デザイン思考

3分でわかる!今話題の教育キーワード特集

デザイン思考

コアネット教育総合研究所 横浜研究室室長 福本雅俊

デザイン思考とは?

 「デザイン」という言葉を聞くと、どのようなイメージを持たれるでしょうか?
 センスや才能、といったキーワードが挙がるかもしれません。しかし、デザイナーと呼ばれる人たちがデザインを考えるにあたっては、実は一般化できるプロセスを踏んでおり、それを思考のためのスキルとして形式化したものがデザイン思考と呼ばれるものです。
 デザインを考えるという行為は、ひらめきやアイデア発想という目には見えないようなものではなく、決まったプロセスを踏まえて行う論理的な思考であるとも言えるのです。

デザイン思考のプロセス

 では、そのプロセスとはどういったものなのでしょう。代表的な型として、5つのステップがあると言われています。それは、「①観察・共感」「②定義」「③概念化」「④試作」「⑤テスト」です。いわゆるマーケティングの世界では、これまでは事前に大規模なアンケート等を行い、マスにおける最大公約数的なニーズを探るということが第一ステップとして行われてきました。しかし、デザイン思考では、そのプロセスを踏むことはありません。
 特徴的なのは、何か課題を抱えている人や社会における課題に直面している人にフォーカスをするということです。特定の「人」や「問題」に焦点を当て、インタビューやその人の行動を徹底的に観察し、共感していくことにより、本質的な課題である「インサイト」を洞察し、定義していきます。
 そしてもうひとつ特徴的なところが、当初から完璧を求めずに、製品やアイデアを試作(プロトタイプ)し、ユーザーにテストをしてもらい、徐々に徐々に、その精度を上げていくというところです。これまでは、いかに完璧なものを作り上げるか、ということに焦点が当たっていましたが、デザイン思考ではそうは考えません。むしろ、小さな改善のプロセスを細かく繰り返していく方が早道であり、より精度の高いものに辿り着くと考えられています。

デザイン思考が取り入れられている背景

 いま、多くの企業でデザイン思考が取り入れられており、名だたる大学でもデザイン思考を取り入れた取り組みが行われています。世のなかは複雑化し、問題は多岐にわたります。私たち人間社会も多様化し、それだけニーズも多様化しています。かつては、おおよそ大半の人々に共通する問題やニーズ、というものがあったのかもしれません。しかし、状況は変化しています。正解がないような問題に対して、これまで遭遇したことがないような問題に対して、その解決を目指していかなければなりません。そのような状況において非常に重要になるのが、いかに本質的な課題を拾い上げるか、ということになるでしょう。この本質的な課題を拾い上げる、ということにおいてこそ、課題を抱える人や課題そのものに徹底的に焦点を当ててインサイトを洞察していくというデザイン思考の考え方を導入していく意味があるのです。

デザイン思考を学校教育に取り入れる意義

 今後、いっそう探究する学びの重要性は学校現場においても重要になってきます。多くの学校でも、様々な形で探究学習を取り入れていることと思います。ただ、探究するための思考法も含めて取り扱っている学校というのはそれほど多くないのではないでしょうか。探究する取り組みは行うけれど、そのプロセスは生徒任せ、ということは避けなければいけません。
 そこで、デザイン思考という思考スキルをひとつの型として教えていくということは、探究するスキルを獲得していくということであり、探究学習の質を上げていくためにも有効な考え方だと思います。
 加えて、もうひとつデザイン思考で良いと思うポイントは、試作とテストを繰り返していくという発想です。生徒たちは失敗を恐れ、正解を求めがちです。しかし、このプロセスを習得していくことで、失敗は次の学びへの貴重な材料だ、と捉えられるようになっていくのではないでしょうか。既にデザイン思考を導入されている学校で生徒たちの様子を拝見していても、はじめはその考え方に戸惑う様子も見受けられます。ただ、柔軟な子どもたちは、この考え方に慣れていくことで着実に変化していきます。
 スキルとマインドの転換を図っていく、この両面において、デザイン思考は有効なアプローチだと思います。ひとつの型として、学校で導入されることをお奨めいたします。

(2022年11月)