「品格あるたくましい男子」の育成に力を注ぐ同校。問題解決や協働の能力を育てるツールとして、今年度より、タブレットを一人一台配布し、アクティブラーニング型授業への積極活用を始めています。導入の経緯や利用の状況、今後の展望について、広報部の髙井俊秀先生と髙田昌輝先生、コンピュータ係主任の冨岡雅先生にお話を伺いました。
―Windowsタブレットを導入されているということですが、なぜそうされたのですか?
社会、現場で本当に役に立つリテラシーを育てたかったからです。単なる調べ学習ならiPadやスマートフォンでも十分ですが、それでは生徒にとって本当に「残る」学びができるのか、という問題意識を感じていました。
Surface3を選んだのは、キーボードがついており、よりパソコン環境への接続がしやすいと考えたからです。タッチペンを使い授業中の記入をしやすくしたほか、ワイヤレスディスプレイアダプタを使うことで、家庭学習においても大きな画面につないでプレゼンの練習ができるなど、新しい使い方に挑戦しています。
教室には、パイオニア製の70インチ液晶型電子黒板を配備しました。画質のきれいさと画面の大きさがポイントです。
<電子黒板を使用した授業>
大画面・高画質で教室の後ろからでもクリアに見えます。授業支援アプリを活用し、生徒のタブレットの画像を共有。解法の比較や添削を行って、生徒の「そうだったのか」という気付きを促します。
―このような大きな改革を成し遂げるには、学校一丸となって取り組むことが必要だと思いますが、どのような体制で臨まれたのですか?
1年間の準備期間を経て今年4月から使い始めたのですが、最初には校長先生の決断がありました。若手(30~40代)の先生を中心に授業改革委員会を作り、ICTを活用したアクティブラーニング型授業を試行錯誤し、研究授業を開いてアイデアを交換しています。管理職の先生方もサポートしてくださり、改革委員会の先生方が孤立することなく、理想的な体制で教育改革を進められています。
本校は、地域の人がお金を出しあって作った学校です。単なる進学実績だけでなく、問題解決力と協働性を持った、本当の意味で社会に役立つ人材を育てるミッションを負っています。そのためには、アクティブラーニングの推進が必要であり、ICTはそのためのツールとして適するものという考えを持っています。
―ICT機器を導入して、学びの場はどのように変わりましたか?
ロイロノートによる学習の共有をしているのですが、真面目にやっていないと他の人に見えてしまうので、生徒たちの集中度、モチベーションは目に見えて上がりました。教師としても、生徒がどこで躓いているのかわかり、個別の理解度把握にも役立ちます。「ここで間違えてほしいんだ」というところで間違えてくれるので、授業の設計もしやすいですね。40対1の授業をしつつ、質的には1対1の授業に近付けていきたいと考えています。生徒達も、間違えることを恐れず、次はどうしたら間違えないかを考える意識が芽生えてきました。
Office365の機能を使い、学習目標の共有、資料の事前配布をしています。いわゆる反転学習の実施ですね。板書時間が削減されたことで、授業時間の4割を効率化し、密度の濃い授業づくりにも成功しました。
プレゼンテーションの授業も増えました。中3では、大塚製薬や旭化成などの有名企業とコラボし、企業インターンを実施しています。企業からの課題を頂いて、解決策を考え発表するのですが、そのやりとりもタブレット上で完結でき、調べ学習も可能です。家庭学習でプレゼンの練習をする姿を見せることで、保護者の方々の意識も変わってきたと感じます。
<タブレットを使用した授業風景>
タブレットを通して教材や小テストを配信。板書や印刷の手間を省くことで授業の効率化を図ります。デジタルネイティブならではの柔軟さで、あっという間に機器を使いこなすようになりました。
―今後の活用の展望についてお聞かせください。
改革委員会を中心に、内部で研究授業を企画し、その成果を授業改革通信として出すなど、情報発信を進めています。ノウハウの共有はもちろん、先生と生徒のコミュニケーションの質も少しずつ変わってきました。
ロイロノート、Office365の他に、「xSync(バイシンク)」を入れています。ロイロノートは使いやすくICTになじみの薄い教員でも使える一方、xSyncは機能面で勝ります。一つに絞らず、色々な選択肢を試す中で、みんなで使いやすいメソッドを考えていきたいですね。
新たな使い方としては、スチューデントフォーラム的な活用を模索しています。興味がバラバラな生徒たちに対し、学校ができることは何なのか。SNSが盛んに用いられる現状を考えたとき、学校内でも、共同活動ができるプラットフォームを提供し、その中でイベントや学校生活を運営させる経験は、生徒達の将来に生きるのではないでしょうか。
いかがでしたか。若手の先生のエネルギーを生かし、管理職の先生方が「どんどんやってみろ」と旗を振る。理想的な環境で、新たな挑戦が次々と生まれています。足立学園の今後の取り組みに期待が高まりますね。
(2016年6月14日取材 聞き手:コアネット教育総合研究所 奥田)
◆教育ICT Tips
・ロイロノートスクール:株式会社LoiLo提供の学習支援アプリ。いくつものカードをつなげることで、思考の整理をしたり、そのままプレゼンテーションを行ったりすることができる。動画や音声にも対応。クラス全体でカードを共有し、他人と答えを比較することも簡単にできる。
・xSync:パイオニアVCが提供する学習支援ソフト。電子黒板と連動し、教材の配布、書き込み、回答の共有などが直観的な操作で簡単に行える。電子教科書との連動も容易。
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