性的マイノリティ(LGBT)に関する教育

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性的マイノリティ(LGBT)に関する教育

コアネット教育総合研究所
神戸研究室 藤澤憲人

LGBTとは

 LGBTとは、生徒指導提要の定義では、「Lがレズビアン(Lesbian 女性同性愛者)、Gがゲイ(Gay 男性同性愛者)、B がバイセクシャル(Bisexual 両性愛者)、Tがトランスジェンダー(Transgender 戸籍上の性別と性自認が一致しない人)、それぞれ四つの性的なマイノリティの頭文字をとった総称で、性の多様性を表す言葉」[文部科学省, 2022]となっています。

 最近では、これらに加え、Q(クエスチョニング セクシャリティが定まっていない人)や、+(LGBTQに含まれない様々なセクシャリティを表現)を含めた、LGBTQ+という言葉を使う人もいます。2018年の電通ダイバーシティラボの調査によると、日本の人口の8.9%がLGBTQ+だと言われており、この割合は左利きの人の割合とほぼ同じといわれています。

なぜ最近になり注目されたのか?

 当事者や、当事者を支える人たちは、こうした性的少数者の存在や、性的志向と性自認(Sexual Orientation & Gender Identity:SOGI)に関する基本的な知識を学校で伝えることを求め続けてきました。「教科書で扱われていない」、「そもそも先生たちが当事者の方と接した経験が無い」などの理由から、学校現場では最近まで触れられてきませんでしたが、2019年ごろから中学校の道徳の教科書で、2020年からは小学校の保健体育の教科書で「性的少数者」に関する記述がある教科書が増えてきました。加えて、2022年12月に改訂された新しい生徒指導提要に「性的マイノリティ」に関する章ができ、学校としての対応を求められたことで、俄かに注目が集まっています。

参考URL:生徒指導提要(改訂版):文部科学省

具体的な取り組み

 前述の通り、2022年12月に改訂された生徒指導提要に「性的マイノリティ」に関する章ができました。
 簡単にまとめると、今回の改訂では、性的指向・性自認は偏見や差別につながりやすく、いじめを防止するためにも、「学校生活を送る上で特別の支援が必要な場合があることから、個別の事案に応じ、児童生徒の心情等に配慮した対応を行うこと」「生徒指導の観点からも、児童生徒に対して日常の教育活動を通じて人権意識の醸成を図ること」を明確に求めています [文部科学省, 2022]。詳細はぜひ、ご一読いただきたいのですが、具体例も多く、“配慮”以上の、具体的な行動が示されています。
 例えば、学校生活への支援として、近年、性差を意識させない制服や体操服を導入したり、選択できるようにしたりしている学校は多いかと思いますが、生徒指導提要では、更衣室・トレイなどのハード面での配慮や、体育などの授業での別メニューの設定など、さらに踏み込んだ内容の具体例を挙げ、対応を求めており、該当生徒を担当する担任だけではなく、学校として対応しなければ解決できる問題でありません。

 ただ一方、「日常の教育活動を通じて人権意識の醸成を図ること」に対する、具体例は学級・ホームルームにおける、「適切な生徒指導・人権教育等を推進する」程度でしかなく、ほとんど載っておりません。では、人権意識の醸成を図る日常の教育活動として、どのような活動をすればいいのでしょうか?

 

 1つ関西の大学と系列高校の事例をご紹介します。

〈 関学レインボーウイーク 〉

関西学院大学では、5月17日の「IDAHOT(アイダホ)の日」(※5月17日はWHO(世界保健機構)が同性愛を国際疾病分類から排除したことに由来する記念日。世界130か国以上で「多様な性」について考えるアクションや集まりが持たれています。)前後の週で、関学レインボーウイークを開催されています。 [関西学院大学, 2023]
2013年頃から大学生が中心となり、ダイバーシティやジェンダーに関するアンケートや調査を実施したり、書籍や絵本の展示や、当事者を招いての講演会などを行っており、系列の関西学院千里国際中等部・高等部には、Rainbow Week Committeeというクラブ活動があり、大学のレインボーウイークの運営を支えています。

参考URL:関学レインボーウィーク | 関西学院大学
人権教育研究室 (kwansei.ac.jp)

 このように、大学などの外部機関と連携した活動は、生徒にとっても、先生方にとっても参加しやすく、最初の一歩として非常に有効ではないかと考えます。

 ぜひ、道徳や、保健の一分野として扱うだけでなく、性的マイノリティのテーマを切口に、性別役割分担の課題や、ダイバーシティ、人権までテーマを広げ、先進的な取り組みにチャレンジしていただければと思います。

(2023年4月)