メタ認知

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メタ認知

コアネット教育総合研究所
所長 松原 和之

メタ認知とは、自らの認知活動を高次なレベルから認知する、
つまり俯瞰的に自分を見つめることです。

 

メタ認知とは

 「メタ」という言葉は、「高次の」や「一段上の」という意味を持つ接頭語です。いま流行りの「メタバース」は「メタ」と「ユニバース」が結合した造語ですが、「現在よりも高次の世界」という意味で、仮想空間や仮想世界を示しています。

 つまり、メタ認知は、高次の認知、一段上の認知ということで、自分の見る、聞く、書く、話す、理解する、覚える、考えるといった認知活動をもう一段高いところから捉えた認知ということです。

 例えば、人に話をするときに、「どのように話したらわかりやすくなるだろうか」と考えたり、「話すとき事例を交えた方がわかりやすくなる」と判断したりするのが、メタ認知です。

メタ認知を働かせる学習法(学習方略)

 メタ認知は学習において重要な役割をします。そもそも学習は、知識や技能を習得したり、推論や問題解決をしたりと様々な認知活動から構成されます。その認知活動を一段上から捉えてモニタリングしたり、コントロールしたりすることができたら学習がより効果的になることは想像に難くないでしょう。

 2019年にベネッセ教育総合研究所が行った調査の結果からは、「テストで間違えた問題をやり直す」や「何が分かっていないか確かめながら勉強する」というメタ認知を働かせた学習と学力との相関が高いことがわかっています。

 このように学習をする際に、メタ認知を働かせる学習法(学習方略)を知っているかどうか、行っているかどうかが学力形成に強い影響を及ぼすと考えられます。頭の良し悪しを固定的に捉えたり、ただ闇雲に学習時間だけを増やしたりするのではなく、学び方(学習方略)を身につけ、自らの学習を自己調整できるようになることが学力形成にとって大事なことです。

メタ認知の種類

 メタ認知には、「メタ認知的知識」と「メタ認知的活動」があります。メタ認知的知識とは、「私は書くのは得意だが、話すのは苦手だ」とか「具体例は理解を助ける」といった、認知についての知識です。認知について知っていることがあると役に立ちます。

 一方のメタ認知的活動は2つに分類できます。1つの「メタ認知的モニタリング」は、「私は先生の説明が理解できている」というように認知の点検や予想ができることで、もう1つの「メタ認知的コントロール」は、「私の理解が正しいかどうかを確かめるために図で表してみよう」というように認知についての目標の設定や修正を実行することです。実際に学習活動を行っているときに、自分の学習(認知)をモニタリングしながらコントロールできるようになることが大切です。

メタ認知 資料(1)

 

メタ認知能力を伸ばすために

 学校において、メタ認知能力を伸ばすためには、以下の3つが大切です。

 1つは、メタ認知的知識を学ぶこと。つまり、学校(授業)でメタ認知的知識を教えることです。いわゆる「できる子」は小さいころから自然とメタ認知的知識(学習方略)を身につけています。しかし、必ずしも全員の子どもが身につけているわけではありません。中学生や高校生でも学習方略が身についていない生徒も多いので、それをきちんと教えることが大切です。ただし、学習方略にはパターンがたくさんあり、そのいずれが自分に合った方法なのかはわかりません。生徒自身が様々な方法を試してみて、自分に合った学習方略を経験的に獲得することが大事です。自ら主体的に「学び方を学ぶ」という機会を多く作り出せるとよいでしょう。
 2つめは、他者との関りから自分を相対的に見るクセをつけることです。そのためには、授業に協働的な学びの場面を増やすとよいでしょう。他者の意見に耳を傾け、多様な考え方に触れることで、自分の考えが相対化、対象化されます。そして、それは自分の認知を俯瞰的に見るきっかけになります。
 3つめは、日々において、生徒たちがメタ認知を働かせるように教師が関わることです。すべてに答えを与えてしまうのではなく自分で考えさせたり、授業や行事などの活動において振り返りや内省をさせたりする機会を増やすことが大事です。

 つまり、教師が教科書の知識を教える役割から、学びをコーディネートする役割に変わることです。知識が偏在していた時代は、教育において知識を体系化してわかりやすく伝えることが重要な役割を担っていました。しかし、現在のように情報化時代になり、知識が膨大に蔓延するようになると、溢れた知識や情報をどう取捨選択して学び、実際に活用するのかという方法のほうが大事になりました。それがメタ認知であり学習方略です。そのような学びをコーディネートすることが、これからの時代の教師の役割でしょう。

 生徒たちを「学びを自己調整できる」「自立した学習者」として育てるために、メタ認知能力を身につけることを意識した教育を行ってみてはいかがでしょうか。

[参考文献]

※三宮真智子著「メタ認知: 学習力を支える高次認知機能」(2008、北大路書房)
※東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「親子パネル調査」(「子どもの生活と学び」研究プロジェクト)

(2022年12月)