観点別学習状況評価とは?

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観点別学習状況評価

コアネット教育総合研究所 横浜研究室室長 福本雅俊

観点別学習状況評価は、生徒の学習状況を、定められた観点別に評価して分析的に捉えることを目指した評価のあり方です。既に小学校・中学校では導入が義務付けられている評価方法ですが、2022年度から施行される高校の新学習指導要領でも導入されることになり、高校における評価方法も転換を迫られることになります。

どのような「観点」で評価するのか

 新しい学習指導要領における「観点」は3つ設定されています。「知識・技能」「志向・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」です。以前の学習指導要領では、「関心・意欲・態度」「見方や考え方」「技能」「知識・理解」でしたが、学校教育法との整合性もついたことで、学校教育において身に着けさせるべき観点が、法規上も共通化されたということになります。
 なお、学習指導要領に示されている目標や教育内容には「人間性等」がありますが、いわゆる「感性や思いやりなど」は、「評価」になじまない側面であり、あくまでも個人内評価に留め評定の対象からは除外されています。(図1)


観点別学習状況評価の実施方法

 では、実際にどのようにして観点別学習状況評価を実施するのでしょうか。端的に言えば、各観点をA・B・Cの3段階で評価し、それを元に一定の基準に基づいて5段階の評定をつけるということになります。この時、A・B・Cの評価基準や、A・B・Cの評価を評定に読み替える際の基準などは、各校で設定して作成して良いということになっています。
 では、各観点はどのようにしてA・B・Cの評価を行うのでしょう。まず、「知識・技能」の部分ですが、ここは明確に従来型のペーパーテストによる評価でもかまわない、とされています。ただし、単純な知識習得のみを問う問題に限らず、概念的な理解を問うような問題も出題するなど、バランスに配慮するよう、付記されています。「知識・技能」を活用する能力も評価の対象に含めるということです。
 一方、「思考・判断・表現」や「主体的に学習に取り組む態度」はペーパーテストだけでは測るのが難しい部分になります。ここは、いわゆるパフォーマンス課題を課して評価するパフォーマンス評価、学習の履歴や作品を蓄積して評価するポートフォリオ評価が必要になる部分でしょう。ただ、当然評価基準を設けなければならないわけであり、その評価基準を明示したものが「ルーブリック」ということになるでしょう。
 「主体的に学習に取り組む態度」については、もう一点注意すべき点があります。それは、「自らの学習を調整しようとする側面」と「粘り強い取り組みを行おうとする側面」の2側面から評価することを心がける、ということです。(図2)「主体的に学習に取り組む態度」については、どうしても「授業中の挙手回数」や「授業中に居眠りをしていないかどうか」など、曖昧な要素で評価をされがちでした。そうではなく、「主体的に学習に取り組む態度」とはどのような要素を持った概念なのか、ということも示された形になっています。


現実問題として、どのように導入するか?

 行政機関から発信されている各種資料を読んでみると、「これまでの評価と大幅に変わるというわけではない」という主旨の表記を目にすることが多くあります。ただ、私学においては、おそらくこれまで中学でも独自の評価制度によって評価を行ってきた学校も多いことが予想され、どう対応すれば良いのか、という悩みを抱えている学校も多いのではないかと思います。
 現実的に考えて、厳密な形ですべての教科・科目の評価を観点別学習状況評価に切り替えるということを目指そうとすると、その労力は非常に大きくなると想定されます。では、どのように対応をしていけば良いのでしょうか。
 先ほども紹介した通り、「知識・技能」についてはペーパーテストで評価するということが認められています。「知識・技能」の活用力を測るような問題を定期考査に入れこむというような工夫はするにせよ、従来通りここはペーパーテストを軸にした評価で問題ないでしょう。「知識・技能」については、あとは、全体に占めるその割合と評価基準を決めることが必要になります。80%がA、50%がB、それ未満はCといった形です。
 一方、「思考・表現・判断」と「主体的に学習に取り組む態度」については、ペーパーテストだけでは測ることができません。このふたつの領域においては、ルーブリックに基づく評価を導入するということが必要になりそうです。その際、「知識・技能」の評価割合と併せて、その配分を決めることも必要になります。ただ、ここは特に法規上も取り決めがあるわけではありませんので、各校独自の考え方に基づいて評価することが可能です。学内での検討によって、独自性を発揮できる部分になるでしょう。イメージとしては、例えば図3のような形です。


注意すべきポイント

 全体の評価に占める各観点の割合もそうですが、観点別評価の評定への読み替え基準についても各校の判断に委ねられています。(図4)ここは、学校ごとに定めるということはもとより、教科や科目の独自性が表れる部分でもあります。「知識・技能」を重視する教科や科目もあれば、それ以上に「思考・判断・表現」を重視する教科・科目もあるでしょう。つまり、それぞれの基準の検討において、各校ならびに各教科のなかで十分に議論と検討を重ねて、明確な基準を設定する必要があるということです。
 高校における指導要録様式にも観点別学習状況評価を明記する欄が設けられることになります。一番避けなければならないのは、基準の設定が曖昧で整合性がつかない、という状況です。生徒に評価基準を明示するためにも、明確な基準を設定することが求められます。


なぜ、評価方法を変えるのか

  今回、なぜこのような評価のあり方の変更が試みられているのでしょう。そのヒントは、文科省から示されてる「学習評価改善の基本的な方向性」に読み取ることができます。そこには、「生徒の学習改善につながるものにしていくこと」と明記されています。
 これまでの評価は、「評定をつける」ということに重きが置かれていました。極端に言えば、評価は評定をつけて終わり、という状況になりがちだったのではないでしょうか。その状況を脱却し、指導側のPDCAサイクルを回すということに留まらず、学習者側のPDCAサイクルを回していくということを目指しているのが、今回の評価方法改善の目的のひとつなのです。(図5)
 評価することそのものに目的を置くのではなく、学習活動を改善することに目的を置き、さらにその先に評価そのものが学習になるような姿を目指していくというのが理想像です。混沌とした社会でいきいきと活躍する人材を育成していくために、各私学が、評価を含めた学習活動の改善を目指されていくことを期待しています。


参考資料

学校評価の在り方ハンドブック(国立教育政策研究所)
●小・中学校編(https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/gakushuhyouka_R010613-01.pdf)
●高等学校編(https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/gakushuhyouka_R010613-02.pdf)

(2021年9月)