学校改革への道『こうしたら学校は変われる!』(1)

  • シリーズ概要
    学校改革の必要性が叫ばれながらも、実際にはなかなか学校は変わりません。その理由は組織風土が変わらないからです。カリキュラムや指導法、様々な活動を変えるとともに、組織風土や体質を変えていくアプローチが必要です。ここでは、組織風土改革の進め方をご紹介します。

    中高マネジメントReport

    第1回 「あなたの学校の組織健康度チェック」

    <主な内容>
    学校の組織健康度チェック/学校のビジョンづくり/基本戦略と計画づくり/組織の体質改善

    組織の健康チェックをしてみよう

     一般に学校改革というと、カリキュラムや指導法、行事、課外活動など、教育内容・教育活動を変えることを指すと思います。私立学校であれば、生徒募集の方法などを変えていくことも大切なことです。
     しかし、そういった表面上の変化とは別に、とても大切なことがあります。それは教師の意識変革とそれを支える学校組織の体質改革です。教師がやる気を出して、自ら動かない限り、すべての計画や施策は画餅になります。そして、もっとも難関なのも、この組織風土の改革です。風土さえ変わってしまえば、具体的な施策はどんどん進みます。このシリーズでは、主に組織風土の改革を中心にお話を進めていきたいと思います。

     

     早速ですが、貴校の組織の健康診断をしてみたいと思います。以下に挙げる項目にイエス、ノーで答えてみてください。少しでもその病状に思い当たる節がある方はイエスにつけてください。実際には、経営者の方が気がつかないうちに病状が悪化していることの方が多いですから...。

     

    <学校の問診票> Yes/No
    学校の経営方針をよく理解していない教職員がいる。 □ □
    教職員の間の教育に対する価値観がバラバラになり始めている。 □ □
    教職員の仕事の進め方が計画的でない。 □ □
    一所懸命働いて成果を出した人をきちんと評価することができない。 □ □
    クラブの顧問を引き受ける教員が減ってきている。 □ □
    学年、校務分掌の人事配置は毎年悩む。 □ □
    教職員は学校の外に出ることが少ない。 □ □
    教職員の成長が目に見えない。 □ □
    教職員から新しい指導法や新しい提案などが出てこない。 □ □
    10 就業時間が終わると直ぐに帰る教職員がたくさんいる。 □ □
    11 職員会議では、一部の決まった人だけが発言する。 □ □
    12 教職員が校長や理事会に対する不満を口にしているようだ。 □ □
    13 どうせ言ってもムダと、あきらめている教職員が多い。 □ □
    14 会議で評論家のような発言をする教職員が増えた。 □ □
    15 教職員同士のコミュニケーションが以前と比べて減ってきている。 □ □
    16 ものごとを決める場合、すべて校長や理事会が決める。 □ □
    17 部長・課長や主任にリーダーシップが感じられない。 □ □
    18 何か問題が起きても、誰も責任をとらない。 □ □
    19 教職員は、決められた仕事以外はやりたがらない。 □ □
    20 教員が事務作業に追われ、本来の仕事ができない。 □ □

     

     さて、いかがでしょうか?イエスにチェックがいくつ付きましたか?10個以上にチェックがついている場合は、かなり病状が悪化しています。該当する学校の方は、現実に学校を変えようとしてもなかなか進まないというお悩みをお持ちではないでしょうか。
     始めの10項目は、教職員の意欲と成長にかかわる問題です。この10項目にイエスのチェックが多い学校は、教職員にやる気がみられず、また教職員が成長していないという課題を抱えていると思います。最も目に見えてわかるのは10番です。やはり、伸びている学校ほど遅い時間まで職員室の電灯がついています。学校によっては、4時半になるとほとんどの先生方が帰って行くところもあります。学校で仕事をしている時間だけが教職員のやる気のバロメーターではありませんが、教員という仕事はやってもやっても果ての無いものだと思います。それを毎日一定の時間で切り上げることができるということは、意欲が不足していると思われても仕方のないことだと思います。ある学校では、夕方近くなると全く仕事をしていない先生がいらっしゃるそうです。どうしてか聞いてみると、「今から仕事をすると、就業時間内に終わらないから」という答えが返ってきたそうです。ここまでひどくはなくても、同じようなことが多くの学校でも起こっているのではないでしょうか。

