形成的フィードバックの重要性
次期学習指導要領の改訂に向けた議論では、学習評価の在り方についても検討が進められています。その中で、中央教育審議会 教育課程部会の総則・評価特別部会では、「形成的評価」の充実が重要な論点の一つとして取り上げられています。
同部会の「学習評価の在り方について」では、形成的評価について、学習の途中で適切なアセスメントとフィードバックを行い、教員の指導と児童生徒の学習の調整を促すことが示されています。 その中で、学習者が自らの学習を振り返り、次の学びにつなげるために重要な役割を果たすのが「形成的フィードバック」です。
学習を改善するために必要な情報
形成的フィードバックについて、教育心理学者のValerie J. Shuteは、2008年に発表した論文「Focus on Formative Feedback」において、「学習者の思考や行動を変化させ、学習を改善することを意図して、学習者に伝えられる情報」と定義しています。
つまり、形成的フィードバックで重要なのは、単に学習の結果を伝えることではありません。フィードバックを受けた学習者が、自分の学習の状況を捉え、その後の思考や行動を変え、次の学びにつなげていくことにあります。
では、学習者が自分の学習を改善していくためには、どのような情報が必要なのでしょうか。
福岡工業大学教養力育成センター教授の土屋麻衣子氏は、形成的フィードバックを「目標までのギャップを埋める」ための情報と説明し、「学習者の目標」「目標に対する現状」「目標達成の方法」の3つの側面が必要であるとしています。
つまり、「どこを目指すのか」「今どこにいるのか」「目標に近づくために次に何をするのか」を学習者が捉えられるようにすることが、形成的フィードバックの重要なポイントになります。
学習者の次の行動につながる伝え方
では、形成的フィードバックを効果的に行うためには、どのような点を意識すればよいのでしょうか。
Shute(2008)は、多くの先行研究をもとに、形成的フィードバックを効果的に行うためのさまざまな指針を整理しています。ここでは、その中から学校現場で特に意識したいポイントを2つ取り上げます。
- 学習者自身ではなく、課題や学習内容に焦点を当て、具体的に伝える
「よくできた」「能力がある」といった学習者自身への評価ではなく、課題や学習内容に焦点を当てます。そのうえで、学習目標に照らして何ができていて、どこに課題があるのか、次に何を改善すればよいのかが分かるよう、具体的で明確な情報を伝えることが重要となります。
- 学習者や課題に応じて、フィードバックの与え方を考える
Shute(2008)は、フィードバックの機能として、何を修正する必要があるかを具体的に示す「指示的なフィードバック」と、コメントや提案などを通して、学習者自身による修正を支援する「促進的なフィードバック」を紹介しています。また、フィードバックを行う際には、学習者の特性や課題の性質などを考慮する必要があるとしています。つまり、学習者や課題に応じて、どのような情報をどのように伝えるかを考えることが大切となります。
例えば、テストを返却する際、「80点でした」と点数だけを返すのではなく、「今回の目標は○○でした。○○はできていますが、△△にはまだ課題があります。次は□□を確認してみましょう」と、できている点や改善すべき点を具体的に伝えることが効果的な形成的フィードバックになります。
また、改善方法を直接示すだけでなく、どこを見直すとよいかを問いかけ、学習者自身が次に何をすべきかを考えられるよう促すこともポイントになります。
このように、形成的フィードバックでは、学習者が自分の現在地を捉え、次に何をすればよいかが分かる情報を伝えることが重要です。その方法も一つではなく、学習者や課題に応じて考える必要があります。
教員が「何を伝えるか」だけでなく、そのフィードバックによって、学習者の次の思考や行動がどう変わるのかという視点を持つことが、形成的フィードバックを実践する第一歩になるのではないでしょうか。
