セミナーレポート 2017年春季 私学経営セミナー 「2017年入試総括とこれからの私学教育トレンド」

  • 3月9日(木)、大阪にて、日能研とコアネット教育総合研究所が私学経営セミナー「2017年入試総括とこれからの私学教育トレンド」を共同開催しました。
    今回は過去最多の124名もの私学の先生方にご参加いただきました。
    お忙しい中ご参加いただき、ありがとうございました。

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    ■内容抜粋■
    第1部 2017年関東、関西の中学入試総括と日能研が注目する私学教育トレンド

    「これから日能研が注目する私学教育トレンド」日能研関西代表 小松原 健裕

    中学入試の学校選択において、日能研は受験生保護者に対し、全ての学校が一流校だから、学校の中身を見てください、とお知らせをしているが、偏差値の力は大きく、偏差値表で相対的に下のレンジに掲載される学校は、こちらからお勧めしてもあまり見てもらえないという現実がある。受験生保護者には、各校のアピールポイントが似ているように見えてしまい、学校選択の決め手にならず、結局偏差値に頼ることになってしまうからだ。

    我々はこのままではまずいと感じ7つの観点から私学選びができる「私学の魅力別ガイド」をつくったこれをきっかけに、色々な学校を訪問してもらうので、私学の先生方はそのきっかけを大切にし、貴校の特徴を、自信を持ってアピールしてほしい。

    「2017関西中学入試総括」 日能研関西進学情報室長 森永直樹

    2017年の近畿圏における小学6年生全体の数は、昨年から約5000人減った。この傾向は2014年から続いており、これからもしばらく続く。中学入試において、中学受験率は3年連続上昇となっている。ただ、受験者数自体は約400名減っているので、今後受験率をもっと上げないと、受験者数の増は見込めない。

    大きく減ったのは兵庫県。中でも女子が減少。その影響もあり受験率も低下。大阪については、受験率そのものは上がっているが、二極化が進んでいる。京都は堅調。受験生は減っておらず、受験率も高いところを維持している。

    「2017年関東入試概況と私の注目点」日能研関東 社長 小嶋隆

    自身が公立中高を卒業し、かつ成功している人は、私学を知らないかつ私学を選択しない傾向にある。我々は、そのような方達にも私学の良さを伝えていくべき。

    私学で行ってきた国際教育、リーダーシップ教育、ICT教育などには、ほとんどの私立とともに、公立も取り組み始めている。他校との差別化をはかるにはその中心にストーリーが無いと、「あれもこれもやっている」という印象しか残らない。保護者層をよく把握した上で、自校が何を武器として持っているかを冷静に見直してはどうか。

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    第2部 21世紀の学びへの提案

    新教育推進室室長 川畑 浩之
    “時事問題を多角的にとらえる力”を養成する「社会科ミニシンポジウム」
    豊島岡女子学園中学校・高等学校

    豊島岡女子学園では教科横断型の授業「社会科ミニシンポジウム」を6年間続けている。テーマは「東日本大震災」から「結婚について」まで幅広い。社会科ミニシンポジウムの目的は、「社会の総合的な見方を身につける」「考えたことを発信できる」「正解のない問題に自ら正解を創造する力を育てる」こと。このようなプロジェクトでは、教科横断でプロジェクトチームを作り試行しながらカリキュラムマネジメントを行うのが良いのでは。

    横浜研究室室長 福本 雅俊
    コミュニケーション力・コラボレーション力を身につける「デザイン思考」授業
    逗子開成中学校・高等学校

    逗子開成中学校・高等学校では、コミュニケーション力、コラボレーション力をつけることを目的とし、高校1年生に対し、デザイン思考の授業を行っている。身につけさせたい力を具体的なスキルとして認識し、外部の専門機関、コーディネーターと連携しながら生徒に教育の機会を与えること。子どもたちの視野を拡げ、本当の意味で「自立」した人材を育てるために、一番良い方法を考えてみては。

    神戸研究室室長 嘉村 謙一郎
    創造性、問題解決力、対話力を伸ばすロボット教育
    追手門学院中学校・高等学校
    ゲスト登壇者:追手門学院大手前中学校・高等学校 福田哲也教頭

    追手門学院大手前中学校・高等学校では中学3年間を通してロボット教育を行っている。ロボット教育の魅力は、たくさん失敗する中で、創造力や問題解決能力を育てること、生徒が先生になり、教えるという形で進められること、プログラミング力ではなく、創造性、問題解決力、対話力につながること。ロボットづくりは人づくりと言える。
    子どもたちがいかに学ぶかが、これからは大切になる。そのために社会資源の活用も大切。校内で新教育開発チームをつくり、検討を進めてはどうか。

    総括:コアネット教育総合研究所 所長 松原和之

    「21世紀型の学び」をタイトルにしたのは、人間に必要な「知」とは何かをあらためて問い直す時期に来ているから。ロボットに使われるのかという時代がすぐそこに。

    PISAの結果を見ると、日本の高校生の学力は世界一と言える。では日本の国際競争力、日本人の幸福度は、世界一か?というと、そうとは言い切れない現実がある。これから学校に期待するのは「新しい時代を読む(どんな生徒を育てたいかを再定義する)」「コンピテンシー・ベースのカリキュラム(教科横断で身につける資質、能力を考える)」「社会とのかかわりの中で学ぶ場をつくる(すべてを抱え込まないで外部資源を活用する)」の3点。先生方が思う以上に、世の中のは学校に対して協力的なので、外部との連携も視野に入れながら進めてほしい。

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