スーパーグローバルハイスクール(SGH)
解説:コアネット教育総合研究所 所長 松原和之
「超・地球的高校」と訳すのでしょうか!? 2014年3月28日、文部科学省は2014年度「スーパーグローバルハイスクール」指定校を発表しました。初めての指定となる今回は、全国から246校が応募し、56校が指定されました(競争倍率は4.4倍)。内訳は、国立4校、公立34校、私立18校でした。
(1)スーパーグローバルハイスクールとは
当初、100校指定されると計画されていましたが、途中から文部科学省は50校と言い換えました(予算の関係だそうです)。その時点で、私は、各都道府県で公立高校代表が1校ずつ選ばれて、私立は出る幕がないのではないかと危惧していましたが、結果的には私立も18校が選ばれました。官の中での出来レースではなく、きちんと審査・評価した結果だと思います。
文部科学省さんもやるじゃないですか!
冗談はさておき、スーパーグローバルハイスクール(略称SGH=エス・ジー・エイチと呼びます)とは何なのか。子どもを高校に預ける親から見て、それらの学校をどう評価すればよいのかを解説していきたいと思います。
まず、文部科学省が公表しているSGHの目的と事業概要を記しておきます。
【目的】
急速にグローバル化が加速する現状を踏まえ、社会課題に対する関心と深い教養に加え、コミュニケーション能力、問題解決力等の国際的素養を身に付け、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーを高等学校段階から育成する。
【事業概要】
際化を進める国内の大学を中心に、企業、国際機関等と連携を図り、グローバルな社会課題を発見・解決できる人材や、グローバルなビジネスで活躍できる人材の育成に取り組む高等学校等を「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に指定し、質の高いカリキュラムの開発・実践やその体制整備を進める。
つまり、SGHは、英語力を育成する高校を指定するのではなく、グローバルなビジネスで活躍できる人材を育成する高校を指定するということです。そして、その要素として考えているのが、社会課題に対する関心、深い教養、コミュニケーション能力、問題解決力などです。これらの力を身につける教育プログラムを導入しようという高校を指定したということです。
ちなみに、文部科学省は2002年度から2009年度まで「スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール (SELHi=セルハイと呼びます)」を指定していました。こちらは、英語教育を重点的に行う学校を指定していたので、性格が異なります。今回SGHに指定された56校のうち11校が以前SELHiにも指定されていました。
(2)スーパーグローバルハイスクール指定校
それでは、SGHに指定された56校をご覧ください(下記リンク先PDF「スーパーグローバルハイスクール指定校一覧」※)。実は、都立高校は1校も選ばれていません。公立(道府県立)高校のラインナップを見ると、公立トップ校も選ばれていますが、どちらかというと必ずしもトップ校ではなく、二番手・三番手校が選ばれています。また、公立中高一貫校もあります。私立も、いわゆる超難関校ではなく、以前から国際教育、グローバル教育を特色としていた学校が選ばれているようです。
つまり、SGH指定により、いわゆる難関校、トップ進学校がさらに魅力をつけるというよりは、大学進学実績や偏差値という従来型の軸ではない新しい魅力を持つ学校がフィーチャーされていると考えていいと思います。
SGHの目的は「グローバル・リーダーの育成」という一つなのですが、様々なアプローチがありますので、学校ごとに取り組む教育プログラムが異なります。リンク先PDFに記載された「構想名」だけでは分からないかもしれませんが、各学校の取り組みをよく調べて、ご家庭の教育方針に合うか合わないかを判断したほうがいいと思います。
たとえば、渋谷教育学園幕張は「多角的アプローチによる交渉力育成プロジェクト」という構想名です。関西学院は「国際化重点大学との高大連携による実践的課題解決能力の育成」です。具体的にどのような力を身につけさせるのかがイメージつきますよね。
もちろん、SGHとしての取り組みは、これらの学校のすべてを表しているわけではなく、ごく一部の教育プログラムですので、SGH指定校であっても、高校全体の教育目標や教育方針を見て学校選びをしていただきたいと思います。
SGHの指定は原則5年間です。各指定校は、この間に教育プログラムを実験的に行い、研究開発をしていくことになります。今後、これらの教育プログラムがどのように教育成果につながるかは分かりません。その意味では実験的取り組みなのです。実験的ではあっても先進的な取り組みをしている学校を選択するのがいいのか、従来からの安定した教育を行っている学校を選択するのがいいのか、そこは家庭の方針だと思います。しっかりと考えて選んでください。
ちなみに、文部科学省は、今回の指定からは外れたけれども、グローバル・リーダー育成に資する教育の開発・実践に取り組む高校を「SGHアソシエイト」として54校(国立6校、公立27校、私立21校)発表しています。応募が思いのほか多かったので、「惜しい」学校を準指定にしたということでしょう。ご参考までに一覧を載せておきます(下記リンク先PDF「SGHアソシエイト一覧」※)。
画像をクリックするとPDFファイルが開きます。
※出典)文部科学省 平成26年度スーパーグローバルハイスクールの指定について(平成26年3月28日)
(2014年4月)