りにしておけば幸せが訪れる」と教え込む時代は終わりました。また、知識や技能を詰め込んでも、いくらでもネットで調べたり、システムが代替したりしてくれる世の中になっています。
つまりは、自分でトライアル&エラーを繰り返していく中で、方向性の決定や問題解決ができる資質や能力を身につけていかなくてはならないのです。
具体的な方法としては、PDCAサイクル(それをより具体化して教育に落としたものに「けテぶれ学習法」などがあります)、ラーニングコンパスでも示されているAARサイクル、OODAループ思考、自己調整学習理論など自律的な仕組みを学ばせることです。これらの仕組みを子どもたちに伝え、最も大切なことは取り組みを「伴走により支える」ことです。
一括りにしない思考
「男だから」や「〇〇人だから」などの一括り思考は教育的にNGなのは、言うまでもありません。学校ハラスメント案件で原因になるのも、一括りに児童生徒を当てはめた結果、気持ちに齟齬が発生してしまったことによるものが多いです。
ただ、「〇〇さんは、理数系が得意だから」「〇〇さんは、世話好きだから」はどうでしょうか。これも「その子らしさ」という一括りで、子どもを捉えてしまってはいないでしょうか。しかし、VUCA時代、VUCA世界には多様な選択肢があり、「その子らしさ」という枠すら小さい可能性があります。傾向や特性を掴むことは重要なことですが、そこを踏まえた上で一括りに縛られない思考が教師には大切になってきます。