スクール・ミッション
スクール・ポリシー
コアネット教育総合研究所 副所長 川畑浩之
「スクール・ミッション」とは、学校の存在意義・存在価値を発揮するための「考え方」と言えるでしょう。高校進学率が99%となり、ほぼ義務教育となりました。社会の変化に対応して、高校の教育は日々アップデートしなければなりません。教育の「共通性の確保」と「多様性への対応」という相反する考え方を実現させなければなりません。特に、多様性への対応という点では、科・コースの編成だけではなく、1人ひとりの進路や学力や志向に柔軟に対応しなければなりません。高校での学びが、その後の人生に意味のあるものとなり、生徒の人生を切り拓く素地になることが期待されます。
私学の場合、「建学の精神」があり、そのもとで教育理念・教育目標が決まっています。当然ながら、社会の変化に対応するように、「建学の精神」の現在化(今の社会に対応した解釈)を行い、教育理念や教育目標を再定義しなければならない。今回はそのような状況を踏まえて「スクール・ミッション」の再定義が必要であると言われています。
スクール・ポリシーとは、大学で導入されている「3つのポリシー」をモデルとしています。
【大学の3つのポリシー】
ディプロマ・ポリシー:卒業に関する要件の方針
カリキュラム・ポリシー:教育課程の編成の方針
アドミッション・ポリシー:入学試験の方針
3つのポリシーは、組織内はもちろんのこと、学外にも周知させることが必要であるとされています。教育の成果を高めることや受験生の大学選びに活用されることが目的となります。この点は、高校のスクール・ポリシーも同じことです。
ただ、高校では「ディプロマ・ポリシー」という名称ではなく、「グラデュエーション・ポリシー」という名称となりました。これは、「グラデュエーション・ポリシー」が「育成を目指す資質・能力に関する方針」となっており、大学での「ディプロマ・ポリシー」とは異なります。
グラデュエーション・ポリシー:育成を目指す資質・能力に関する方針
カリキュラム・ポリシー:教育課程の編成及び実施に関する方針
アドミッション・ポリシー:入学者の受け入れに関する方針
「これからの高等学校教育について」(令和2年11月25日 文部科学省初等中等教育局参事官)引用
さて、「スクール・ミッション」と「スクール・ポリシー」はどのように策定するとよいでしょうか。当然ながら、決めるということは、文字化されて校内外に周知徹底されることです。そして、その方針に基づき教育が展開されていかなければなりません。
ポリシーを検討するためのアプローチ方法については、建学の精神から考える「演繹法的なアプローチ」と実践している教育活動から考える「帰納法的なアプローチ」があります。どちらの方法でも良いと思いますが、策定にはできるだけ多くのメンバーを巻き込みながら作成することをお勧めします。その理由は当事者意識を涵養でき、策定したスクール・ポリシーに基づいた教育活動を実践するメンバーになっていくからです。
それぞれの学校組織にあった策定方法があると思いますが、「自校では生徒にどのような資質・能力をつけさせるのか」「今後社会で求められる力を生徒どのように身につけさせるのか」といった軸をしっかりともちながら検討を進めると良いと思います。
(演繹法的な手法と帰納法的な手法の対比)
(2022年3月)