「非認知能力」とは

3分でわかる!今話題の教育キーワード特集

非認知能力

コアネット教育総合研究所 神戸研究室室長 嘉村謙一郎

今回ご紹介するキーワードは、「非認知能力」です。
ややわかりにくい言葉ですが、近年、学校教育に関する著書や研究論文などで、目にする機会が増えました。私立学校の教育内容紹介の中でも、「つけたい力」の説明文の中で目にすることがあります。

「非認知能力」とは?

まず、この「非認知能力」についての一般的な解説をご紹介します。
「非認知能力」は、「認知能力」と並べて説明されます。

・認知能力  …数値化できるもの、テストで測定できる学力  ※IQ(知能指数)
・非認知能力 …上記以外のもの

(注)出典 Education Career「非認知能力とは?世界が注目、生涯の学びを支えるちから」

いかがでしょうか。簡単に言えば、日本で長く重視されてきた“従来型の学力=認知能力”です。
そう考えると、それ以外はみな「非認知能力」ということですから、漠然としています。
一般には、以下のような資質・能力が取り上げられることが多いようです。

・ねばり強さ  ・目的意識  ・自制心(忍耐力)  ・自律性  ・対話力  ・協働性 ・・

“従来型の学力=認知能力”と書きましたが、この「ねばり強さ」「目的意識」「自制心」などの資質・能力は、幼少期、子供時代に誰もが修得すべきものです。土台となる資質であり、学校生活の中でも、家庭における躾としても、世代を超えて大切に実践されてきたことだと思います。
ではなぜ、改めてこの「非認知能力」が注目されるのでしょうか。

「非認知能力」が注目されるのはなぜ? ‥背景理解

近年の大学入試改革、大学や高校までの教育改革が議論され、アクティブラーニング、探究的な学びなどの取り組みが推奨されてきた背景には、以下のような認識があります。

 

従来型の知識修得ばかりが偏重される教育では、自ら考え、主張し、行動できる主体性のある人材が十分に育たないのではないか
※この知識偏重教育を助長してきたのが「知識偏重型の大学入試」(特に私立文系学部)である、といわれてきました

そのため、大学入学後、また社会人になってから諸外国の人材とわたりあう資質・力を持つ人材が少ない。そのことが、日本の「一人あたり労働生産性」(※)が見劣りする要因の一つなのではないか
※米国の6割程度(日本生産性本部 調べ)

大学入試、大学教育、高校教育を総合的に変え、思考力・判断力・表現力・主体性・協働性等の資質を伸ばし、さらに生涯を通して学び、成長・活躍できる学校教育(人材育成)に転換したい

 

この流れに沿って、今年(2021年)からセンター試験にかわって「大学入学共通テスト」が導入されました。大学入試改革が象徴する日本の教育改革の背景に、「知識修得を中心とした従来型学力(=認知能力)だけでなく、社会人基礎力として必要な非認知能力も獲得して卒業してほしい」という教育関係者の思い、産業界、経済界等の期待(要請)があったことを知っておきたいと思います。
誤解がないように整理すると、上記は「認知能力よりも非認知能力が大事」という認識・主張ではありません。認知能力偏重を避け、「認知能力と非認知能力をバランスよく修得してほしい」という期待です。
認知能力、非認知能力という聞きなれない言葉で言われるとぴんときませんが、汎用的能力、社会人基礎力といった言い方で説明されれば、もっともな話ではないでしょうか。

キーワード解説は、このあたりまででいいと思います。
最後に、おまけとして自問自答Q&A形式で、「非認知能力」に関する疑問を整理しておきます。
時間がない方は、どうぞここまでで読み終えてください。

<おまけ>  自問自答Q&A 3つ

「非認知能力」のいくつかが、誰もがみな備えたい資質なのであれば、家庭教育や幼少期、義務教育段階で全員に修得させればよい。なぜ、そうなっていないのか?

「ねばり強さ、目的意識、自制心(忍耐力)、自律性などの資質を幼少期・学童期に身につけ、汎用的な能力、社会人基礎力的な資質・能力を全員に獲得させ、卒業させたい」、点に異論はありません。
しかし、望ましいことがすべて実現するわけではないのが現実です。個々の家庭環境にも違いがあり、また学齢が高まるにつれて、大学受験対策、テスト対策的な学習の必要性が高まり、目先の知識修得が優先されています。結果として、「知識習得(認知能力)偏重で、その他の人生に重要な土台となる力(非認知能力)を伸ばす機会が乏しい」状況に目をつぶらざるを得なかった。(‥特に進学重視の学校では)この状況を打開するために、国家的課題として学習指導要領の改訂はじめ、大学入試、大学教育、高校教育を総合的に変える教育改革(高大接続改革など)が進行中です。
ただし、学校教育改革では、家庭教育環境の差異(個人差)の解消には届きません。教育政策として、100%の解決は難しいとしても、何らかの対策が必要ではないでしょうか。

「非認知能力」が、「自ら人生を切り拓き、生涯を通じて豊かな生活を得るためには幼少期から非認知能力を鍛えておくことが・・」という文脈で語られることが多いのはなぜか?

ねばり強さ、目的意識、自制心(忍耐力)、自律性、あるいは、精神力や体力の大切さを身に染みて実感するのは、社会人になり、仕事や生活の中で様々な試練や困難に直面したとき、という方が多いためではないでしょうか。私自身は、「学生時代にもっと学んでおけばよかった‥」と思ったことは、一度や二度ではありません。同時に、「学生時代に毎日、部活動で動き回り、汗を流したおかげで体力だけは‥」と思ったことも、一度や二度ではありません。自分が社会人になって苦労し、後悔し、体感したこと。また、幸運だったと親に感謝したこと。この思いが、「できれば我が子には…のような経験をしてほしい、大人になるまでに、できるだけ早い段階で…の力をつけてほしい」という親心となります。この、“大人になってはじめて実感したこと(=体験談・反省・教訓)”がそうさせるのだと思います。

「非認知能力」は、どうすれば鍛えられるのか?

これが最大の難問だと思います。申し訳ありませんが、私にはそれにお答えする知見・経験・能力がありません。これに関わる専門書や研究レポートなどは多くあると思います。ぜひ精選してください。
一つ私見として考えているのは、“挑戦なくして、成長なし”という真理です。認知能力であろうが非認知能力であろうが、この鉄則は変わらないと思います。その挑戦に導く環境づくりが、すべての家庭(親)の、そして学校の課題であり、違い(成長差異)を生む鍵なのではないでしょうか。