    教職員のコミュニケーションは活発か

     次の11~15番は、教職員のコミュニケーションの問題です。この部分がいわゆる風土をつっくっているところだと考えていただいていいと思います。組織風土がおかしくなっている学校のほとんどが、教職員同士のコミュニケーションが滞っていることが原因になっています。情報の伝達はあるものの、それが一方通行になっていて、“議論”は行われていないことが多いようです。職員会議も報告事項が多く、決定を要する事項についても、議論が行われるというよりは、ごく一部の限られた教員が評論家のような意見を言うだけで、最終的にはもとから考えられていた結論通りに校長が決裁するという形式だけの会議をやっている学校が多いようです。こういう雰囲気ができると、「言ってもムダ」とか「言うだけ損」という風土ができあがり、ますますコミュニケーションが行われなくなっていくのです。
     もともと教員は、教室では一人で仕事をしており、他の教員と協働する必要がありません。また、昔ながらの職人気質のところがあり、少し困ったことがあっても、他の教員に相談したり、話し合ったりはしないという特性があるようです。ですから、無理にコミュニケーションをとる必要性がないのです。もちろん、世間話をしたり、帰りにお酒を飲みながら気楽な話をするということは無くはないようですが、それは本当の意味でのコミュニケーションにはなっていません。きちんと仕事上の話が日常的に行われるようにならなければ意味がありません。

     

    責任と権限が明確になっているか

     16番以降は、仕事のやり方にかかわる問題です。即ち、組織の責任・権限の問題、意思決定ルールの問題、役割の明確化や仕事の分担の問題などです。学校組織は企業と比べていわゆる組織・人事の運用ルールが未整備です。責任・権限がすべて校長に一点集中するような構造になっていたり、仕事の分担は、細かい作業レベルに分解して個々に分担させる方法をとっているところがほとんどです。このことによって何が起こるかというと、教職員から新たな発想や行動が生まれず、成長もしないということなのです。人間誰しも自分で責任持って行動してこそ真剣になり、考えて行動します。ところが、責任も権限も持たず、割り振られた仕事だけをしていればいいような組織の仕組みになっていると、やる気も出ないばかりか、組織として新たな何かを生み出すことができません。したがって、自然にまかせている限り、組織が変わることもないのです。

     

    個人の危機意識は全体にはつながらない

     組織風土の問題は、様々な要因が絡み合っていますので、簡単には解決できません。個人の意識の問題とは違う次元のものと考えていただいた方がよろしいかと思います。と言いますのも、多くの学校で、「私学にとって厳しい時代になっている」ことは教職員の方々も認識しています。恐らく、「できることなら何とかしたい」とも思っています。ところが、実際に改革に向けて動き出す事例はほとんどありません。これはどうしてでしょうか。
     ここに、組織風土の根深い問題があります。つまり、危機意識を持っている個々人がお互いにコミュニケーションをとることが少ないので、この意識にズレが生じている可能性が高いのです。と言うよりも、お互いに相手が危機意識を持っていることさえ分かっていないのです。つまり、耳に入る情報が少ないですから、「自分だけがこんなこと考えているのだろうか」「これは杞憂かもしれない」という自分の意識の中で“逃げ”をつくってしまうのです。
    そうなると、「そろそろ学校の経営も危ないと思うけど、そんなこと言ってもしょうがない」とか「自分がこういうことやれば、少しは受験生も増えると思うけど、やるだけ損だな」という感じになってしまうのです。

     

    学校改革の第一歩は“危機意識の共有”

