模擬国連
解説:コアネット教育総合研究所 和田真洋
みなさまは「模擬国連」という活動をご存知でしょうか?言葉の響き的に「なんとなく、国連の物まね?」と推測するかもしれませんが、その実態は、世界のトップ大学、アメリカのハーバード大学に由来しているそうです。では模擬国連ではどんなことが行われているのでしょうか。
(1)模擬国連とは
模擬国連とは何か、日本模擬国連のHPには以下のように書かれています。
「模擬国連とは一人一人が世界各国の大使となり、実際の国連会議で扱われている問題を話し合うことによって、国際問題の難しさを理解すると共に、解決策を探る活動です。」(HPより抜粋)
模擬国連では、参加者1人1人がある国の大使となり、国連会議のシミュレーションを行います。担当する国は必ずしも自分の出身国であるとは限りません。参加者は自分が担当する国の政策や歴史、外交関係などの知識をしっかりと理解した上で、実際の国連会議同様に、議題として出される国際問題についての議論や演説、他国(他の参加者)と交渉しながら、決議の採択を目指していきます。
模擬国連は今から約90年前の1923年に、アメリカのハーバード大学で行われた「模擬国際連盟」に起源をもっています。その後、世界中に広まり、日本でも1983年より当時上智大学で教授を務めていた緒方貞子さんにより「模擬国連委員会」が設立され、大学生を中心として活動が行われてきました。2010年からは「日本模擬国連」が発足し、全国規模の一団体としてまとまっています。
現在では、関東で5つ、関西で2つの研究会、その他北陸や九州などの支部も発足し、日々多くの学生が模擬国連活動に取り組んでいます。世界で見ると、米国や欧州を中心に20万人以上の大学生や高校生が、授業や課外活動の一環として模擬国連に参加し、世界35カ国で年間400以上の模擬国連会議が開かれているそうです。
(2)高校生の模擬国連
模擬国連は、高校生においてもその活動が行われています。近年では、千葉県にある渋谷教育学園幕張高等学校の生徒が、2014年5月にニューヨークで行われた国際模擬国連大会で、日本人初の最優秀賞を受賞しました。
日本における高校生の模擬国連は、2007年より本格的に開催されています。毎年11月には東京で「全日本模擬国連大会」が開催され、優秀賞を獲得した5チーム(1チーム2名)が、翌年5月にニューヨークで開催される「国際模擬国連大会」に、日本代表として派遣されています。
東京で行われる全日本模擬国連大会では、まず一次審査として、参加全チームが日本国大使となって、約2か月間をかけて設定された議題に対する意見書を作成します。その意見書の書類審査に通過した約50組が、模擬国連の本戦へと駒を進めることができます。
本戦では大学生の模擬国連と同様に、割り振られた自分の担当国を研究し、その国の大使になりきって、決議案に自国の意見を盛り込むために議論を行います。本戦での公用語はもちろん英語です。ただ、英語ができれば優勝できるかというとそうではないようで、他国(他の参加者)との問題解決の姿勢が見られているようです。
(3)高校生における模擬国連のねらい
最後に高校における模擬国連の活動について、高校生における模擬国連をサポートしているグローバル・クラスルームのHPには下記のように書かれています。
「議題を調べることによって現代世界のさまざまな課題の理解を深めるだけではなく、さまざまな国の大使を担当することによって複数の視点からその課題を捉える力をつけることができます。また、決議を作る文章力、自国の主張を伝えるスピーチ力、多くの賛成を得るための交渉力を身につけることができます。」(HPより抜粋)
これからのグローバル社会では、アウトプットのスキルとして、プレゼンテーションやアサーション、自己表現力などが必要になってきます。また同時にインプットにおいては、先入観を持たずに人の話を聞く力などが求められます。擬似的にでも、模擬国連というグローバルな環境で他国の人とコミュニケーションを図ることによって、理論ではなく体験として、今後のグローバル社会で活躍するための多くのことを学ぶことができるのではないでしょうか。
<参考文献>
(2014年6月)