     学校改革で最初に行うことは、“危機意識の共有”です。教職員それぞれが思っていたことは、他のみんなも思っていたことであって、杞憂でも何でもないことを共通認識するのです。この場合、ある程度客観性のあるデータなどを用いながら、現在自校の置かれている位置づけをきちんと確認する必要があるでしょう。
     客観データには、マクロとミクロの二つがあります。マクロというのは、もちろん巨視的という意味ですが、「一般的な受験生の動向はどうなっているのか」といった直接的なものだけでなく、「社会における私立中学校や高校の位置づけや求められる役割」、「今後世の中がどのように変わっていくのか」といった大きな視点でも見ておく必要があります。
     受験生が減ってきていることが目前の問題になっているので、「今後10年間の小学6年生の人数の予測」といったデータを俎上に載せることは多いと思います。「首都圏の小学6年生は来年8千人も減ります。これは大変な事態です」というデータはもちろん重要なのですが、これはいくら言ってみたところで、分かりきっていることですし、どうしようもないという感じです。これは、どちらかと言えば、後で延べるミクロに活かすべきデータだと思います。
     むしろ、マクロに捉えておきたいのは、私学の社会的位置づけの変化などの定性的なデータです。「公立高校は今後どう動くのか」、「それを支える政策の動向はどうか」といったことです。また、「中学・高校の教育的な位置づけはどのように変化していくのか」といったことも重要になると思います。いま、社会的要請から大学も改革を余儀なくされています。高等教育機関が変われば、中等教育機関が影響されることは必至です。例えば、進学校であれば「これまでのように、ただひたすら大学に進学させることを目標に勉強を教えていればいいのか」という問題提起が校内で出されても面白いと思います。
     危機意識の共有のためには、データを机の上に並べるだけではダメです。それをベースに教職員間で議論することが大切です。データはあくまでデータであって、その分析を自らの視点から行ってこそ意味があります。通常は、データが職員会議で配られておしまいのところが多いと思います。よくて、一部の教職員の解釈を話す程度でしょう。これでは、共有されたことにはなりません。ホンネの話し合いをきちんと持ってください。

     

    自分の学校の状況を客観的に把握する

     一方、ミクロの方ですが、これは自分の学校がどのようになっているのか、ということです。これも、いわゆる入試データや進学実績などの数値結果として出ているものだけでなく、様々な観点から自校を分析する必要があります。
     学校には、多くの関係者が存在します。教職員や在校生はもちろん、保護者、卒業生、受験生、受験生の保護者、他校の教職員、地域社会の人々など様々な人と関係を持っています。これらの関係者の意見やニーズをきちんと聞き、そのデータをしっかり分析することが重要になります。具体的には、アンケート調査やインタビュー調査を実施するということになると思います。
     もし、最近受験生が減ってきているのであれば、「受験生やその保護者が求めていることと自校が行っていることがズレてきているのではないか」という疑問もわきます。これを調査してみれば、そのズレの有無が確認できますし、受験生が何を求めているのかがデータとして明確になります。もちろん、受験生が求めていれば何でもやるということではないと思いますが、少なくとも現状認識としては必要なことだと思います。「受験生が求めているもののうち、これは提供できないが、その分こういうことでカバーすれば魅力は劣らない」という判断さえできればいいのです。
     こういった調査は、我々のような外部の調査機関を使っても簡単に実施できますが、小規模なものであれば校内で実施することも可能です。ただ、気をつけてほしいのは、出てきたデータを表面的に捉えないでいただきたいということです。アンケート調査などは、実施前からある程度の仮説を持って設計をし、「こういうことを聞いておけば、これとこれの相関が分析できる」というようなコツがあります。やってみて「これも聞いておけばよかったな」ということも多いので、アンケート設計にも時間をかけると良いと思います。

     

    ここまで来れば、改革の第一歩を踏み出しました。
    さあ、次回からはさらに改革の足を早めていきましょう。